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社説:中山国交相辞任 あまりにお粗末なつまずきだ

 これが麻生太郎首相が言うところの「適材適所」人事だったとは、とても言えまい。発足1週間もたたぬ麻生内閣で、中山成彬国土交通相が成田空港の整備や日教組批判などの問題発言をめぐり、辞任に追いこまれた。次の衆院選を控えた新政権にはかりしれない打撃を与えた出足のつまずきである。

 閣僚としての資質に疑問を抱かせた一連の発言に加え、日教組解体論まで持ち出し「自爆」した経過はあまりにお粗末だ。首相は中山氏を任命した責任に加え、ただちに収拾に動かなかった認識の甘さも問われる。事態を厳しく反省し、一連の発言に対する自身のより具体的な見解も国会で説明すべきである。

 問題発言の波紋が広がる中、中山氏が地元・宮崎で行った発言は、異様なものだった。成田空港整備で地元の「ごね得」があったとの発言や、「単一民族」という言葉を用いた点は改めて陳謝したが、国交相としては所管外の日教組批判を改めて展開。「日教組を解体しなければいかん。小泉(純一郎)さん流に言えば『日教組をぶっ壊せ』」と息巻いた。

 与党内に更迭論が広がる中、特に日教組批判を印象づけたかったのだろうが、沈静化どころか、辞任を前提にしたような責任を欠く言動である。

 中山氏の一連の発言が知識不足と事実誤認の点で大きな問題をはらむことを、私たちはすでに指摘している。これではそもそも、国交相として職責にどれほどの熱意と関心があったかすら疑問だ。教育問題に関する発言がこれまでも物議をかもしてきたのだから「失言」というよりは「確信」だ。首相の人選は不適切だったと言わざるを得ない。

 さらに無視できないのは派閥への配慮など、人事のひずみが緊張感の欠如をもたらした可能性だ。閣僚人事で首相は親交のある議員と、文教族を優遇した。中山氏も文教族で、所属する最大派閥、町村派への気がねが起用の背景にあったとみられる。問題が表面化してからも、首相の動きが敏速だったとは言いがたい。

 それこそ政権を「ぶっ壊し」かねない辞任だが、発言をうやむやにしてはならない。中山氏はあくまで国会の混乱回避を辞任の理由としており、日教組発言についてはむしろ正当性を主張している。首相は発言を「甚だ不適切」と認め、国民に謝罪したが、それだけでは不十分だ。

 新内閣発足時の支持率は45%で、与党の期待ほど世論の「ご祝儀」効果はなかった。辞任が首相の解散戦略に影響を与える可能性は否定できない。

 与党の一部には、野党の追及を受けやすい補正予算の国会審議が本格化する前に解散に踏み切ることを探る意見もあるという。それでは、政権の底がしれる。衆参予算委員会の論戦を回避してはならない。

毎日新聞 2008年9月29日 東京朝刊

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