アフラトキシンのリスク査定: 「レッド・ブック」モデル教材
Aflatoxin Risk Assessment: “Red Book” Model Exercise
Charles Yoe博士、ノートルダム大学、メリーランド
この翻訳は、岡本個人が国民教育の教材提供として行うものであり、一切の営利活動とは関係していない。この資料を商業的に利用される方は、「Food Safety Risk Analysis Clearinghouse」とCharles Yoe博士の許可を直接得てください。また、誤訳等があり得ることもお断りしておきます。
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No.59 答えは、これと次のスライドに示しました。あなた自身の計算と比べてください。 (岡本註: No.56で「リスク査定のこの手順を理解したいと思われる方は、次のスライドに移る前に自分で計算してください」とありましたが、自分の頭で考えることが大切です。「安全か安全でないか」を判断するのは、個々人です。「こんな面倒な計算などできるか!」と投げ出して、「専門家の言うことなど信頼できるか!」と叫ぶ方はいませんか? 車を運転する前に自分で点検するように自動車教習所で習いましたが、あなたは実行していますか? 点検していなくても、「何時故障して事故を起すか<不安>だ」という方は少ないでしょう。専門家の査定を信頼すべきではないでしょうか?) |
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No.60 これは集団の平均値です。アフラトキシンの摂取量が極端に多いか少ない(平均摂取量の99%信頼限界および1%信頼限界の外側)の方は、このデータに当てはまらないでしょう。 |
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No.61 あなたが今計算した中で、リスク査定の部分を分けることができますか? どの程度癌が増えるのかという質問に我々は確かに答えましたが、スライド3と16に示した質問に答え切ったのでしょうか? 「どのような障害が起きうるのか? (癌の追加的発生)」、「どのようにしてそれが起きるか? (アフラトキシン)」、「どの程度の重篤度であるか (死亡)」については答えたと我々は思います。しかしながら、それらの死亡が発 |
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生する「その頻度はどの程度か?」について我々は判りましたか? 我々の解析において、新たに1.23人の癌患者が発生することを我々が確信できないことを示唆する不確実性の証拠が沢山あります。この質問について、手短に検討しましょう。 スライド16の政策質問に関しては、我々のリスク査定の結果は答えになっていません。しかしながら、それらの決定を下し、それらの質問に答えるためのいくつかの重要な情報を示しました。特定の管理対策が癌による死亡をどれほど減少させることになるかといった質問を検討するために、我々のモデルを使用することができます。たとえば、収穫作物の強制乾燥がアフラトキシンの産生と濃度にどの程度影響し、その結果として、アフラトキシンの摂取量にどの程度影響しますか? 摂取量を変更し、指標の計算をやり直せば、死亡数は違ってくるのであって、それはリスク管理の選択肢、今の例では強制乾燥に起因します。 |
No.62 あなたは、「Clearinghouse」に掲示されている人口甘味料 アスパルテーム(Aspartame Information Center)を食品安全の化学的リスク査定モデルを使う練習教材として、二つの方法を比べる機会がある。あなたがそれらの方法を見たならば、あなたはこれらの質問に答えたくなるかもしれません。そうでない場合、この質問は省いてください。 |
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No.63 優れたリスク査定は、不確実性の存在を認め、不確実性を特定し、不確実性を定量化し、不確実性に取組みます。可能な場合には不確実性を減らし、不可能な場合にはその他の方法で処理します。 |
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No.64 これは、あなたがリスク査定の手法を理解する手助けとして作成した例であることを、もう一度、思い出してください。これは、アフラトキシンによる癌の実際のリスク査定ではなく、そのように解釈してはいけません。これは、あくまでも、仮定の例です。 1つの選択肢は、感度の解析です。我々は、鍵となる要因のために異なる値を使って計算を繰り返すことが可能です。活性値(Potency Values)には信頼区間が設けられたことを思い出してください。このことを踏まえて、異なった活性比(potency rates)における発癌の頻度を比較してみましょう。このスライドの中で、B型肝炎の流行のような鍵となる値を、最頻値とともに最小値と最大値の範囲として入力します。これは、山形をした各値の分布(正規分布)を正確に記述するためです。 この計算表において、世界における発癌率の大きな違いがわかります(このモデルは、癌が全て死の転帰をとると仮定している)。この違いはどうして生じたのでしょう? 食事とB型肝炎の流行が、2つの主な要因です。 もう一つの選択肢は、何千もの異なる筋書きについて発癌率を計算するために、モンテカルロ・シミュレーションを使うことです。この方法では、モデルの入力に際して、明らかな不確実性を考慮するために確率分布を用いて行われます。モンテカルロ・モデル結果は、右側に示しました。このスライドに示した数値は、何千もの異なる筋書きの一つの例に過ぎません。 |
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No.65 これらは、我々が仮定した例から計算した結果です。 このグラフは、世界の2つの異なる地域における癌による死亡の推定される分布を比較したものです。赤い線で示した東アジアについてのモデルは上側にあり、アフラトキシンによる癌死が東アジアにおいてより高頻度で起きることを示しています。これらの累積度数分布曲線は、一つ前のスライドで示したモデルを使って作成しました。さて、どれ位の死亡が起きそうなのかを言えるようになり |
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ましたね。この赤い線は、あなたが計算の例としたものとは異なるモデルであることに注意してください。緑の線が欧州のものであり、アフラトキシンによる死亡が216より低い確率は60%であることを示しています。 |
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No.66 ・・・(スライドの通り) 岡本註: リスク・コミュニケーションとして「管理措置の選択肢を説明する」ことに注目してください。日本では、基準、規則、法律を作成した後で期間を限って意見を求めているが、そうではなく、作成する前に利害関係者に選択肢を示してどれを選ぶか議論することが欠けている。この議論の中で、リスクを許容することによる利便性、リスクの多少と管理措置の費用などが利害関係者の間でもまれ、国民的合意が形成されることになる。 |
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日本の「リス・コミ」は、決定した基準、規則、法律の説明会に過ぎず、しかも、所定の組織を代表する正規の利害関係者ではなく、暇人が集う場所でしかない。これでは、管理措置の決定過程に利便性や費用などが入り込む余地はなく、「ゼロ・リスク」が幅を利かせることにしかならない。「そのリスクを他の人々に知らせる」とは、リスク査定の結果、基準の設定値よってリスクがどのように変化するかを理解するためのものであり、「管理措置の選択肢を説明する」ための準備である。 これらのことができないために、BSE全頭検査に関して毎年数百億円を使って、結果としては一人の生命をも救えない「税金の無駄使い」が起きている(BSE専門部会の報告では、日本において新型ヤコブ病が発生する確率は極めて低いことが指摘されている)。 |
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No.67 あなたがモンテカルロ・シミュレーションについてもっと知りたいならば、「Clearinghouse」に掲示されているスライドを見てください。リスク査定の別の方法の例として、人口甘味料 アスパルテームの安全性について示されています。 |
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