「くるみ」ちゃん。男の子の名前だ。でも戸籍に名前が載ることはない。四日市市の若林真奈美さん(47)と一道さん(49)の息子で、8年前の9月28日、真奈美さんの出産中に亡くなった。
医療ミスがあったとして産婦人科の医師を訴えてから5年。26日に和解が成立し、津地裁四日市支部は亡くなった原因を医療ミスと結論付けた。この件を合わせ少なくとも4件の医療過誤訴訟が起こされていた医師側も謝罪した。
夫妻は「真実が分かり弁護士や裁判官などたくさんの良い人たちとの出会いに恵まれた」と感謝する。ただ、夫妻はくるみちゃんは「生きて生まれた」と主張していたが「死産」とされた。「あの子がいた証しになるから戸籍に名前を残したい」との真奈美さんの願いはかなわなかった。
真奈美さんが見せてくれた写真は、亡くなった後に撮ったものだが、可愛らしい新生児の姿だった。「死産という事実は悲しいけれど受け入れる気持ちができました。くるみは私たちの中にずっとずっと生き続けています」。真奈美さんの言葉はとても重い。【高木香奈】
〔三重版〕
毎日新聞 2008年9月29日 地方版