【ワシントン=矢田俊彦、ニューヨーク=山本正実】米下院は29日、本会議を開き、米政府が金融機関からの不良資産を買い取ることを柱とした緊急経済安定化法案を賛成205、反対228で否決した。
金融危機拡大を食い止める狙いの法案が否決されたことで米ニューヨーク株式市場にはろうばい売りが殺到、ダウ平均株価(30種)の終値は前週末比777・68ドル安の1万365・45ドルと過去最大の下げ幅を記録した。
東京などアジアの株式市場も株価は急落し、世界の金融市場は大きく動揺している。
同法案を巡っては、米政府と議会幹部が合意し、上下両院の可決がほぼ確実視されていた。しかし、税金による金融機関の救済への国民の反発は強く、11月の選挙を控え、世論に敏感になっている議員の「造反」が相次いだ。ブッシュ大統領は記者団に「議会の否決には失望した」と述べ、ポールソン財務長官や米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長らと対応を協議した。
政府との合意を主導した民主党のペロシ下院議長は記者会見で「危機は深刻だ。今後も超党派で行動していく」と述べ、調整を続ける方針を示した。米下院は10月2日に審議を再開する予定。一部修正などして再可決を目指すとみられるが、めどはたっていない。
法案の柱は、最大7000億ドル(約74兆円)の公的資金を投入し金融機関から不良資産を買い取るもの。米政府と議会は28日、7000億ドルの枠のうち半分に議会の拒否権を与えるほか、経営者の報酬に制限を加えるなどの修正案をまとめて合意していた。
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