麻生内閣の少子化担当相に、34歳で戦後最年少閣僚となる小渕優子・元文部科学政務官が起用された。農山村社会が少子高齢化する中、持続可能な社会に向けて、少子化対策の進展に期待したい。
小渕少子化担当相は、2004年に結婚し、昨年9月25日に男児を出産、今年初め職場復帰し、子育てと議員活動に奮闘している。就任会見で「(児童手当などの)経済的支援は、やらなければならないことだが、それ以上に社会的環境の整備や労働環境の整備とともに、少子化への意識、理解を深めることが必要なのではないか」と語った。
日本は05年から人口減少社会に入っている。人口の減少は経済力の低下を意味している。商品やサービスの市場(マーケット)が縮小するし、労働力も少なくなる。農畜産物の生産や販売だけでなく、社会全体に大きな影響が出る。農山村地域は一足先に、少子高齢化が進んでいる。その中で、地域みんなで助け合って暮らすことに活路を求め、会得した生き方もある。だが、まず最初に支援の必要な地域だということを同相には認識してほしい。
地域経済や社会全体の持続的な発展を維持するための少子化対策は、フランスの経験が参考になる。同国は1994年に合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数を示すもの)が、1・65まで下がった。その後、反転し、2006年には2・00に回復した。これに対し、日本は1・34(07年)で、人口維持に必要な2・1を大幅に下回っている。同国の経験に学び、早急に回復すべきだ。
東京都内でこのほど開かれた国際シンポジウムで、フランス人口統計学研究所のフランソワ・エラン所長は「今後、数十年間の労働力人口は維持できる」と胸を張り、3歳児の幼稚園就園率が100%であること、2歳児の就園率も35%と高いことを紹介した。
同所長は、そのポイントとして、「少子化対策の押し付けや、義務付けはしていない。子どもを欲しいカップルの望みを実現させることが大切だ。妨げになることがあれば、回避できるよう助け、負担を軽くしている。児童手当や減税などの子育てへの優遇措置は、婚姻形態を緩やかにとらえ、幅広く支援する制度を30年以上かけてつくりあげてきた」と話した。
誰もが預けられる託児所や幼稚園など保育施設を整備する一方で、育児や教育を援助する制度を整備してきたことが出生率の上昇につながったと言える。
日本でも経済的に子育てが困難な場合に、あらゆるカップルと子持ちの親を対象にした手厚い児童手当や減税が考えられる。共稼ぎが増える中で、保育施設や農家も含め育児休業制度の充実も欠かせない。制度の整備には、国民の合意が必要になる。少子化対策は国民の意識と制度に大きな変革を迫るものになる。