【ワシントン及川正也】最大7000億ドルの公的資金投入を柱とする金融安定化法案の否決を受け、米上院は10月1日、下院は同2日に議会を再開、対応策を再協議する。だが、法案否決をめぐっては与野党が責任を押し付けあう非難合戦を展開。議会は混迷状態に陥っており、局面打開につながるか予断を許さない情勢だ。
下院では早期決着を目指しカギを握る共和党指導部が、党内の反対派説得のため複数の修正案策定に着手したが、説得は容易ではないとみられる。一方、当初1日に採決予定だった上院は、下院の最終決着まで事態を見守る方針に転換した。
共和党トップのベイナー院内総務は、否決後の会見で、民主党トップのペロシ下院議長が、採決前にブッシュ政権の「失政」を批判した演説を「党派的」と指摘。この演説で「多くの(共和党)議員が反対に回った」と、同議長を追及した。これに対し合意案を主導した民主党のフランク金融サービス委員長は、約3分の2の議員が反対した共和党を強く批判した。
採決前は「小差で可決」との観測が強かったが、討論では共和党保守派議員から「社会主義への道を滑り落ちていく」、民主党議員からも「ブッシュ政権への白紙委任状」など反対論が続出。結果は小差の否決だった。
法案否決の背景には11月の大統領選と同時実施される下院選をにらんだ議員心理もある。米国民には、経営に失敗した金融機関に巨額の公的資金を投入することに批判が強いためで、世論調査では法案支持は3割だけだ。
政府と与野党の合意が崩れたことは、ブッシュ政権の求心力低下も改めて浮き彫りにした。米メディアによると、ブッシュ、チェイニー正副大統領が反対派に電話し、切り崩しを試みたが、効果はなかったともいう。また大統領候補の共和党マケイン、民主党オバマ両上院議員が反対派を説得した形跡もなく、政界全体が機能不全に陥った状態だ。
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