わが家の前に広がっていた田んぼが数年前に埋め立てられ住宅地になってしまった。自然との触れ合いが減ったのが残念だった。
満々と水が張られた田んぼで、昼はサギが悠然と歩き、夜はカエルのにぎやかな合唱が聞こえた。台風の増水で紛れ込んだ大きなコイに驚くこともあった。稲が黄金色に変わると秋が深くなったと実感できた。
田んぼは、食料を生産する場というだけでなく、水資源を確保し、洪水や土砂崩れから住民を守り、地球温暖化を防止するなどさまざまな機能がある。最近では、湿地としての役割が注目されている。
二十七日付本紙朝刊によると、水鳥の生息地である湿地を守るラムサール条約締約国会議が来月韓国で開かれ、日韓両国政府は水田保全を求める決議案を共同提案するそうだ。水田には魚や両生類、昆虫など多様な生物が生息し、水鳥の良好な餌場となっている。
注目されるのが「ふゆみずたんぼ」という農法である。冬場の田んぼに水を張ることでミミズやクモ、カエルが増え、害虫や雑草の抑制効果があり、農薬や肥料を減らすことができる。宮城県ではこの農法で育てたブランド米に人気が集まっている。
水田の環境保全を行うことが農業の活性化につながった事例だ。多様な生物の宝庫である田んぼを見直したい。