雪だるま式に膨らむ通貨オプション損失
ウォンの対ドル相場が下落を続け、為替変動リスクのヘッジ商品である通貨オプションを利用した中小企業の被害が拡大している。
通貨オプション商品はウォン相場が下落するほど被害が拡大する上、一部中小企業が被害を取り戻すためにさらにヘッジ投資を行い、損失を拡大させるケースが続出している。ウリ投資証券は28日、通貨オプション商品に投資し、自己資本の10%以上を失った上場企業が27社に上るとの集計をまとめた。
韓国政府は中小企業の通貨オプション被害対策を準備している。しかし、企業が為替ヘッジ用のデリバティブ商品に行き過ぎた投資を行ったことで生じた損失に対し政府が支援を行えば、モラルハザードを招くとの指摘もある。通貨オプションによる中小企業の被害額は6月末現在で1兆5000億ウォン(約1370億円)に達し、さらに膨らんでいる。中小企業中央会はウォン相場が対ドルで10ウォン下落するごとに損失が1000億ウォン(約91億円)膨らむと推定している。
サムスン電子の取引先である泰山LCDが通貨オプションで800億ウォン(約73億円)の損失が生じ、黒字倒産に追い込まれたのが代表的な被害例だ。同社はノックアウト方式の通貨オプション商品による損失拡大に伴い、さらにリスクが大きい「ピボット」と呼ばれるテクニカル取引に手を出していた。ノックアウト方式では為替相場が契約レンジよりも下落するとオプション消滅で損失が生じるが、ピボットは為替相場が上がり過ぎても、下がり過ぎても損失が出る商品だ。素材関連のH社、コスダック上場のE社などは通貨オプション商品で被害を受けた6月以降にオプション取引を増やしていることが分かった。
銀行がこうした事態を引き起こしたとの指摘もある。通貨オプション契約を結んだ中小企業の社長によると、為替レートが約定金額を超えて下落し、損失が生じると、さらに資金をつぎ込むように求める銀行もあるという。
ウリ投資証券の分析資料によると、8月末現在で通貨オプションによる損失額が自己資本を上回った企業としては、民事再生手続きに入った泰山LCD(129.08%)のほか、IDH(122.96%)がある。また、SAMT(97.76%)、DSLC(44.96%)、ソンジン・ジオテック(43.58%)、シムテック(40.43%)、ソンウST(37.34%)、チェヨン・ソルテック(36%)、コメックス(33.08%) などが自己資本の30%を超える損失を出している。
通貨オプション契約で自己資本を減らしたと公示した企業は60社を超えた。
李仁烈(イ・インヨル)記者
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