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2007年11月18日

見返りなき投資 ― 「地デジ」めぐる地方テレビ局の“本音”


 

たまに民放関係者と飲むと、話題に上るのが 「地デジ」―地上デジタルテレビジョン放送について、である。現在、CMなどで大々的に宣伝されている地デジ。一般の認知度も高まっているが、民放関係者に本音を聞くと「なぜ『地デジ』が必要なのか、いまだにわからない」「多額の投資に対する見返りがない。 特に地方局にとっては経営が厳しくなる」 といった、 ネガティブな声ばかり聞こえてくる。


 

03年に東京・大阪・名古屋の3大都市圏から始まった地デジ放送は現在、すべての県庁所在地を含む一部の地域で放送が開始されている。11年にはすべての地域で受信可能にすることを目標に各地の送信所・中継局の整備が進められ、その一方、現在のアナログ放送は廃止される。

この送信所・中継局の整備、カメラなど機材類の交換にかかる費用は、大半が地元の各テレビ局の負担となる。その額は地域によって異なるが、数十億円にも上るという。そして、それだけ投資しても、直接的には何の利潤も産み出さない。民放の収入はほとんどが広告料。だが投資分をCM料金に上乗せできるわけではないからだ。地デジに関する支出が「見返りなき投資」といわれる理由である。

「東京のキー局など、経営の『体力』がある社にとってはさほど影響はないが、地方局にとっては死活問題。特に東北や山陰などの局には本当にヤバイところがある、 と聞いている」 (ある民放の営業担当者)。不況の影響で減少したCM収入に追い討ちを掛けたのが地デジ―というわけだ。

「九州は比較的まだいい方。その中では鹿児島が一番厳しいかもしれない」(同)。 奄美諸島などの離島を抱え、 受信エリアが広いからという。

その鹿児島の民放関係者は「現場からすれば、まさに『百害あって一利なし』だよ」と不満をぶちまける。「デジタル移行後は地方の独自色を出した番組が求められる。報道や情報番組の重要性は増すはずだが、 人員や経費は削られるか、 よくて現状維持。 相対的に質が落ちることになる」。

関係者ですらメリットを感じてないのだから、一般視聴者はなおさらで、「現状で何が悪いのか」 と思うのが正直なところだ。 デジタル放送を視聴するには新たに機器を買う必要があるのだが、 高齢者など、 アナログ放送終了と同時にテレビを見られなくなる 「地デジ難民」が〝大量発生〟 するのでは―とも言われている。

「視聴者側が望んだわけでもなく、 得をするのはメーカーだけ。『官』(=総務省)が音頭を取って大々的にやろうとすることなんて、 ろくなモノじゃあないってことの、いい例ですよ」 (前出の民放関係者)。

 

 

 

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