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“高齢者主治医”いまだ登録ゼロ
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後期高齢者医療制度開始に伴って今年四月から導入された「外来主治医制度」(後期高齢者診療料)で、一人のお年寄りを総合的に診る主治医(かかりつけ医)として届け出た県内医療機関は、制度導入からほぼ半年が過ぎた現段階で一件もないことが分かった。「患者の自由な通院を制限する」など現場の医師に抵抗感が根強いのが要因。厚労省は「お年寄りの病状を継続的にフォローできる」と利点を強調する一方「現状を検証して見直すべき点があればそうする」とも語っている。
青森社会保険事務局によると、本県では五月に八戸市の医療機関一件が主治医登録したものの、その後取り下げたため、九月二十五日現在で届け出はゼロ。厚労省の調べでは、四月中旬まで全国で約九千件の主治医の届け出があるが、その後調査は行っていない。
県内では、制度開始前後から、各医師会が「医療機関の連携が損なわれ、トラブルを招く恐れがある」などとして、主治医登録しないように呼び掛ける動きがあった。
制度反対の筆頭格だった青森市医師会の斎藤吉春理事は「一人の医師が内科、整形外科、皮膚科、眼科などを診られるものではない。今の医療は、各科の医師の連携が必要だが、主治医制度は、診療所同士の連携を壊すもの。現在の自由な通院(フリーアクセス)が制限される」と話す。
届け出ゼロの背景について、弘前市医師会の今村憲市副会長は「国民のコンセンサスを得ず、現場の医師も分からないうちに制度を実施した結果で、そのひずみが表れている」と説明。「国は専門医を選べる制度を推し進める一方で、七十五歳を過ぎたら、専門医を選ぶ権利を奪うというのはおかしい」と話す。
制度に伴って患者奪い合いの動きが出ることを懸念するのは、青森市の開業医。「国は、国民の健康を一番に考えるべきなのに、主治医制は医療費削減を目的につくった制度。その『目的』からして反対。医師の仕事は、患者をどのように良くするかであって、患者の取り合いをすることではない」と語る。
これに対して、厚労省保険局の担当者は「県全体での登録ゼロは珍しい。制度は患者と医師が相談して担当医を決めるもので、担当医はいつでも替えられ、他の医療機関を受けることに何ら制限を加えるものではない。誤解されているのではないか」とする。
その上で「(主治医制度は)お年寄りの病状を継続的にフォローでき、体調管理もできる。収益的にも悪くないと聞いている」と話し、「現場で制度に対してどのような評価があるのか検証したい。制度を利用できない状況があれば、見直しもあり得る」と続けた。
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外来主治医制度(後期高齢者診療料)
七十五歳以上の慢性疾患を抱える患者が、一人のかかりつけ医を選んで、継続的に治療を受ける制度。医療機関側に月六千円の定額報酬が支払われ、患者負担は原則月六百円。主治医は診療内容などの定期的な診療計画をつくり、提携先の病院名などを記載しなければならない。
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