奈良県立五條病院 消化器病センター
五條市を中心とした南和二次医療圏および近隣の和歌山県橋本・伊都地域での消化器疾患診療において、消化器内科と消化器外科が連携・一体化することによって、全身の診断能の充実を図り、積極果敢に診断・治療能力を上げるために消化器病センターを設立致しました。理念
信頼される医療の提供 〜地域に愛される病院を目指す〜
目標
消化器疾患患者さまひとりひとりに、苦痛が少なく、より安全に、正確な診断のもとに、最適、最良の治療を行います。診療体制
外来・原則として予約制です(電話予約可能)。
午前:消化器病センター受付(内線 115)、午後:中央放射線部受付(内線 121)
・他の医療機関からの紹介患者の事前予約は、地域医療連携室にご連絡ください。
TEL 0747-22-1112(内線179) FAX 0747-22-2103 http://www.gojo-h.jp/iryo.htm
・消化管出血(吐血・下血)、急性胆管炎(発熱、腹痛、黄疸)など緊急内視鏡検査、救急処置を要する消化器系疾患について24時間体制で対応します(TEL 0747-22-1112 内科担当医)。
専門外来
・担当医
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
午前 | 吉村 肛門外来 |
櫻井 カプセル内視鏡・大腸外来 |
蜂須賀 食道・胃外科 |
吉 村 肝胆膵外科 |
|
午後 | 中谷 胃ろう・PEG外来 |
森 安 上部消化管外来 (食道・胃静脈瘤) |
松 本 肝臓病外来 胆・膵疾患外来 |
竹田(幸) 内視鏡治療外来 (ESD/ポリペク) |
・上部消化管外来(食道・胃静脈瘤)
食道・胃・十二指腸といった消化管の上部を担当する外来です。肝硬変など肝臓病の人に多くおこる食道静脈瘤や胃静脈瘤といった疾患を専門に扱います。 薬物療法、内視鏡的硬化療法、内視鏡的結紮術、B-RTO(カテーテル治療)、手術療法など、患者さまの病気の状態にあった治療法を選んで行います。
そのほか、胸やけ、胃もたれ、胃重感、腹満感など食道・胃に関係あると思われる症状についても必要な検査を行い、適切に治療します。苦痛の少ない、安全な内視鏡検査として経鼻内視鏡検査も2003年から導入しています。まず、一度受診してください。
・ 胃瘻・PEG外来
脳やのどの病気のために自力でご飯を食べることができなくなった患者さまに対して、当院では積極的に食べ物を飲み込む練習(摂食嚥下リハビリ)を行っています。
しかし、それにもかかわらずご飯が食べられず、栄養が悪くなる患者さまに対してはご相談の上,胃瘻・PEGをお作りしております。当院では年間約50人に胃瘻・PEGを作り、約70人の入れ替えを行っております。食事がうまく取れず、やせてきている方は胃瘻・PEGにより体の調子がよくなる可能性があります。ぜひ一度ご相談ください。
すでに胃瘻・PEGを入れられている方も、気になる点や、困っている点がありましたら気軽にご相談ください。(他の病院、施設で作ったものでもかまいません。)
・ 食道・胃外科
食道癌、胃癌などの上部消化管疾患について、外科治療の相談を行っています。
当院ではガイドラインに沿った標準的な外科治療を中心に、患者さまの状態に応じた最適な治療を提案させていただきます。最近では早期胃癌に対して腹腔鏡手術を取り入れており、小さな創で手術を受けることもできます。
入院から退院までの治療計画を表にまとめたクリニカルパスを使用することにより、患者さまにわかりやすく、安全な医療を目指しています。
また、セカンドオピニオンとして、他の病院で食道癌、胃癌と診断された患者さまの相談にも応じておりますので、どうぞ気軽にお申し出ください。
・ カプセル内視鏡・大腸外来
当院では2007年12月より奈良県下初となるカプセル小腸内視鏡を導入し、本格稼動後、多くの医療施設、患者さまからお問い合わせをいただいております。この検査は口から小型のカプセルを飲み込むだけで、今まで検査が困難であった小腸の病気が見つけ出せるすぐれた検査法です。現在は小腸からの出血を疑う場合のみ保険適応となりますが、将来、大腸や食道も検査できる機種が認可される見込みです。今後、ますます重要になっていくと考えられます。この検査法について医療機関、患者さま個人からのご相談をお受けしております。
また、大腸がん検査、大腸ポリープ、大腸憩室の他、下痢や便秘などさまざまな大腸の病気が疑われる症状についても気軽にご相談ください。
・ 肛門外来
肛門の痛み、不快感、汚れ、出血などで悩んでおられませんか。肛門疾患の治療法も近年ずいぶん進歩して入院期間も短く、術後の痛みも軽くすむようになりました。長年の悩みが簡単な治療でできる場合もあります。是非一度ご相談ください。
・ 内視鏡治療外来
胃、大腸のポリープ、前がん病変、がんの内視鏡治療を専門に扱っています。胃については最新鋭の高周波電流装置を駆使してESD(粘膜下層剥離術)、EMR(粘膜切開術)、ポリペクトミー(ポリープ切除)を行っています。大腸についても同様にEMR、ポリペクトミーを行っています。胃検診、大腸がん検診で異常ありと言われた方、がんの家系で自分も心配な方、どうか気軽に受診してください。
・ 肝臓病外来
肝臓病の原因の多くはウイルス(C型、B型)によるもので、その他アルコール、薬物や肥満などによるものです。当院では、肝臓病の精密検査、C型肝炎に対するインターフェロン、リバビリン療法、B型肝炎に対するエンテカビル療法などの抗ウイルス療法や肝臓癌治療(ラジオ波焼灼療法、エタノール局注療法、肝動脈塞栓療法)などを行っています。肝臓が悪いといわれた方、肝臓が気になる方、家族・配偶者に肝臓病がある方は是非一度ご相談ください。
・ 胆・膵疾患外来
胆道(胆管、胆のう)、膵臓の炎症やがんについて、的確に診断し、適切に治療をいたします。胆石や腫瘍などを指摘された方、腹痛、黄疸、発熱などでお悩みの方は是非受診してください。
・ 肝胆膵疾患外科
肝臓、胆道、膵臓の主に悪性疾患(がん)の治療を考える外来です。ガイドラインに沿った標準的な治療を基本にしつつ、病状ごとに最適な治療方法を提案していきます。
治療内容によっては、奈良医大消化器外科学教室との連携をとりながら、治療を進めていきます。
診察室・検査室
消化器病センター外来診察室、上部・下部消化管内視鏡検査室、カプセル内視鏡小腸検査室、超音波検査室(中央臨床検査部)、透視室・血管撮影・多目的TV装置室・CT室・MRI室(中央放射線部)。
病棟
南2階病棟、病床32床(消化器内科、消化器外科)。
スタッフ
消化器内科医7名:日本消化器病学会指導医1名(評議員1名)、専門医5名
日本消化器内視鏡学会指導医2名(評議員1名)、専門医5名
日本肝臓学会専門医2名
消化器外科医3名:日本外科学会指導医1名、専門医2名
日本消化器外科学会指導医1名、専門医2名
へき地医療支援部3名
協力体制
中央放射線部:各種画像診断、腹部血管造影検査および治療について、西村部長(日本医学放
射線学会放射線科専門医・日本IVR学会専門医)と協力して行う。
中央臨床検査部:腹部超音波検査を共同で運営する。
栄養サポートチーム(NST)、摂食嚥下チーム、緩和ケアチーム:スタッフとして参加する。
奈良県立医科大学消化器内科・消化器外科・放射線科:人事交流、共同研究体制を継続する。
学会施設認定
・ 日本消化器内視鏡学会認定指導施設・ 日本消化器病学会認定施設
・ 日本外科学会認定関連施設
・ 日本がん治療認定医機構認定研修施設
・ 日本静脈経腸栄養学会NST認定教育施設
・ 日本医学放射線学会認定関連施設
スタッフ
- 澤、神戸、本間、前川、櫻井内科医長、津呂、安田、中谷中検部長、蜂須賀外科医長、竹田、
- 吉村外科部長、松本センター長、森安内科部長、大杉智子看護主任
氏 名 | 役職 | 専門領域 | 資格・専門医など |
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松本 昌美(1982年卒) | 院長 | 肝臓、膵臓、胆道、上部消化管疾患。経皮内視鏡的胃瘻造設術、内視鏡的膵管胆管造影検査 | 医学博士、日本内科学会認定医・近畿支部評議員、日本消化器病学会指導医・評議員、日本消化器内視鏡学会指導医・評議員、日本肝臓学会専門医、日本胆道学会、日本超音波医学会、日本静脈経腸栄養学会 |
森安 博人(1989年卒) | 内科部長 |
上部消化管、下部消化管、膵臓、胆道疾患。内視鏡的食道静脈瘤硬化療法、内視鏡的粘膜下層剥離術 | 日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・支部評議員、日本肝臓学会、日本静脈経腸栄養学会、日本門脈圧亢進症学会 |
中谷 吉宏(1991年卒) | センター長内科医長 中央臨床検査部長 |
肝臓、上部消化管疾患。腹部超音波検査、内視鏡的膵管胆管造影検査、肝癌治療 | 医学博士、日本内科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医 |
櫻井 伸也(1994年卒) | 内科医長 | 上部消化管、下部消化管疾患。カプセル内視鏡診断、大腸内視鏡検査、内視鏡的治療 | 医学博士、日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会 |
前川 泰寛(1999年卒) | 内科医員 | 上部消化管、下部消化管疾患。大腸内視鏡検査、カプセル内視鏡診断 | 日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会 |
竹田 幸祐(2000年卒) | 内科医員 | 上部消化管、下部消化管疾患。大腸内視鏡検査、内視鏡的粘膜下層剥離術 | 日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会 |
津呂 公規(2003年卒) | 内科医員 | 上部消化管、下部消化管疾患。経皮内視鏡的胃瘻造設術 | 日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会、日本静脈経腸栄養学会 |
吉村 淳 (1985年卒) |
外科部長 | 消化器外科、肝胆膵外科 | 医学博士、日本外科学会指導医、近畿外科学会評議員、日本消化器外科学会指導医、日本臨床外科学会、日本移植学会、日本禁煙科学会認定禁煙支援医、日本がん治療認定医機構認定医・暫定教育医 |
蜂須賀 崇 (1995年卒) |
外科医長 | 消化器外科、上部消化管外科 | 医学博士、日本外科学会専門医、近畿外科学会評議員、日本消化器外科学会専門医、日本臨床外科学会、日本内視鏡外科学会、日本がん治療認定医機構暫定教育医 |
安田 里司 (2003年卒) |
外科医員 | 消化器外科 | 日本外科学会、日本消化器外科学会、日本臨床外科学会 |
神戸 大介 (2006年卒) |
へき地医療支援部医員 | 内科系 | 日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会 |
澤 信宏 (2006年卒) |
へき地医療支援部医員 | 内科系 | |
本間 悠樹 (2006年卒) |
へき地医療支援部医員 | 内科系 |
診療内容
消化管疾患
診断:上部・下部消化管内視鏡検査を迅速に行う。色素内視鏡、拡大内視鏡、NBI、超音波内視鏡などを駆使して、診断能の向上に努める。また、苦痛のない、安全な内視鏡検査として経鼻細径内視鏡検査に加え、奈良県で最初にカプセル内視鏡小腸検査も導入している。
治療:内科系では、早期癌に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を行う。上部・下部の消化管出血例では24時間体制で緊急内視鏡、止血術を行い、また、食道静脈瘤硬化療法を専門医が施行する。さらに、経鼻内視鏡下ダイレクト法で経皮内視鏡的胃瘻造設術を行い、在宅療養を見据えた栄養・管理の教育、指導も行う。また、院内下痢症ではクロストリジウム・ディフィシル関連腸炎に留意して診断・治療を行い、胃・十二指腸潰瘍に対するヘリコバクター・ピロリ除菌療法、除菌不成功例の二次除菌、潰瘍性大腸炎に対する白血球除去療法なども施行する。
外科系では、早期癌に対して可能なら侵襲の少ない腹腔鏡手術を行い、進行癌ではガイドラインに準じて開腹手術を施行する。良性疾患では、鼡径ヘルニアに対する人工膜を用いた手術、痔核に対する痛みが少なく入院期間の短い手術(PPH法、結紮術)などを取り入れている。
抗癌剤治療では、薬剤部、看護部との協力のもと、最新の治療方法を安全に行い、患者の希望に応えて、できる限り外来化学療法を行えるように努める。
さらに、高度進行癌患者の癌性疼痛治療など、緩和治療にもチームで積極的に取り組み、地域の医療機関と連携して終末期医療に対応する。
肝臓疾患
診断:最新の超音波、MDCT、MR検査、さらに症例によっては血管造影、肝生検などを行う。
治療:肝硬変に対してアミノ酸製剤投与や腹水に対する段階的治療といった病態生理に基づいた治療などを行う。また、C型慢性肝炎に対しては、インターフェロン、リバビリン療法、B型慢性肝炎ではエンテカビルやラミブジンなどの抗ウイルス療法などを行う。肝臓癌に対しては、ガイドラインに準じてラジオ波焼灼療法または肝切除術を主として行い、肝動脈塞栓療法、抗癌剤の持続動注療法、インターフェロン療法などを加え、集学的に治療する。さらに、劇症肝炎に対する血漿交換などの特殊治療を臨床工学室と協力して行う。
膵・胆道疾患
診断:超音波、MDCT、MRCPでスクリーニングし、精査として内視鏡的膵管胆管造影検査や管腔内超音波を行う。
治療:重症急性膵炎に対して、ICU管理下に膵酵素阻害剤、抗生剤の持続動注療法・血液濾過透析療法を行う。また、閉塞性黄疸症例に対しては、原則的に緊急で内視鏡的胆道ドレナージ術を施行し、総胆管結石症例については、基本的には結石径が10mm未満、出血傾向合併例や傍乳頭憩室例ならば乳頭バルーン拡張術を、結石径が10mm以上ならば乳頭切開術を施行している。
外科手術適応となる結石などの良性疾患、膵臓癌などの悪性疾患に対して、ガイドラインに準じて腹腔鏡下、あるいは開腹下の手術を積極的に施行する。
2006年度消化器疾患診療実績
内科系入院(2006.4.1…2007.3.31)
新入院患者の疾患領域別では、消化器疾患355例(43%)であった。
・ 消化管疾患 205例(食道癌、胃・十二指腸潰瘍、消化管出血、胃癌、急性腸炎、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、大腸癌など)
・ 肝疾患 78例(肝硬変、慢性肝炎、肝臓癌など)
・ 胆道疾患 53例(急性胆嚢炎・胆管炎、胆石症、胆道癌など)
・ 膵疾患 19例(急性膵炎、膵臓癌など)
外科手術(2006.4.1…2007.3.31)
・ 胃癌 21例、大腸癌 14例、肝臓癌 2例、胆管癌 1例、膵臓癌 1例
・ 胆石・総胆管結石 33例(腹腔鏡下手術26例)、ヘルニア(鼡径、大腿、腹壁を含む)37例、急性虫垂炎 18例、腹膜炎 5例、腸閉塞 3例、肛門疾患 14例
検査・治療(2006.4.1…2007.3.31)
内視鏡検査 件 数
上部消化管内視鏡(経鼻) 1514(263)
超音波内視鏡 30
下部消化管内視鏡 230
S状結腸内視鏡 140, 全大腸内視鏡 90
内視鏡的逆行性胆管膵管造影 86
計 1860
内視鏡的治療 件 数
内視鏡的止血術 35
内視鏡的粘膜切開剥離術・ポリペクトミー 72
内視鏡的胃瘻造設術 39
内視鏡的食道静脈瘤硬化療法 31
内視鏡的胆道ドレナージ術・砕石術 38
その他 10
計 225
超音波 件 数
腹部 1471
肝生検 17
ラジオ波焼灼療法・経皮的エタノール注入療法 5
計 1493