◎漫画で能登発信 魅力付けの意外な切り札に
石川県が今秋実施する県内の観光資源をテーマにした漫画作品の全国公募で、入賞者の
中から選抜し、能登の魅力を全国に発信する漫画を依頼するという。能登と言えば、豊かな自然や食材が魅力の一番手に挙げられるが、漫画という大衆性のある素材も加われば、復興後の能登の魅力アップの意外な切り札になるのではないか。
漫画による地域活性化では、鳥取県境港市が水木しげる氏の妖怪記念館の開館によって
、一躍知名度が上がったことが有名だ。輪島市出身の永井豪氏をはじめ、「医龍」で知られる乃木坂太郎氏、注目株の宮下英樹氏がいずれも七尾市出身。県境を越えれば、藤子不二雄(A)氏が氷見市出身で、地元ギャラリーの原画展に来館者の足が途切れることはない。能登一帯が、漫画家の揺りかご的な土地柄でもあることは、大いに活性化に生かせるだろう。
漫画コンテストは、永井氏らが審査員を務め、入賞作品については来年度に編集・出版
し、入賞者が能登の魅力を描いた漫画も三大都市圏などでの観光キャンペーンに活用するという。観光PRの手法として漫画が一役買うのも結構だが、コンテストをきっかけにして、漫画そのものを観光の核にするような取り組みにも力を入れてはどうか。
実際、永井氏の出身地である輪島市などでは、漫画を起爆剤にした活性化策も動き出し
ている。来春、同市の朝市通りに記念館がオープンするのを前に、昨年から永井氏を招いて「マンガキャラクター仮装コンテスト」を開催し、さらに地元では若手商店主らが、国際的な永井漫画人気も「売り」にして、台湾客らの呼び込みに力を入れている。
能越自動車道が開通すれば一層近くなる氷見市も含め、能登一帯の漫画家ゆかりの自治
体が、ご当地漫画家のキャラクターを使った共同企画を打ち出すことや、漫画を切り口にした新たな観光ルートを開拓することで、緊密に連携して取り組むことも大いに効果があろう。漫画コンテストの開催を機に、県が呼びかけてもいいのではないか。
◎農業インターンシップ 担い手確保の可能性拡大
石川県の就農支援インターンシップ事業に参加した県外の就農希望者二人が今年、白山
市と能登町の農業法人に就職した。農業の担い手確保の新しい可能性を開くものといえる。県外の都市圏在住者らの移住促進と同時に、農業法人に勤務する形での就農者の確保に弾みをつけたい。
富山県も今年度、農業法人での就農を円滑に進めるための新しい補助金制度を創設して
いる。農業経験の少ない人を雇用する場合、実務研修などにかかる経費の二分の一を補助する制度で、十三法人から補助申請があったという。企業的な経営をしている農業法人に「就職就農」する非農家の若者らを増やし、農業の新しい戦力になってもらう試みは、今後さらに積極的になされてよい。
北陸の農業はまだまだ個人経営が中心ながら、規模の拡大と効率化を図るため、農事組
合や有限会社、株式会社形態の農業法人が年々増加しており、昨年一月時点の法人数は石川が百四十八法人、富山は二百二法人に上る。各法人にとって、農作物の生産はむろん、商品の販売や開発、財務などの人材を確保することが重要な経営課題になっている。
石川県の場合、昨年まで十年間の新規就農者は二百八十人で、そのうち農業法人に就職
した人は五十四人(うち非農家出身者は四十九人)という状況である。株式会社の農業参入が増えてくれば、就職就農者を確保する必要性はさらに高まろう。
石川県が昨年度から始めた就農支援インターンシップ事業は県外の人を対象に、能登地
区の農業法人で稲作や野菜栽培などを体験をしてもらい、能登での就農を促す試みである。昨年は四人、ことし八月の研修には五人が参加した。受講者の中から実際に就農者が出てきたことは喜ばしく、地道に事業を続けてもらいたい。
昨年の研修では、金大が取り組む「能登里山マイスター」養成事業の視察も行われたが
、農業体験だけでなく、地域づくりに頑張る地元の人たちと触れ合い、能登の良さを実感してもらう機会を増やすことも大事であろう。