一勝二分け。こんなさえない戦績のサッカーチームでも宣伝文句次第で次の試合に観客を呼び込める。ポイントはポスターへの成績の載せ方。さて、どう工夫するか。
数字との付き合い方を軽妙に記す「食い逃げされてもバイトは雇うな」(山田真哉著)に出てくるクイズだ。答えは「三戦無敗」。確かに偽りではなく、しかもパッとしない戦績が一気に輝いて見える。
物事の一部だけを見せることで実態が違って映る。宣伝であれば受け取る側も「うまいことをいう」などと笑って済ませられるが、政治の世界についてはそうはいかない。
かつての選挙公約でなく、マニフェストという言葉を使うことが多くなった。国政選挙の場合は政権公約と訳す。内容的にも向上を期待したのだが、どうも思惑違いのようだ。
自民、民主両党が総選挙に向けてマニフェストをまとめている。自民党はあすの麻生太郎首相の所信表明演説で多くが分かるだろう。しかし、今までのところ聞こえてくるのは耳ざわりのいい文言ばかりで、信頼感に欠ける。
三戦無敗と同じで相変わらず不都合な部分を覆い隠しているからだ。少子高齢化や財政難の厳しさは誰もが知っている。どう荒波を乗り切って安心を導くか。二大政党は思い描く日本丸の航路を誠実に示してもらいたい。