ニューヨークで新たな「炭ソ菌」感染者が出て、「新たなテロか!」と 全米を震撼させている。CIAは、イラク関与の可能性を指摘、 「菌の培養は容易だが、人間が吸い込むようにするには高度な技術と設備
が必要、アフガニスタンでは不可能だが、イラクならその技術を持ってい る」と主要容疑者としてイラクの名前をあげている。
湾岸戦争後の停戦条件で、イラクは安保理決議687条を受け、大量破壊 兵器の完全廃棄を承諾したものの、国連査察団をあの手この手で阻んだ。 未だに残る疑惑として、生物化学生産工場と思われるアル・ハカム飼料工場が含まれ、そこには生産用媒体が約17トンあると言われている。ボツリヌス毒素、アフラトキシン、そして炭ソ菌も含まれる。
イラクは今まで、イラン・イラク戦争時にマスタード・ガス5回、神経ガス2回をイランに使用、自国内のクルド族に対しても化学兵器を使用、湾岸戦争時には、化学剤・生物剤をミサイルに搭載していたが、アメリカの報復警告で使用しなかったという。
2月にアメリカがイラク空爆を行った直後、ラスベガス近郊で炭ソ菌を所持していたイラク人男性2人をFBIは逮捕している。
もし、イラク関与の証拠が裏付けられれば、アメリカはイラクに対しても空爆を開始するのか?
「炭ソ菌」感染の初期症状は風邪の症状と類似しており、ペニシリンなどの抗生物質を大量に、そして連続的に投与すれば多くの場合治癒出来るそうだが、適切な治療が成されなければ、呼吸器系症状の発現後、2日以内に死亡するという。
それに、大量に感染した場合、抗生物質が不足したり、抗生物質は劇薬なので、身体が弱い人は大量投与に身体が耐えきれないだろうと言われている。
「ひえ〜。怖いね」
生物化学兵器は、「貧者の核兵器」と呼ばれ、
1. 費用対効果に優れている
2. 製造が簡単
3. 原料入手が容易
4. 多種多様な局面での使用が可能
とされている。
生物化学兵器による「見えないテロ」の脅威に日本も巻き込まれる可能性は十分にある。
現に、1995年オウム真理教による「地下鉄サリン事件」が起こった。しかしながら、この「新たな危機」を真剣に受け止めたのは、アメリカだった。
ウオルターリード陸軍医療センター(WRAMC)に設けられているSMART-BCという専門
家集団があり、地方自治体の警察、消防、医療関係者に対して指導、助言を常時している。スタッフは、通常病院に勤務しており、24時間オンコール体制で待機、年1回の訓練を行っている。
米陸軍感染症研究所(The U.S. Army Medical Research Institute of Infectious
Disease)は、衛生放送を通じて生物防護対応の教育訓練プログラムを世界約120都市
9万人に提供することが出来る。
99年には、米国厚生省の指示で、米国疫病管理センター(CDC)にバイオテロ対策部門が設置、公衆衛生インフラの整備を図るのが目的だ。
「日本の対応はどうなの?」
事件後、「サリン防止法」は成立したが、生物化学兵器に関する取り組みは非常に立ち遅れている。
今年3月に「部隊医学実験隊」を設立されたが、専門スタッフは不足、研究施設は整っておらず、とてもじゃないが対応出来るだけの機能を持ち合わせていない。
でもね、もっと怖い兵器があるよ。
「何なの?」
「遺伝子兵器」だ。
「遺伝子兵器?! そんなのあるの?」
今はないよ。でもね、英国医師会は、遺伝子工学の発展により、例えば特定の民族を選んで死に至らしめることが出来る「遺伝子兵器」が、5〜10年で出現するだろう、と警告している。
「ヒトゲノム計画」って知っている?
「人間の全遺伝子情報の解読を研究しているんだろう。確か、解読出来れば、癌、老化、遺伝子病の研究、治療に大いに貢献出来るという・・・」
そうなんだが、それがもし軍事利用されたら?
「う〜ん。遺伝子情報が100%解読可能なら、治療の逆も考えられる・・・・ のかな?」
そうだね。ある民族の遺伝子にだけ反応して、感染するウイルスをバラ蒔く、そういったことも考えられるわけだ。実際、南アフリカなどでは、アパルトヘイト時代、黒人に対する細菌兵器の研究が進められていたという。
それに、イスラエルのネス・ツィヨナ生物学研究所では、特定の遺伝子を持つ人だけを攻撃出来るようなバクテリアやウイルスを研究・開発しているという。
「まるで、SFの世界だね。でも、そんなことが起こらないための「生物・化学兵器禁止条約」なんじゃないの?」
現在約140カ国が条約に調印しているが、査察、制裁が曖昧なんだ。全くあてに出来ないと言えるだろう。
人類は核兵器以上にやっかいなものに対処しなくてはいけなくなったのではないだろうか。
「う〜ん。日本の危機管理は大丈夫なんだろうか・・(溜息)、では、またね」
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