政府が緊急経済対策を盛り込んだ補正予算案を国会に提出した。「原油高騰などに対応する」というが、中身は「旧来型ばらまき」の色が濃い。選挙目当ての利益誘導型補正予算が復活した印象だ。
今回の補正予算案は政府が閣議決定して臨時国会に提出したといっても、実際に成立する保証はない。衆院解散・総選挙が近い将来に予想され、総選挙の結果次第で政権がどうなるか、分からないからだ。自民、公明両党による連立政権が敗れれば「見せ金」に終わる可能性もある。
補正の中身を見ると「ばらまき」の典型のようだ。まず最初に、燃料費がかさむ漁民対策に燃料費補てん対策を打ち出した。
すると「我も我も」というように、農業はもちろんトラックやバス・タクシー業界、国内海運、航空運送、クリーニング業など生活衛生関係業界、石油流通業、建設業界など軒並み予算がついた。政治的に声が大きい特定業界に予算を手当てする手法こそが「ばらまき」である。
生活者の不安解消をうたいながら、その陰で恩恵にあずかれない「小さな声」の人々がはじき飛ばされてしまう。たとえば、山間地から車で医院に通う老人だって、ガソリン値上がりで困っているのは同じではないか。
選挙の票や政治資金目当てのばらまき予算は特定層を潤すだけで、むしろ不公平を拡大する。
ほかにも高齢者医療の負担軽減策や学校の耐震化など、本来なら来年度当初予算で手当てすべき予算を補正で賄っている。概算要求基準(シーリング)の枠外にある補正を使えば、当初予算の編成に余裕ができるからだ。これは一種のごまかしといえる。耐震化工事がなぜ毎年、補正に回るのか、政府の説明を聞きたい。
財源をみても、前年度の決算剰余金や税外収入のほか、三千九百五十億円の建設国債を追加発行する。建設国債であっても借金に変わりはない。財政再建も遠のく結果になった。
景気対策で財政出動が不可欠かどうかについても真剣な議論がいる。かつて事業費で百兆円を上回る補正予算の大盤振る舞いを繰り返しながら、景気が回復しなかった経験から何を学ぶのか。
政府が財政出動に走る一方、日銀は「当面停滞が続いた後は持続的な成長経路に復していく」(西村清彦副総裁)と先行きを悲観していないようだ。政府は日銀と景気認識の落差を詰めるべきだ。
この記事を印刷する