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社説1 型破り麻生演説に小沢答弁が聞きたい(9/30)

 麻生太郎首相は衆参両院本会議で就任後初の所信表明演説をした。民主党の国会対応を厳しく批判したうえで、2008年度補正予算案などへの対応を問いただす型破りの内容だった。民主党に宣戦布告した形で、次期衆院選の決戦が間近であることを強烈に印象づけた。

 福田康夫前首相はほぼ1年前の最初の所信表明演説で、衆参ねじれ国会の状況を踏まえ、低姿勢で野党に対話を呼びかけた。麻生首相の演説は対照的で、ここはぜひ小沢一郎民主党代表の「答弁」が聞きたい。

 首相は前通常国会での民主党の国会対応を「政局を第一義とし、国民の生活を第二義、第三義とする姿勢に終始した」と断じた。そのうえで合意形成のルールを打ち立てるべきだとの考えを示し「民主党にその用意はあるか」と問いかけた。

 首相は補正予算の成立が「焦眉(しょうび)の急」と訴える一方で、民主党が反対する場合はその論拠などを代表質問で示すよう求めた。所信表明演説で首相自ら野党の国会対応をたずねるのは極めて異例だ。

 来年1月に期限が切れるインド洋上での給油活動に関しても「手を引く選択はあり得ない」と強調し、給油活動の延長法案に反対してきた民主党の見解をただした。

 小沢氏の外交・安全保障観を「国連至上主義」と批判する首相は「日米同盟と国連。両者をどう優先劣後させようとしているのか」とも指摘した。選挙で給油延長の是非などを争点にする狙いを込めたものだ。

 首相は政権の緊急課題として日本経済の立て直しを挙げ「全治3年。3年で日本経済は脱皮できる」と力説した。当面は景気対策、中期的には財政再建、中長期的には改革による経済成長の3段階で、経済の再生を目指す考えを改めて表明した。

 所信表明などの首相の演説では、各省の政策に満遍なく言及するのが通例だが、首相はこれを排して「麻生色」を鮮明に打ち出した。政権を担う決意は伝わってきた。ただ最優先課題の景気対策でも、補正予算案の成立や定額減税の年度内実施などを除けば具体策は乏しかった。

 首相は近くまとめる自民党のマニフェスト(政権公約)で、経済成長戦略などを具体的に示す必要がある。税制の抜本改革などに臨む基本方針も明確にしてもらいたい。

 演説の冒頭で首相は、中山成彬国土交通相が一連の問題発言で辞任したことを陳謝した。選挙戦への影響は避けられないが、民主党よりも説得力のある政権公約を示すことで活路を開くしかない。

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