とある所のとある街
平和に見える国がありました
その年はえらくお金がかかる年で国を支える者達は金策に苦労しておりました
すると役人の一人が
「国中から寄付を集めよう」
と進言いたしました
役人達は、この意見に同意し街の広場の高台に
「寄付を求む」
と書かれた看板を立てました
これを見た街の者は国が大変だと口々に噂をいたしました
すると噂を街の片隅で聞いていた薄汚いなりをしていた乞食が立ち
上がると人知れず裏路地に消えていきました
次の
朝
寄付を集めるために作られた小屋の前にふらりと乞食がやってきました
役人は手で乞食を追い返すようにすると
「恵んでやる金などないぞ」
と言いました
すると乞食は薄汚い袖より薄汚い袋を取り出すと役人の前に出て中身を差し出しました
「国の大事と聞き申した良ければお使い下さいまし」
乞食は役人の制止を聞かずにふらりと帰って行きました
この噂は街中に瞬く間に広がりました
「乞食が国に寄付をしたんだとさ」
「皮袋一杯の金貨らしい」
「乞食に負けてはおられんワシ等もいくばかなりと寄付をしようぞ」
街中の町民は乞食に習えて少ないながらのお金を持ち寄ち寄り小屋に押し寄せました
これを見ていた街の金持ち方は舌打ちをしていました
「町民の奴らが寄付を行えばワシ等がそれ以上の寄付を行わなければならないでないか」
「他のメンツもあります」
「しかし憎きは乞食ですな」
「乞食が払った何倍を我等が払わなければならないとお思いか」
「払わねば、役人達、いや、街中の笑い者ですぞ」
街の金持ちは唸りながら頭を悩ませました
「そうだ、良い案がある」
「一体なんだ」
「乞食が寄付した金を盗んだことにすればよい」
「ほう、寄付した金が盗んだ金となれば悪党として祭ることが出来る」
「それは名案だ、早速取りかかろうぞ」
次の日の昼
乞食の前に役人達を引き連れた金持ちがやってきました
「一昨日の晩方、家の裏より逃げていったのは小奴でございます」
何のことかもわからない乞食は役人に取り押さえられてつれて行かれました
「罪状、右の者、一昨日晩に金持ちの家に忍び込み金貨百枚を盗み出し、国に寄付したること明白、よって広場にて打ち首に処す」
噂はたちまち街中に広まりました