アフラトキシンのリスク査定: 「レッド・ブック」モデル教材

Aflatoxin Risk Assessment:  “Red Book” Model Exercise

Charles Yoe博士、ノートルダム大学、メリーランド

 

食品の安全性についての理解を深めるために、国際的考え方を学ぶ適切な教材としてCharles Yoe博士の講演を連載する。これまで書いてきた化学物質の用量―反応関係と基準値の解説を基に、次の作業手順としてリスク解析(risk analysis)という概念を理解する必要がある。その教材として、Charles Yoe博士の講演は最適であると考える。

この翻訳は、岡本個人が国民教育の教材提供として行うものであり、一切の営利活動とは関係していない。この資料を商業的に利用される方は、「Food Safety Risk Analysis Clearinghouse」とCharles Yoe博士の許可を直接得てください。また、誤訳等があり得ることもお断りしておきます

 

No.1 アフラトキシンのリスク査定

この教材は、1999年冬にクアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国のために、国際生命科学協会ILSI: International Life Sciences Institute)の会議の一部として準備された教材を改定したものである。これは、食品安全のリスク解析(risk analysis)におけるいくつかの手法を紹介するために提供された。とくに、いわゆる「レッド・ブック」の科学的方法論をどのように食品安全に適用するかを示している。「レッド・ブック」は、1983年に米国科学アカデミー

が示したリスク査定(risk assessment)の科学的方法論であり、危害の特性解明(Hazard Characterization)、用量―反応関係、暴露、ならびにリスクの特性解明(Risk Characterization)からなる。

教材はリスク解析の概説から始まる。これらの話題の詳しい情報に関しては、「Food Safety Risk Analysis Clearinghouse」のリンクと掲示物を参照できる。それでは、米国科学アカデミー(レッド・ブック)とコーデックスの専門用語のいくつかを紹介しよう。食品安全のリスク査定の例としてこれから取上げるアフラトキシンについての議論に移るための予備知識としてである。アフラトキシンの例は、自発的学習目的のためのみに提供するものである。この事例の如何なることも、世界のどこかにおけるアフラトキシンのリスクに関する事実に基づく供述として解釈すべきではない。

 

No.2 リスク解析

リスク解析は、「橋を架ける」または「傘を差す」という概念である。それは鳥瞰図であり、全ての手順を含む用語として我々は使用している。リスク解析は三つの部分からなる。それらの部分には、重なりがあり、その境界は必ずしも明確でない。リスク解析は、物事を考える方法を我々に提供してくれる。この教材では、主として、リスク査定作業に重点を置いて説明する。

No.3 リスク査定

ここに、リスク査定の直感的な定義を示している。リスク査定は、これらの質問に対して適切に答えるために必要な作業である。その答えは、質的、量的、あるいはその中間のものとなる。

No.4 作業手順は?

学術文献には、多くのリスク査定モデルがある。あるものは一般的モデルであり、他のものは特定のリスクを査定するために開発された。

食品安全に適用されている2つの広く知られているリスク査定モデルは、コーデックスと科学アカデミー(NAS)のモデルである。コーデックスは国際規格を設定する組織である。NASは米国の組織である。

これらのモデルは、リスク査定について考える方法を提供する。それらは、定理でなく、また要件でもない。  これらのモデルに基づく実際の査定は、様々な方法で行われ、その順序は必ずしも明確に特定できない。全てあるいは大半のリスク査定において、これらの4つの作業手順が明確に記述されているのをあなたは見つけられないでしょう。しかし、これらのモデルを使用している査定にお

いては、それぞれの作業手順の何らかの変形した記述を普通は見つけることがでる。

モデルは、この世界で物事がどのように進められるかについての単純化した記述である。モデルを造ることによって、所定の条件下でどのような結果を予想できるかについて洞察することができ、仮定と変数を変えた際に何が起きるかをシミュレーションできる。

この教材は、これらの基本的モデルの使用例を提供する。

No.5 コーデックスのリスク査定(1

 

 

ここに、コーデックスのリスク査定における手順の定義がある。その堅苦しさにもかかわらず、これらの手順が先に示した直感的な定義を反映していることに注目してください。

 

No.6 コーデックスのリスク査定(2

 

 

これらはコーデックスのリスク査定における残りの2つの作業である。リスクの特性解明は、その取りまとめがどのように見えるか、あるいは、それがどのように行われたのかについて特定しない。多くのリスク査定は、そのリスクを確率で表す。以下のアフラトキシンの例において、リスクの特性解明として、我々は予測される癌による死亡の増加数を用いる。

 

No.7米国科学アカデミーのリスク査定(1

米国科学アカデミー・モデルの用語は、若干異なるが、大きく異なるという訳ではない。その手法はコーデックスの手法と本質的には同じである。

これらのモデルは、先に示したリスク査定の質問に答えるための系統的手法を提供する。

No.8米国科学アカデミーのリスク査定(2

ここで、リスクの特性解明が、確率として明確に記載されていることに注目してください。これが一般的であるが、明らかに必要でないこともある。

(つづく)