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【主張】トキ放鳥 絶滅前での保護が重要だ

2008.9.29 03:22
このニュースのトピックス主張

 「ニッポニア・ニッポン」という学名を持つ美しい鳥が佐渡島の大空に舞った。

 トキ復活への第一歩だ。人工繁殖に取り組んできた新潟県佐渡市の佐渡トキ保護センターと環境省が10羽を野外に試験放鳥した。

 一度は国内で絶滅した彼らが無事に生き延び、野生復帰を果たすことを願いたい。

 日本では過去に10種以上の鳥が失われた。かつては日本の各地でその姿が見られたトキも悲しい過去を持っている。

 羽毛が狙われ、明治以降は数を減らし、昭和初期にはすでに数地域で暮らすだけとなっていた。昭和56年に、唯一の生息地の佐渡島で最後の5羽が保護されたが、平成15年までにすべてが死んだ。

 現在、佐渡トキ保護センターなどにいる約120羽は、中国から贈られたトキを飼育施設の中で繁殖させたものである。

 一定の数に達したことから、野生での復活に挑戦することになった。自然を模した広大な順化ケージの中で半自然の暮らしを体験させたうえでの放鳥だ。

 コウノトリも国内で絶滅していたが、文化庁が力を入れて3年前に兵庫県で野生復帰させている。このように成功の先例はあるのだが、トキの場合は楽観できない。たくましいコウノトリに比べ、トキは極端に怖がりなのだ。カラスが近寄るだけで死ぬほど驚く。

 地元では、トキが餌の魚やカエルを食べられるように水田の環境を整えるなどしている。人間とトキが共存できる自然を復活させることが何より大切だ。

 これからトキは厳しい冬を越さなければならない。放鳥後、命を落とすトキが出るかもしれないが、冷静な対応が必要である。

 トキの野外放鳥は一度、絶滅させると、運良く外国に同種が残っていても、その復活がいかに大変であるかを物語る。投じる費用も莫大(ばくだい)だ。コウノトリにしてもトキにしても、国の保護策の失敗である。関係者の努力は大変だったが、国産種の子孫を残せなかったことを忘れてはならない。

 絶滅してからでは遅いのだ。今なら高山帯にすむライチョウも何とか間に合うだろう。海鳥のアホウドリは、あと一息で絶滅の淵(ふち)から抜け出せる。手をこまねいていても、緩めてもならない。

 生物多様性への取り組みは、その国の文化水準を物語る。

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