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2008年9月30日

◎首相所信表明 補正予算成立へ真剣に調整を

 麻生太郎首相が所信表明演説で、民主党との対決姿勢を色濃くにじませたのは、目前に 迫った次期衆院選をにらんでのことだろう。致し方ない面もあるにせよ、総合経済対策を実施するための補正予算の早期成立には、野党側の協力が欠かせない。解散前の成立へ向けて与野党間の調整を真剣に行う必要がある。

 総合経済対策を実施するための補正予算は、中小企業に対する資金繰りや高齢者医療支 援、災害復旧・防災対策などが柱で、総額一兆八千億円に上る。景気をこれ以上悪化させないためにも早急にやっておきたいことばかりである。

 だが、審議日程について、与野党が対立している。衆院予算委員会で、与党側は審議を 一日で終えて採決するよう提案しているのに対し、野党側は、野党だけで二日間の審議が必要と主張している。審議時間は長ければ良いというものではなく、補正予算そのものに大きな意見対立があるとも思えない。野党側は補正予算の中身より、中山成彬前国土交通相の引責問題や汚染米問題などを追及する時間が欲しいと考えているのだろう。与党側が予算委開催日をできるだけ少なくしたいと願う気持ちも分からぬでもないが、与野党ともに、重要な予算審議を駆け引きの材料に使うのはやめるべきだ。

 麻生首相は所信表明で、当面は財政再建より景気対策を優先させる考えを改めて強調し た。「緊急な上にも緊急な課題は、日本経済の立て直し」という認識は妥当だろう。その景気対策は、今回の総合経済対策が第一弾になる。与野党折衝では、双方が歩み寄りの姿勢を示してもらいたい。

 九月に入って米国の金融機関が次々と破たんし、金融不安が世界経済に暗い影を落とし 始めている。国内でも各種経済指標の悪化が目立っており、このままでは補正予算や定額減税に続く第二、第三の景気対策が必要になりそうな情勢である。

 麻生首相は所信表明で「必要に応じ、さらなる対応を弾力的に行う」と述べた。景気対 策の次の一手として、法人税減税などを今のうちから検討しておく必要性もあるのではないか。

◎能登で田舎体験 農家民宿もっと育てたい

 能登空港利用促進穴水町協議会が、同空港を使い穴水町に宿泊して農林水産業などを体 験する旅行者に、航空運賃を助成する新制度を設けた。能登は都市圏の人たちに「田舎暮らし」を体験してもらうのに格好のところであり、穴水町など奥能登の二市二町は国の「子ども農山漁村交流プロジェクト」のモデル地区にも選ばれている。能登の共通テーマである田舎暮らし体験を通した交流人口の増大には、受け入れ態勢の充実も欠かせず、その柱の一つである農家民宿の育成、強化にもさらに力を入れたい。

 農家民宿は、農林水産関係の生活を体験できる民宿で、農山漁村の滞在型余暇活動に関 する法律に基づいて政府も普及に力を入れており、それだけ地域間競争も激しい。県は構造改革特区で、グリーン・ツーリズム促進特区の認定を受け、その一環として農家民宿の育成を後押ししてきた。

 昨年は農家民宿の開業を希望する人たちのため、県が初めてセミナーを開催したことか ら開業者が一気に十一軒増え、現在の農家民宿軒数は三十一軒を数える。能登地区に多く、十六軒が集中する能登町の「春蘭の里実行委員会」は昨年、神奈川県から高校生の修学旅行を誘致し、農家民宿の可能性を広げている。

 農山漁村での体験型の観光・学習は能登振興策の柱になり得るものであり、今後とも農 家民宿の開業に向けた行政の支援が求められる。同時に、既に開業している農家民宿のレベルアップにも努めたい。農山漁村交流プロジェクトで能登を訪れる児童生徒が増えることになれば、子どもたちの安全管理や生活体験メニューの拡充、学習効果を上げるための指導の仕方など、民宿側の対応力を高める必要もある。そうした面の研修会なども考えてもらいたい。

 農家民宿は旅館業法や消防法などの規制が緩和され、開業しやすくなっているが、食品 衛生法の規制を自治体独自に緩和することも可能であり、福井県は調理設備に特例を設けている。石川県も農家民宿の動向を見ながら独自の規制緩和を考えてよいだろう。


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