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3.堆肥のつくり方

 1)堆肥化の意義

 堆肥の原料である植物残渣や家畜ふんに含まれる有機物の大部分は炭水化物(糖類、へミセルロース、セルロース)、リグニン、タンパク質である。これらが微生物の働きによって分解され、炭酸ガスや水になったり、微生物の体内にとり込まれたり、縮重合により腐植物質に再合成されたりする。このような腐熟過程を経て黒褐色の堆肥となる。
 堆肥化の利点は次のように整理される。
  1. 原料の有機物の炭素率を20付近まで下げることにより、土壌施用後の急激な分解や作物の窒素飢餓を防ぐ。
  2. 未熟有機物に含まれている成分で、作物にとって有害なものをあらかじめ分解し、障害を未然に防ぐ。
  3. 有機物中の有害微生物や雑草の種子を高熱によって死滅させる。
  4. 汚物感をなくし、取り扱いやすくする。

 
 2)原料有機物の腐熟・堆肥化に必要な条件

 堆肥化の過程で重要なのは、炭素率、水分含量、空気(酸素)の流通の3条件を微生物の発育に適した状態にすることである。

  1. 炭素率

    有機物の分解に適した炭素率は30〜40である。稲わらの炭素率は60程度と高いため、稲わら1tに対して4〜5kgの窒素を加えてやれば分解しやすくなる。炭素率が200以上の木質資材はそのままでははとんど分解しない。第1表に堆肥材料や各種堆肥の炭素率を示した。炭素率の高い材料には窒素源を添加して炭素率を下げる必要がある。添加すべき窒素量は次式によって求める。

    N=C/A−N

    X:材料100kg当たりの窒素添加量(kg)
    C:材料100kgに含まれる炭素量 (kg)
    N:材料100kgに含まれる窒素量 (kg)
    A:目標とする炭素率     (30〜40)
     
  2. 水分含量

    水分含量は粗大有機物原料(稲わら、麦わら、樹皮など)では60〜70%が最適である。家畜ふんの場合は水分含量が高いため、生ふん水分含量の1/2程度(水分含量50%台)になるまで乾燥させておかないと堆肥化しない。水分が多すぎても少なすぎても、発酵が進まない。
  3. 空気の流通

    有機物の堆積・発酵は空気の流通のよい条件で行なわねばならない。堆積場所は、しぼり水が排水できるように勾配をつけたり溝を整備しておく。すのこのような構造であればなおよい。
    酸素の不足は堆積物の下部で起るため、堆積規模が5〜6m以上になる場合には、丸太かビニールパイプを立てておいて積み上げ、堆積の山か完成した後抜き取って空気穴をつくるなどの工夫が必要である。さらに、均一に腐熟させるためには2〜3回の切返しが必要である。

 

 炭素率

 
 
3)速成堆肥のつくり方

  速成堆肥のつくり方を第1図に示した。アルカリ資材と窒素源を添加することによって、約2カ月で堆肥ができあがる。
   速成堆肥
          第1図 促成堆肥の作り方(窒素源に硫安を用いる場合)
    注)水と硫安の添加量:堆肥材料として乾燥した材料を使用した場合を想定して、稲わら100kg当たりの添加量で示した。


  1. 水分の補給
    稲わらなど乾燥した材料は、100kgに対し約50Lの水をかける。稲わらの場合は水をかけた後、三つ切り程度の大きさに切断しておく。
  2. 積み込みと石灰乳の添加
    材料を40〜50cmの厚さに積んで踏み込み、石灰乳(消石灰に約20倍量の水を加えたもの)をかけながら軽く蹄みつける。この状態で2週間保持すると、石灰の作用によりセルロースが微生物分解をうけやすくなる。
  3. 本 積 み
    これを切りくずし、積み上げながら水と窒素源(硫安)を加え、軽く踏みつけながら、高さ1.5m程度に積み上げる。水と窒素源は1段(40〜50cm)ごとに添加する。堆積後3〜4日で発熱してくる。発熱時の温度は60〜70℃でなるべく長く持続するのが望ましい。
  4. 切り返し
    発熱がおさまり、温度が低下した頃(4週間目)に切り返しを行う。切り返し作業では踏み込みをせず、フォークでたたくぐらいの程度がよい。切り返すと再び発熱が起こるが、堆積時ほど温度は上昇しない。切り返し後1カ月以内に完熟する。

 4)石灰窒素を利用した速成堆肥のつくり方

   窒素源として石灰窒素を利用する方法を第2図に示した。この方法は石灰乳による寝かしを必要としないので、最初から本積みができ効率的である。
     速成堆肥
         第2図 石灰窒素を利用した速成堆肥のつくり方
      注)水と硫安の添加量:堆肥材料として乾燥した材料を使用した場合を想定して、稲わら100kg当たりの添加量で示した。

 5)きゅう肥の腐熟・堆肥化

 畜舎から持ち出したきゅう肥は敷料(わら、籾殻、オガクズ等)とふん尿の量比が雑多である。堆肥化する場合敷料の多いものはそのまま、少ないものはわら等と混合して水分を調節したうえで積み込む。わらとふん量は重さで同量となるように混合するのが理想的である。
 積み込み時に水を加えて適当な水分状態とすることは速成堆肥と同様である。ふんを均一にまぜるために切り返しは2回以上行なう。


 6)牛ふん堆肥の連続製造法

 生ふんと完成した堆肥の一部(種堆肥)を混合し、水分調節を行なうのが特徴である。この方法は種堆肥から発酵源となる有用微生物群が持ち込まれるため、短期間に良質の堆肥づくりが可能となる。
  1. 種推肥のつくり方
    ふん尿分離した生ふんを天日乾燥し、水分が40%程度になったら生牛ふんを重さで等量混合し、堆積発酵させる。2〜4日に1回の割合で切り返しをすれば約10日問で完熟した黒褐色の堆肥となる。
  2. 種堆肥を利用した連続堆肥化法
    (1) で作った種堆肥と生牛ふんを1:1の割合で混合し、堆積発酵させる。1〜2日後には70℃ぐらいに温度が上がる。2〜3日に1回程度切り返しをすれば2〜3週間で牛ふん堆肥ができ上がる。これの約半分を種堆肥として生ふんに混合するため、種堆肥作りは最初の1回だけでよい。

   牛糞堆肥
                 第3図 牛糞堆肥の連続製造法


 7)木質材料を用いた堆肥の作り方

 オガクズや樹皮などの木質材料は堆肥化する前に野外に堆積し、できれば2〜3年そのまま放置する。この間に樹脂類が分解して発酵しやすくなり、有害物質や材料を貯留中にしみ込んだ塩分なども溶出する。樹皮については粗く粉砕してから用いる。
 木質材料は炭素率が極めて高いため、窒素分に富み腐熟分解しやすい家畜ふん尿などの発酵助材と混合して堆積、発酵させる。また、畜舎敷料とした木質物と家畜ふん尿の混合物、あるいは家畜ふん尿に水分調節材として木質物を混合したものを堆積し、発酵させる場合もある。

  1. バーク堆肥、オガクズ堆肥のつくり方
    水分40〜50%程度の樹皮(バーク)あるいはオガクズ1t当たり50kg内外の乾燥鶏ふん(または豚ふん、牛ふん)と20kgの硫安(または10kgの尿素)を加え、水分含量を50〜60%に調整して積み込む。7〜10日で発酵による温度上昇が始まり、20〜30日おきに4〜5回の切り返しを経て4〜5か月で発酵過程が柊了する。
    一次発酵だけでは不充分の場合は堆積規模を2m程度に小さくし、低温での二次発酵を行なう。
  2. オガクズ家畜ふん椎肥のつくり方
    生の家畜ふんにオガクズを容量比で1:1に混合して水分調節(65%)し、堆積発酵させる。3か月問の堆積で発酵過程がほぼ終了し、実害のない程度に腐熟する。入手可能であればオガクズの代わりに樹皮を利用した方が分解は早まる。
    オガクズ堆肥
          第4図 オガクズ(またはバーク)堆肥のつくり方
      注) *:豚ふんあるいは牛ふんでもよい


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