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経済

米金融安定化法案、成立へ 「恐慌阻止」苦渋の介入 納税者に配慮、実効性欠く?

9月30日8時26分配信 フジサンケイ ビジネスアイ


 米政府と議会は28日、最大7000億ドル(約75兆円)を投じて金融機関から不良資産を買い取る金融安定化法案で合意したと正式発表した。法案は29日に下院を通過して10月1日にも上院で採択、成立する見通し。経営責任の明確化や納税者保護の観点から妥協が図られ、巨額の公的資金による未曾有の金融支援が動き出す。

 法案によると、公的資金枠のうち2500億ドルを直ちに支出し、財務省による買い取りを監視する機関を設立する。制度を利用した金融機関に対し、経営者の報酬制限を設けた。政府が利用金融機関の株式を取得して経営改善後、株式売却益を得ることを可能にするほか、買い取った債権の価格が回復せず、損失が生じる場合、大統領が金融機関に対し、補填(ほてん)費用を求めることなどを盛り込んだ。(ワシントン 渡辺浩生)

 金融安定化法案で米国は、巨額の税金投入よる「米国発の金融恐慌」阻止という断固たる姿勢を内外に示した。ただ、納税者保護に配慮するあまり、制度そのものの柔軟性を失った点は否めない。

 米政府が個別金融機関の救済の是非を「ケース・バイ・ケース」で判断する対症療法から、金融システムへの直接介入へと大きく舵を切ったのは、「『ツー・ビッグ ツー・フェイル(規模が大きすぎてつぶせない)』状況に残念ながら置かれている」(ポールソン財務長官)からだ。

 大手金融機関の連鎖破綻(はたん)を許せば、政府に打つ手はなく、ドル急落や金利急上昇を通じて、世界を金融恐慌に陥れる危険すらあった。

 しかし、金融安定化法案をめぐる政府・議会の協議は、「ウォール街救済」という批判を受けて混迷。政府は不良債権の買い取り監視強化と、国民負担を減らして経営責任を明確化するための利用金融機関への制約を飲まざるを得なかった。ペロシ下院議長は「ウォール街ではなく、納税者を守り、米経済を好転させる方法」と強調したが、11月の大統領選を控えた政治的妥協だったともいえる。

 1980年代後半の貯蓄貸付組合(S&L)危機の際に、整理信託公社(RTC)による不良債権処理に携わったティム・ライアン氏は、英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で「財務省は買い取りに最大限の柔軟性を与えられるべきだ」と指摘した。価値急落で買い手がつかない住宅ローン担保証券(MBS)などが取引される市場環境を整えるため、価格設定や売却の手法で財務省に一定の裁量権が不可欠という主張だ。

 だが、法案は納税者保護を重視しすぎて「柔軟性」が後退。不良資産を保有価格を大幅に下回る安値で売却すれば、金融機関には損失処理が必要となり、財務力の弱いところは一段と苦しい経営に追い込まれる。

 エコノミストの間では「金融システム安定化にはまだ不十分」との声も根強く、抜本的な問題解決は来年1月発足の新政権の課題になる可能性がある。

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最終更新:9月30日8時51分

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