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太田農相辞任:「社会的影響考え」 前日は突っぱねたが…

記者会見で辞任を表明する太田誠一農相=東京・霞が関の農水省で2008年9月19日午前11時12分、丸山博撮影
記者会見で辞任を表明する太田誠一農相=東京・霞が関の農水省で2008年9月19日午前11時12分、丸山博撮影

 三笠フーズ(大阪市北区)の汚染米転売問題をきっかけに始まった農水行政への不信のの声は、ついに19日、太田誠一農相を引責辞任へと追い込んだ。前日開かれた衆参農水委員会では、辞任を求める声をつっぱねた農相だったが、この日は「社会的な影響を考えた」と一転覇気のない表情を見せた。しかし、識者からは「米問題からの敵前逃亡」「総選挙対策」などの厳しい批判も起きている。

 19日朝、辞任の意向を福田康夫首相に伝えた太田農相は午前11時過ぎからの閣議後会見にグレーのスーツ、紅色のネクタイ姿で現れた。やや疲れた表情で、白須敏朗事務次官の退任について説明した後、自らの辞任についても明らかにした。

 いつもは事務方が用意したメモを棒読みすることも多いが、この日は報道陣の質問には淡々と応じ、「辞任を考え始めたのは今週から」と明かした。理由は、問題の社会的な影響の大きさを考えてのことで、「農水省の対応のまずさがきっかけではない」と省内の混乱が原因ではないと強調。「結果責任をはっきりさせる」と述べた。

 「消費者がやかましい」「じたばた騒いでいない」など、消費者や食の安全を軽視したかのような発言に批判を受けながらも、強気を見せていた農相も、一向に収まらない汚染米問題の広がりと社会の強い批判に、間近とされる総選挙を前にして「降板」となった。 太田農相と白須事務次官の辞任に、ある中堅幹部は「問題の大きさを見てただでは済まないと思っていたが、まさかこんな事態になるとは……。言葉がない」と驚きを隠せなかった。【奥山智己】

 ◇農水行政に空白

 細川内閣で首席秘書官を務めた成田憲彦・駿河台大学長の話 国民のことを考えるなら、このタイミングで辞任すべきでない。太田農相のイメージは下がり続けていた。総選挙への影響を避けるために辞めるのではと勘ぐられても仕方がない。政府は本気で汚染米問題の真相を究明し、対策を立てるつもりがあるのか。後任者にどれだけのことができるのか。農水行政の大事な時期に、空白が生じる。福田首相は消費者保護をうたうが、国民の目線に欠けている。

 ◇「資質」の問題だ

 多彩な評論活動で知られる数学者の森毅さんの話 福田首相が政治家としての資質を見極めずに過去の付き合いで農相に任命したのが、そもそもの原因だ。事務所費問題に見られる通り「身体検査」も機能していなかった。「消費者がやかましい」など、消費者をないがしろにする発言を繰り返しており、退場するのは非常にいいことだ。日本の農政は大きな課題を抱えているが、農や食に携わる人はこの際、政府に頼らず自ら活路を開く契機にしてほしい。

 ◇情けない敵前逃亡

 評論家、室伏哲郎さんの話 安倍前首相、福田首相が政権を投げ出した。2人に続き、太田農相も問題から「敵前逃亡」する。情けない、の一言に尽きる。汚染米転売問題は、農水省がしっかり調査しなかったのが原因。問題を解決しないまま事務次官を辞めさせ、自らも退く。自民党はもはや政権を担う能力を失っている。国民は自衛のために、きたる総選挙で候補者を見極めて投票すべきだ。

 ◇「幕引き」なら怒り

 作家の高村薫さんの話 もともと日本の農政は無策で旧態構造を守っているだけ。汚染された米を流通させたのは「犯罪」であり、農水省を解体するぐらいの話だ。消費者やメーカーなど被害者はとてつもなく多い。せめて、汚染米を流通させた構造の解明だけでも今の内閣でやるべきであり、辞任を認めた首相は何を考えているのか。総選挙が近いということで「幕引き」を図ったのだとすれば、国民は怒るどころか、政治に三くだり半を突きつけるだろう。

毎日新聞 2008年9月19日 12時12分(最終更新 9月19日 13時19分)

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