7月末の調査で、河口湖で取れたワカサギ=山梨県富士河口湖町、河口湖漁協提供
ブラックバスを放流し、釣り客を集めてきた山梨県の河口湖(富士河口湖町)で、河口湖漁協が今度はワカサギの放流に乗り出した。釣り客が激減したため、「脱外来魚」で客足を戻そうという狙いだが、ワカサギにとってブラックバスは「天敵」のはず。専門家からは「本当に定着するのか」と疑問の声も上がっている。
河口湖のワカサギ釣りは10月1日に解禁される。漁協は県水産技術センターと協力して昨年度から試験的に放流を開始。今年度は、体長3センチ程度まで育てた15万匹を含む計約1億8千万匹の稚魚を6月、湖に放した。
7月末の調査では、地引き網に約2万3700匹のワカサギがかかり、順調に成長していることが確認された。漁協は「10月ぐらいから3月ぐらいにかけて、体長13センチぐらいのワカサギが釣れるはず」としている。
河口湖では約30年前からブラックバスの放流が始まった。首都圏からもバス釣りファンが訪れ、99年のピーク時は年間33万人が訪れた。しかし、現在は6万人前後。若者の釣り客が減り、「河口湖離れ」に拍車がかかっている。それにともなって遊漁料収入も大きく落ち込み、関係者に危機感が募っていた。
そこで漁協は、釣り客を呼び戻そうとワカサギに目をつけた。河口湖では水質汚染などの影響で、ワカサギは20年ほど前から釣れなくなっていたが、吉田三男組合長は「バスにこだわるより、ワカサギの養殖、放流がうまくいけば河口湖の新しい名物になる」と期待する。
これに対し、近畿大学の細谷和海教授(魚類学)は「養殖した魚を自然の湖に放流して釣るというやり方は過去の産物。地場にあった自然のままの生態系を保つべきだ」と指摘。「ワカサギが河口湖に定着するのか、ブラックバスに食べられてしまわないか、といったことをまず分析すべきだ」と話している。(岡戸佑樹)