国別基準と国際基準(1

 

FAOの「食品と飼料のカビ毒に関する法的規制(Worldwide regulations for mycotoxins in food and feed in 2003)」に記載されている各国のアフラトキシンの法的規制をみると、EU加盟国は品目別に規制値が定められており、B1とともに総量(B1B2G1G2)の値がB12倍に設定されている。

米国

乳以外の全ての食品

総量

20

カナダ

ナッツおよびナッツ製品

総量

15

オーストラリア

落花生、ナッツ

総量

15

EU加盟国

そのまま食べるか、または、食品成分として摂取することを意図した落花生、ナッツ、乾燥果実およびそれらの加工製品

B1

2

総量

4

そのまま食べるか、または、食品成分として摂取する前に、選別またはその他の物理的処理を必要とする落花生

B1

8

総量

15

そのまま食べるか、または、食品成分として摂取する前に、選別またはその他の物理的処理を必要とするナッツと乾燥果実

B1

5

総量

10

そのまま食べるか、または、食品成分として摂取することを意図した穀物(ソバ、ソバ属を含む)およびその加工製品

B1

2

総量

4

そのまま食べるか、または、食品成分として摂取する前に、選別またはその他の物理的処理を必要とする、トウモロコシ以外の穀物(ソバ、ソバ属を含む)

B1

2

総量

4

そのまま食べるか、または、食品成分として摂取する前に、選別またはその他の物理的処理を必要とするトウモロコシ

B1

5

総量

10

スパイス: トウガラシ類(チリ<熱帯アメリカ産のトウガラシ>、チリ粉、カイエンペッパーおよびパプリカを含む丸ごとまたは粉末の実)、パイパー類(白および黒コショウ)、メース(ナツメグの近縁種)、ショウガ、ウコン

B1

5

総量

10

日本

全ての食品

B1

10

韓国

穀類、大豆、落花生、ナッツ、小麦ならびにそれらを粉砕や切断のような単純な処理をした製品

B1

10

中国

トウモロコシとその製品、落花生とその製品、落花生油、照射したナッツ

B1

20

米、照射した米、植物油

B1

10

醤油、醤(grain paste)、酢、その他の雑穀、豆、発酵食品、発酵豆製品、澱粉製品、ぶどう酒、赤米(red rice)、バター・ケーキ、ビスケットとパン、食品添加物のアルファ・アミラーゼとグルコ・アミラーゼ、サラダ油

B1

5

大豆を主とする乳児食、乳児食「5410」、離乳食(米や大豆を主とする)、離乳補助食品(米、大豆、小麦、粉乳)

B1

不検出

このように国別規制が種々異なっては、国際的物流に支障をきたすことは明白であり、国際的統一を図るためにコーデックス委員会で討議されてきた。その結果は「現在の公式基準(Current Official Standards)」に掲示されており、「食材および乳用家畜に供する飼料におけるアフラトキシンB1を低減するための実践規範(Code of Practice for the Reduction of Aflatoxin B1 in Raw Materials and Supplemental Feedingstuffs for Milk-Producing Animals, 1997)」、「加工原料用落花生の総アフラトキシン量の最大許容濃度と採材計画(Maximum Level and Sampling Plan for Total Aflatoxins in Peanuts Intended for Further Processing,1999)」、「乳中のアフラトキシンM1:最大許容濃度(Aflatoxin M1 in Milk: Maximum Level, 2001)」、「落花生のアフラトキシン汚染を防止・低減するための実践規範(Code of Practice for the Prevention and Reduction of Aflatoxin Contamination in Peanuts, 2004)」、「ナッツのアフラトキシン汚染を防止・低減するための実践規範(Code of Practice for the Prevention and Reduction of Aflatoxin Contamination in Tree Nuts, 2005」の5つの文書が現在までに合意されてきた。これらの文書の中で規制値が定められているのは、加工原料用落花生に対するアフラトキシン総量として15μg/kgppb)と乳に対するアフラトキシンM1として0.5 μg/kgppb)のみであり、その他の食品については国際的基準値が合意されていない。基準値を設けるとそれを上回る食料の国際流通が止められることになり、発展途上国の飢餓がさらに深刻化する恐れがあることが基準を設定できないでいる最大の理由だと私は思っている。基準は設定できないまでも、汚染を防止・低減するための実践規範を策定してきたのであり、2005年のナッツに関する実践規範の項目をみてみよう。

緒言

この実践規範は、生産から消費までの全ての段階における手引きとなる: 適正農業基準(GAP: Good Agricultural Practices)、適正製造基準(GMP: Good Manufacturing Practices)、適正伐採基準(Good Extractivistic Practices)、適正保管基準(GSP: Good Storage Practices)

ナッツ類: アーモンド、ブラジル・ナッツ、カシュー・ナッツ、ハシバミの実、マカダミア・ナッツ、ペカンの実、松の実、クリの実、ピスタチオ・ナッツ、クルミ

欧米諸国や日本に輸出される熱帯のアマゾンで生産されるブラジル・ナッツについて特に指摘がある。

樹木の伐採と伐採制限

Plant Extractivism and Extractive Reserves

樹木の伐採は、依然として、アマゾンにおける重要な経済活動である。それは多くの労働者を雇用し、地域経済を動かしている。2種類の伐採があり、その違いを知ることはとても重要である。非保護論者は熱帯雨林を劣化または、植生を直接破壊する開発であり、保護論者は植生を保護する開発である。

ブラジル・ナッツはクリの一種で、樹高は2030mに達し、1月末に収穫される。高温多湿の環境なので、落下した「いが」の中でカビが繁殖し易い。

Brazil-nut tree

1. 適用範囲

この文書は、次の勧告とともに、ナッツ類の国際取引に係わる全てのヒトに適用される。

ナッツ類の衛生的取扱いに関する国際規範の勧告(Recommended International Code of Hygienic Practice for Tree Nuts)、食品衛生の一般原則に関する国際規範の勧告(Recommended International Code of Practice- General Principles of Food Hygiene)。

2. 適正農業基準(GAP)、適正製造基準(GMP)および

適正保管基準(GSP)に基づく勧告基準

2.1果樹園または採集地についての基準、2.2植林、2.3 収穫前、2.4 収穫、2.5 収穫後、2.6 処理、2.7 処理したナッツ類の保管場所への輸送、2.8 保管

3. 特定のナッツ類に関する要件

3.1 ピスタチオ・ナッツ、3.2 ブラジル・ナッツ

4. 将来検討すべき補足的管理システム

 

たとえば、「2.4 収穫」の項ではカビの着生を少なくするために、できるだけ速やかに作業することとされている。山に栗拾いに行かれた方は御存知だと思うが、木になっている段階で虫が付いているものが多い。「果樹園または採集地」となっているのは、ブラジル・ナッツの木は野生のものもあるからであり、病害虫防除をしていないそれらは木についたままカビが着生している。野生で無農薬であるが故に、アフラトキシン汚染の危険性が高いのである。

生産、処理・加工、輸送、保管に関する適正基準を遵守し、「食品衛生の一般原則」としてHACCPを推進することがこの「実践規範」の中身である。