今回で第五弾となる日本上空滞在旅行は種子島・屋久島へ。
2日間/6レグと軽量タイプながら屋久島の魅力を満喫できます!
(本企画タイアップ:月刊エアライン編集部[イカロス出版])
- 出発地:
- 東京 大阪(伊丹)
- 出発日:
- 11月4日(火)~12 月18日(木)および2009年1月5日(月)~3月18日(水)の毎日
- 最少催行人員:
- 1名
- 食事:
- 1朝食/付
- 添乗員:
- 同行いたしません。
- 備考:
- 1名様でご参加できます。
- JALのフラッグシップから離島路線のフラッグシップへ
- YS‐11の機長とQ400機内で〝再会〟
- 風変わりな形状の空港ターミナルビル
- 島内一周ドライブで世界遺産の大自然を満喫
- 手に届くような距離に鹿や猿たちの姿
JALのフラッグシップから離島路線のフラッグシップへ
東京から種子島に向かう、と考えた場合、鹿児島経由のルートが真っ先に思い浮かぶ。もちろんJALグループのネットワークを活かせば可能なルートだが、今回は伊丹からJACのDHC‐8‐400(Q400)で種子島に飛ぶ。大阪出発の人ならば、大都会から南海の離島へ〝空間移動〟するような醍醐味を味わえるし、東京出発の人ならば、乗る機会の少ない伊丹/種子島線というローカル線フライトを経験できるという楽しみがある。鹿児島との単純往復ではなく、伊丹を起点にしているのがこのツアーの〝ミソ〟だ。 9月1日、私たちは11時30分発のJAL115便でまずは羽田から伊丹に旅立った。旅のスタートはボーイング777‐200で、ファーストクラスを装備した3クラス機材。JALが誇る国内線のフラッグシップである。 いわゆる「ゲリラ豪雨」が連日のように発生するなど、不安定な気候が続いたこの夏だったが、出発時は午前中ということもあって比較的穏やかな天気に恵まれ、途中、大きく揺れることもなく快適にフライトして伊丹空港に到着した。 さて、伊丹より先はワイドボディジェットから一転、プロペラ機の旅になる。777から乗り継ぐとQ400はさすがに小さく感じるが、「離島への旅が始まる」という高揚感を盛り上げてくれるという点では適役ともいえるだろう。プロペラ機と離島の空港はよく似合うものだ。 伊丹での搭乗口は24A。ターミナル北側にはプロペラ機用のオープンスポットがあり、JAC便ではお馴染みの搭乗口だ。バスでスポットまで移動し、JAC2457便の機内へ入ると田村CAと溝部CAの2名が笑顔で迎えてくれた。 ボーディングはスムーズに進み、定刻の13時45分にはランプアウト。搭乗機は、JACにとって5機目のQ400であるJA845C号機だった。ランウェイ32Rから離陸して上昇する途中、離陸したばかりの伊丹空港、間もなく右手に神戸空港、さらに左手に関西空港が次々と姿を現し、それらの空港から出発、あるいは到着しようとしている旅客機の機影が小さく見えたりして目が離せない。下方視界の良いQ400では、機窓の眺めを楽しまない手はないのである。 |
羽田からの出発はJAL115便。キャビンは3クラスの777-200だ。伊丹のオープンスポットで種子島行きのJAC2457便にボーディング。種子島までは1時間半と、JAC便の中ではロングフライトとなる。伊丹空港を離陸後、右手には神戸空港の姿がはっきりと見えた。左手には関西空港の姿も。 |
YS‐11の機長とQ400機内で〝再会〟
淡路島と明石海峡大橋。Q400では機窓の眺めも楽しみの一つ。伊丹/種子島線ではカートを出してのドリンクサービスが行われる。機内にはゆったりとした時間が流れる。JAC便の機内で配られるオリジナルルートマップ、情報誌「UPROP」、キャンディー。種子島空港に到着したJA845C号機。これでお別れかと思いきや、JA845C号機にはJAC便4フライトすべてでお世話になることになる。 |
巡航に入るとコクピットからアナウンスが入った。飛行高度7,300メートル、対地速度670km/h、「高知→足摺岬→種子島」という経路で目的地に向かうことなどが説明された。冒頭、「機長の廣瀬です」と挨拶があったが、廣瀬三省キャプテンに違いない。廣瀬キャプテンはJACが2006年まで運航していた国産旅客機YS‐11に最後まで乗務していたパイロットで、本誌にも登場していただいたことがある。新型機のQ400に機種移行して元気に活躍を続けていることを図らずも機内で知ることになり、嬉しい気持ちになった。 JAC2457便は飛行時間が1時間30分と長いので、ドリンクサービス、JACオリジナルのルートマップや情報誌「UPROP」の配布といったキャビンサービスの合間に、田村CAと溝部CAにデスティネーションである種子島と屋久島について話を聞くことができた。特に2日目に訪れる屋久島については十分な滞在時間があり、観光することもできるので、詳しい情報を得ておきたいところだ。 お勧めの観光スポットを田村CAに問うと「白谷雲水峡はぜひ行っていただきたいですね。宮崎駿監督の映画の舞台のモデルにもなった『もののけ姫の森』もあるんです。それから『千尋の滝』も美しいところで、車で行くことができますよ」とのこと。お勧めに従って、この2か所は訪れることにしよう。鹿児島出身の田村CAは、「世界遺産に指定され、有名な映画にも出てくる屋久島は鹿児島の誇りです」とも付け加えてくれた。個人的には初めて訪れる土地なので、田村CAの言葉にいやが上にも期待が膨らむ。 伊丹を出発して1時間15分ほど経過した頃、JAC2457便は種子島空港へのアプローチに入った。いったん空港のVOR(超短波全方向式無線標識)をヒットし、左旋回してランウェイ31にILS(計器着陸装置)による精密進入を行うパターンだ。やがて窓いっぱいに群青色の美しい海面が迫ったかと思うと、間もなくタイヤスモークをあげてQ400はランディングした。 種子島の上空には青空も見え、日も差していたが、窓には雨粒が付着している。機外に出たとたん、ムッとするような湿気に包まれ、カメラのレンズは真っ白に曇ってしまった。9月に入ったとはいえ、まだまだ種子島は夏なのだ。もっとも、このツアーの設定期間は11月4日以降のことだから、実際にツアーに参加する人は、今回私たちが見たのとは違った表情の種子島と出会うことだろう。 |
風変わりな形状の空港ターミナルビル
現在の種子島空港は2006年3月に島のほぼ中央部に開港した新空港である。それまでは島の南側に1,500メートルの滑走路を持つ旧空港が存在し、YS‐11にとっても馴染み深い空港の一つだった。一方、新空港は中型ジェット機の就航も可能な2,000メートル滑走路を有し、ターミナルビルも立派になった。離島空港は小ぢんまりした箱型のターミナルビルが一般的だが、種子島 空港のそれは空港施設というより公民館を思わせるユニークな形状をしている。鉄砲伝来の島として日本史を一変させた種子島は、空港も先進的(?)であるようだ。 種子島に来たからにはロケット発射基地として有名な宇宙センターにも行きたかったが、空港からは車で片道40分はかかるという。種子島での滞在時間は約2時間半。搭乗手続きの時間などを考えるとかなりタイトになってしまうので、今回は空港内外を散策することにした。 ターミナルビルに展望デッキはないものの、すぐ脇の小高い丘に公園があり、離着陸する飛行機を眺めることができる。鹿児島行きのJAC3770便として飛び立つJA845C号機の姿を撮影しようと公園に向かった。 15時50分、定刻にランプアウトしたJAC3770便は小雨がぱらつく中、滑走路の中央付近で早くもエアボーンし、軽やかなエンジン音を響かせながら北の空へと羽ばたいていった。その様子を撮影していた伊藤カメラマンが「自衛隊のUS‐1飛行艇みたいだ!」と声を上げる。湿度がよほど高いのか、Q400のプロペラに圧縮された空気が水蒸気を発し、くるくると渦を巻いたのだ。海水を巻き上げながら離水する飛行艇によく見られる現象でもある。 JAC3770便の出発を見送ってからターミナルビルに戻ると、とたんに滝のような雨が降ってきた。まるで熱帯のような天気である。 ターミナルビル内には土産物屋は2店舗あり、一つは地元の物産を中心にした一般的な店、もう一つは試飲もできる焼酎の専門店だ。種子島で造られるのは芋焼酎で、中でも日本一甘いという安納芋(あんのういも)の焼酎は人気が高いという。田村CAも安納芋のことを教えてくれたが、売店の店員さんも「CAの方も時々買っていきますよ」といっていた。 再び雨が小康状態になった17時30分、鹿児島からJAC3775便が到着、17時55分発の折り返しJAC3774便として鹿児島に向かう。機材は伊丹からの便と同じJA845C号機で、コクピット、キャビンともにクルーは先ほどと同じメンバーだ。 種子島/鹿児島間のブロックタイムは30分で、実際の飛行時間は25分程度。レベルフライトしている時間は数分にすぎないが、キャンディーと新聞のサービスが行われた。18時25分、僚機のQ400が並ぶ鹿児島空港に到着。さすがは西日本の鹿児島だけに、日はかなり傾いたもののまだ十分に明るい。 |
種子島空港のターミナルビル。空港というより公民館のような趣の建物がユニークだ。ターミナル脇にある公園からはエプロンと滑走路を見渡すことができる。ターミナルに展望デッキはないので、ここが最高のウォッチングポイント。プロペラから渦を発生させながら鹿児島へ向け離陸するJA845C号機。湿気が多く、レンズが曇るほどだった。試飲もできる焼酎の専門店。種子島で造られる焼酎のほとんどが揃っているという。ターミナルの土産物屋を散策するとこんなお土産が。さすがは鉄砲伝来の土地である。約2時間半の種子島滞在の後、JAC3774便で鹿児島空港へ到着。夕暮れのオープンスポットにはJACのQ400がズラリと翼を並べる。 |
島内一周ドライブで世界遺産の大自然を満喫
2日目は好天に恵まれた。青い空と海を見ながら、Q400は快調に飛行を続ける。美しい海と濃い緑が印象的な屋久島へファイナルアプローチ。屋久島空港から鹿児島へ出発するJACのQ400。屋久島は縄文杉や屋久杉といった植物群やアカウミガメの産卵地として知られ、世界遺産にも登録された大自然の宝庫だ。鬱蒼とした原生林の間を清流が駆け抜ける白谷雲水峡。ハイキングや森林浴には絶好の観光地である。白谷雲水峡には様々な杉の大木が生えている。写真は切り株の上にさらに杉が生えた「二代杉」。 |
翌9月2日、霧島市内の宿泊先である「ホテル京セラ」で、天然温泉の朝風呂に浸かって身も心もさっぱりしてから、空港へと向かった。今日は屋久島往復および帰京便の3フライトのほか、屋久島の島内観光も楽しめる。 8時35分発のJAC3741便は昨日と同じJA845C号機がアサインされていた。コクピットを担当する本田キャプテンは前出の廣瀬キャプテンと同様、退役時までYS‐11に乗務し続けたパイロット。ランウェイ34から離陸した後、一路屋久島を目差して南下を開始したが、鹿児島上空には薄い雲が張り付いており、楽しみにしていた桜島の姿は見ることができなかった。それでも海上に出る頃には雲も切れて視界が広がり、左手には細長い瓢箪のような種子島の姿が横たわっているのを確認。 ブロックタイムで35分のフライトはあっという間で、屋久島の姿が見えたかと思うとギアダウン。そのギアの先には海岸線に沿うように立地する屋久島空港をインサイトすることができた。北寄りの風が吹いているようでランウェイ32にランディングし、9時10分、小さなターミナルビルの真ん前にスポットインした。 前日の種子島とは打って変わって屋久島の上空は真っ青に晴れ渡っている。湿度もさほど高くなく快適ではあるが、日差しが肌を刺すように強い。 1日に5往復ある鹿児島/屋久島線の初便で到着し、帰りは18時発の最終便なので、8時間くらいは観光に充てられそうだ。『日本上空 滞在旅行』の企画ではあるが、今回は世界遺産の島での地上滞在を楽しめるのも魅力の一つ。さっそくレンタカーを借りて島内めぐりを開始した。 最初に向かったのは前日に田村CAから聞いた白谷雲水峡である。空港から40分ほど山道を登り、標高約800メートルにある白谷雲水峡の入口に着く。 1974年に自然休養林として指定された白谷雲水峡は、白谷川が流れ落ちる峡谷の中に屋久島名物の大杉や滝、奇岩といった、変化に富んだ景色や原生林が展開する大自然の小天地だ。山道は整備されているものの、400ヘクタール以上も広さがあるので、じっくり見て回れば4~5時間はかかるらしい。それだけの時間的余裕もあるのだが、他の名所にも行ってみたいので、少々もったいない気はしたものの、30分ほどで切り上げることにする。名物の屋久杉をもっと見たければ、別の場所に同じく自然休養林の「ヤクスギランド」などもあるが、こちらも山の中。せっかく島に来たのだから、島らしさを味わおうと、ほぼ円形の屋久島を一周することに決めた。 |
手に届くような距離に鹿や猿たちの姿が
屋久島は大きな島という印象はなかったが、海岸線の総延長は100kmを超えるという。しかも島の北西部はうねうねと曲がりくねった細い道路が延々と続き、スピードを出すことができない。結局、一周するのに3時間以上を要したが、途中、道端で鹿が草を食んでいたり、道路の上で大勢の猿が毛づくろいをしていたりと、自然と身近に接することができる実に楽しいドライブとなった。 JAC便の機内でもらった絵ハガキにも写真が載っていた「千尋の滝」は島の西部にある。写真では滝がアップになっていたのでよくわからなかったが、実際に行ってみると滝の流れは大峡谷のド真ん中にあり、標高2,000メートル近い山並みをバックにした光景は雄大そのもの。「千尋の滝」到着前には、「日本の滝100選」の一つ「大川の滝」にも立ち寄ったが、こちらは岩肌をなめるように落ちる水流。滝だけでもそれぞれに風情が大きく異なり、屋久島の自然の豊かさを実感させてくれる。前日の昼頃までいたのは東京のコンクリートジャングル、まさに対極の世界にワープでもしてきたかのような感覚は短時間で移動できる航空旅行ならではの醍醐味だろう。 そして、屋久島のもう一つの観光資源は温泉だ。空港の前にも日帰り入浴施設があったので、ドライブの後は汗を流してから18時発のJAC3758便に乗り込むことに。 搭乗手続きを済ませ、ターミナル前のスポットまで徒歩で向かうと、待ち受けていたのはまたもJA845C号機だった。よほど縁があるのか、これでJAC便の4レグはすべて同じ機体。なんだか愛着が湧いてくる。 茜色に染まり始めた空の下を鹿児島に向けて離陸。北風は午前中より強まった感じで、ランウェイは依然として32である。 ところで、JACのCAたちはどの便でも時々窓から外の様子を確認している。JACの路線には景色のいい路線が多く、Q400は下方視界が良好であることを売りにしていることもあって、視程のいい日には遊覧フライトのようなキャビンアナウンスをしてくれることもある。屋久島から鹿児島への短いフライトの際にも、CAが窓外をチェックする姿が見られた。できるだけフライトを楽しんでもらおうという心遣いが感じられて好もしい。この便は雲の合間を縫うようなフライトとなったが、鹿児島到着直前には山頂部に雲を戴いた桜島や霧島連山の姿も見ることができた。 |
島内をドライブしているとヤクザルやヤクシカに出会うこともしばしば。まさに自然と共生している島だ。落差88メートルの大川の滝。「日本の滝100選」にも選ばれている。鹿児島空港が近くなると、桜島と錦江湾が姿を現した。鹿児島からは羽田行きのJAL1878便で帰路に就く。東京上空で見た光の海は、つい先ほどまでいた屋久島や種子島とは対照的である。 |
こうして全国屈指の知名度を誇る二つの島を飛行機だけでめぐるという贅沢な旅も終りに近づき、東京行きのJAL1878便に乗り継ぐ。機材はA300。実は屋久島空港で確認したところ、幸いにもクラスJに若干の空席があったので、アップグレードしている。わずか1,000円のプラスで、ゆったりとした空間を手に入れられるのはJAL国内線ならではのサービス。予約段階で早々に埋まってしまう便も多いので、空席があればつい利用したくなる。まして今回は、2日間で6レグを飛び、大自然と邂逅するという贅沢な旅行の最後の便だ。クラスJというささやかな贅沢が、締めくくりのフライトとして実にふさわしいように思えた。
鹿児島県・霧島市 / かごしま空港ホテル
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空港ターミナルビルの斜め前で、客室によっては飛行機の離発着がバッチリと眺望できます。鹿児島空港は案外と離発着のトラフィックの多い空港。徹底飛行機観察派の方にはお奨めです。また、朝が苦手な方にとってもこのホテルは貴重。空港ターミナルビル間の無料送迎は随時。
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鹿児島県・霧島市 / ホテル京セラ
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京セラグループが経営する小奇麗なシティホテル。
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JALツアーズ「旬感旅行」で好評の「ヒコーキファンのための『日本上空 滞在旅行』」。
JALツアーズと月刊エアラインの共同企画第2弾として、今度は種子島と屋久島をめぐるヒコーキ三昧の旅行を企画した。
ロケットの打ち上げ基地として名高い種子島と世界遺産に指定され観光地として注目度が高まる一方の屋久島。
フライトを存分に楽しみながら南海の島々の魅力も堪能できる旅に出た。
写真=伊藤久巳
文=佐藤言夫(本誌)