米大統領選は終盤に入り、最大のヤマ場を迎えた。民主党オバマ、共和党マケイン両候補による初めてのテレビ討論会が、南部ミシシッピ州オックスフォードで開かれた。投票日まで四十日を切り、両候補の直接対決による政策論争は当落にも影響を及ぼすだけに、討論会では両候補の激しい応酬が繰り広げられた。
テーマは外交だったが、冒頭、経済政策について議論が交わされた。金融危機への対応に国民の関心が集中しているからだ。オバマ氏は「ブッシュ大統領が八年間推進し、マケイン氏も支持した経済失政の最終判決」などと批判し、経済政策の立て直しを訴えた。これに対しマケイン氏は「経営者責任や政府の監視を強化することも必要。わたしの政権下では責任を取ってもらう」と断固とした対応をとる姿勢を示した。
予想された展開である。オバマ氏にとっては現在の金融危機は共和党政権の「失政のつけ」として格好な攻撃材料だ。マケイン氏は討論会の二日前、金融危機への対応を理由に討論会の延期を呼び掛けた。オバマ氏が拒否したために実現しなかったが、批判をかわすのに必死だったに違いない。
イラク問題でもオバマ氏は「あなたは間違っていた。開戦時には、すぐ簡単に勝てると言っていた」とマケイン氏を追及し「十六カ月でイラクに駐留する戦闘部隊を撤退させるべきだ」と述べた。一方、マケイン氏は「われわれがイラクで勝利を収めつつある事実を認めていない」と反論した。両者の主張の違いが浮き彫りになった。
政策の中身だけでなく、表情や身ぶりを含めた一挙一動が評価されるのもテレビ討論の特色だ。むしろ映像を通じたイメージの方が重視されることもある。討論会終了後にCNNテレビが行った電話調査では、回答者の51%がオバマ氏の方が優勢だったと答え、マケイン氏優勢は38%にとどまった。軍配はまずオバマ氏に上がった。
討論会は二回目が十月七日、三回目が同十五日に予定されている。同二日には副大統領候補の民主党バイデン上院議員、共和党のペイリン・アラスカ州知事の討論会も開かれる。
唯一の超大国である米国が政治や経済で閉塞(へいそく)状況に陥り、米国発の金融危機が世界を脅かしている。国を立て直すことができるリーダーはどちらか、世界が関心を持っている。両候補は国のかじをどう切ろうとしているのか、目指すべき方向と具体的な政策について、もっと議論を深めてもらいたい。
中山成彬国土交通相が日本教職員組合(日教組)などをめぐる一連の問題発言で責任を取り、麻生太郎首相に辞表を提出し受理された。内閣発足からわずか五日で、閣僚が辞任に追い込まれるというのは異例の事態である。新生麻生内閣はいきなり出足からつまずいた。
最初に問題になったのは大臣就任インタビューだった。中山氏は大分県教員汚職事件について「体たらくは日教組(が原因)。日教組の子どもなんて成績が悪くても先生になる」と述べたほか、「日本は随分内向きな単一民族」「(成田空港反対闘争は)ごね得というか、戦後教育が悪かった」と発言した。
大臣としての資質を問われるものばかりだ。さすがにその後、発言を撤回するコメントを発表し、翌日には千葉県知事ら抗議に訪れた関係者に謝罪した。ところが、先週末に地元の宮崎市で開かれた自民党県連の会合で、「何とか日教組は解体しなきゃいかんと思っている」と述べた。さらに会合後の記者インタビューでは「日本の教育の『がん』である日教組をぶっ壊すために私が頭になる決意を示した」と答えた。
閣僚の言動は影響が大きく、慎重さが求められる。中山氏は小泉純一郎内閣で文部科学相を務めた際、「従軍慰安婦や強制連行という言葉が(教科書から)減ってきたのはよかった」「従軍慰安婦という言葉は当時なかった」などと発言し、中国、韓国から非難されたことがある。その時は辞任に至らなかったが、その後、閣僚の失言がたびたび問題を起こしてきただけに、あまりに無神経と言わざるを得ない。辞任は当然だろう。
内閣のイメージ低下は避けられず、信頼回復は容易ではあるまい。首相の任命責任は重大である。
(2008年9月29日掲載)