新潟日報の朝刊掲載は2006年9月21日、ホームページ掲載も11月末で終了しました。双方向の情報交換の場として、自由投稿、写真投稿などに多数のご意見、感想をお寄せいただき、ありがとうございました。
柏崎支局 鶴巻新也(27)
 現代社会は格差社会や実力主義の時代といわれる。「他の人には負けたくない」「すきを見せてはいけない」と自分を追い込んで張りつめた暮らしを送る同年代の仲間に会うことがある。私も同じような生活を過ごしてきた。だから、スローな生き方を実践する三人に出合い、どこか肩の荷が下りた気がした。
 大学時代、就職活動の時期を迎えたとき、初めて将来を考えた。満員電車に揺られて出勤し、疲れて肩を落としながら、人いきれの充満した電車で家路につく。こんな毎日を想像したときに、東京で暮らすのは性に合わないと思った。
 記者になり、スローとはほど遠い生活だが、時折、緑の中で風を感じると、ほっと和む瞬間がある。「故郷に帰って、ガッツポーズして『やったぜ』って言いたいくらい、よかった」。こう話した芝井良友さん(27)の充実した笑顔が印象的だった。私も少し、生活にゆとりを見つけようかな。

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    夕焼けを背に愛犬BON(ボン)を連れてスケートボードをする芝井良友さん。好きな仕事、仲間との遊び、1人の時間…どれもが楽しくて「毎朝起きるとわくわくしていますよ」=柏崎市西港町
    長岡支社・大渕一洋(26)

     ゆったりとした心豊かな暮らしぶりを意味する「スローライフ」。入社5年目、これまで「スロー」なんて感じたこともない私にとって、スローライフは「ゆとりあるおじいちゃん、おばあちゃんの老後の暮らし」のイメージだ。社会人としてキャリアも浅い20代にとっては縁遠い話かとも思っていた。ところが、同年代なのにひと足もふた足も早く、自分なりの生活のゆとりをまじめに考える生き方を選んだ若者がいた。仕事を頑張りながらも「あくせく働くだけが能じゃない。自分のライフスタイルを貫こう」と、スローを実践する20代に会った。
    柏崎支局 鶴巻新也(27)

    自然に触れ心安らぐ
    貫けマイライフスタイル


     「1日の最後を夕日が沈む海岸で迎えるって最高でしょ」
     夕日で赤く染まる柏崎市西港町の海岸。友人や愛犬と一緒にスケートボードを楽しむ美容師芝井良友さん(27)=同市穂波町=は、すがすがしい笑顔で私に語りかけた。昨年暮れ、「スローライフ」にあこがれ、8年間過ごした東京から故郷に戻った。

     柏崎商業高(現柏崎総合高)を卒業し、東京の専門学校に進学。美容師免許を取得し、原宿、池袋の有名店で働いた。ミュージシャンやモデルのヘアスタイリストのアシスタントも務め、技術を磨いた。故郷に帰る直前の美容室では、部下5人を持つまでになった。

     だが、朝から深夜まで働き詰め。休日はないに等しかった。食生活が乱れ、体重が10キロ以上減り、洗濯する時間もないほどのハードワークに、心も体も疲れていた。東京の雑踏を離れ、少ない休日にサーフィンをしたり、飼い始めた犬と公園を散歩したりするようになった。

     忙しい東京暮らしで、初めて感じたのんびりした時間。「自然に触れて心の底から安らぎを感じた。がむしゃらにやってたときは感じたことはなかった」と芝井さんは振り返る。

     将来のことを考えたとき「これから暮らしていくのは東京なのか」と疑問が浮かんだ。「自然がある場所で人生を生きていきたい」。そんな思いが膨らんだ。柏崎に帰っても美容師として仕事ができるか不安はあったが、東京を離れる決心をした。

     現在は、個人営業の美容師にスペースを提供する同市内の美容室を利用して、完全予約制の個人美容室を開いている。自分で日程を組めるため、客の好みや生活を聞きながら、東京時代の倍の時間をかけて髪型をつくるようになった。仕事の合間にはスケボーやサーフィンを楽しむ。雨が降れば本を読み、絵を描く。

     私は社会人になりたての20代のうちは、仕事第一に生活せざるを得ないと思っていた。生活にゆとりを求めたい気持ちはあるが、現実はそんな時間の余裕はない。

     「東京のときは、金を持っているとか、いい車に乗っているとか、他人から見た評価ばかり気になっていたけど、今は自分がいかに満たされるかを大切にしている」。芝井さんは充実した表情で語った。

     ■息苦しい東京

     加茂市の市街地から約10キロ離れた山あいにある下高柳集落。水道管が老朽化して水が出ない自宅で、飲み水は近所の井戸水、風呂はコミュニティーセンターを利用する。長岡造形大研究員星野新治さん(28)は一昨年、同集落の中古住宅に移り住んだ。

     同大卒で、在学時に風景デザインの研究をしていたことから、農村に興味を持った。卒業して最初に就職したデザイン事務所の仕事で訪れた下高柳を気に入り、引っ越すことを決めた。

     研究員の仕事は泊まり込みもあり、個人的にデザインの仕事を受けることもあって生活は忙しい。だが家に帰れば一転、満天の星空を眺め、飛び交うホタルに心安らぐ。時間がゆっくり流れ、ゆったりとした空間にほっとする。「20代はキャリアアップも必要。仕事のときはファスト、家ではスロー。生活の一部でもスローな部分を持てることに満足している」という。

     東京に生まれ育ちながら、自然を求めて地方に住むことを選ぶ人もいる。上越市富岡の松川菜々子さん(25)はNPO法人「かみえちご山里ファン倶楽部」の一員として、同市中ノ俣にある環境教育施設「同市地球環境学校」に勤務している。

     西東京市出身。自然にあこがれ、21歳のとき東京を出て北海道斜里町の知床自然センターで解説員として働き、2003年4月、子どもたちに自然環境について教えたいと、同市に来た。

     故郷の東京との違いを松川さんは「地域の人が声掛けてくれたり、新潟は人と人のつながりが濃い」と話す。故郷は「隣は何をする人ぞ」状態。2カ月に一度、東京へ帰ると、「空が狭くて息苦しい」と感じる。

     故郷を離れて4年。「自然に囲まれ、人と触れ合うことで生きている実感を感じられる。暮らしを楽しみ、『良く生きる』ことができる」と上越の魅力を語る。

     ■無い物ねだり

     本県は若者の多くが進学や就職で首都圏など都会へ出る。私も大都会にあこがれ、東京の大学に進学したクチだ。田舎に背を向ける人をどう思うか、松川さんに聞いた。

     「新潟の人が田舎にないものを求めるように、私は都会にないものを求めた。みんな無い物ねだりなところがある」と話し、「出てから田舎のよさを知る人もいると思う」とも言う。

     20代の誰もが3人のように生きられるとは限らないだろう。プライベートを犠牲にしてでも、仕事に没頭する人もいる。

     星野さんは「都会に住んでも、田舎に住んでもどちらでもいいと思う。ただ、自分のライフスタイルを持っていない人生は味気ない」と話した。3人のように「マイライフスタイル」を貫くことが、心豊かな生き方に通じるのかもしれない。

    2006/07/05|COMMENT(8)
    もう少し柔軟に考えてみては〜 - 20s
    いろいろな意見を拝見させていただきました。 私なりの感想としては、スローライフというのは@都会か田舎どちらで生活するかといったことだけでなくもっと内面的なもの、価値感であったりビジョンであったり、そういったものと深くかかわってる気がします。Aまた、都会暮らしか田舎暮らしかという点についても、必ずしもどちらかに限定する必要はないのではと思います。例えばイギリスではカントリーサイドで家を見つけて暮らすことに人気があると聞きます。子供を進学させるにも日本のように条件の整った学校が都市部に集中してるのではなく、地方にも条件の揃った学校が多いそうです。また、買物や都会的な文化に触れたければ高速道路網が発達してるうえに通行料金も無料なので気軽に出かけられるそうです。また、文化的な面でも、その他の面でも今の日本の地方都市の多くは、あまりにも何かに依存し過ぎてはいないでしょうか。東京の方ばかり向いているのではなく、例えば湯布院のように市民の手でその地域独自の文化を築き上げ、それを外に向けて発信するようなことがもっとあってもいいのではないでしょうか。
    【2006/07/10 22:46】香壱|東京都大田区|30歳|会社員
    そうですね。 - 20s
    こういう記事は、いろんなところで見かけるんですけど、今回は、なぜか自分よりも若い世代の方々の声が、すっと、はいってきたように感じています。
    こういう考えのかたが増えれば、なおいっそう、新潟もいいところになるように思いました。
    (皆さんいろいろ努力したからこそ、こういうことを考えることができるんだ、ということも言えるんでしょうね)


    【2006/07/09 21:39】erukane|佐渡市|43歳|
    生き方 - 20s
    田舎でのスローライフ、都会での生活。どちらが合うかは人それぞれだと思います。自分に合う環境を選んで、その人が幸せなのが一番。
    私は今、仕事のことでこれからどうするべきか悩んでいるのですが、仕事や働き方と同じくらい「ライフスタイル」も幸せに生きていくための重要なポイント。すべて含めて、自分に合った生き方を見つけていきたいです。
    【2006/07/08 16:09】もも|新潟市|23歳|会社員
    暇な新潟 - 20s
    高校卒業まで新潟市で過ごし、その後大学4年間を東京→新潟で2年半サラリーマン→転勤で東京勤務3年目です。
    「東京は息苦しい」との記載がありましたが、私にとってはたまに新潟に帰ってもやることもなく1日え飽きてしまいます。
    そんな私にとっては新潟の方が息苦しいです。料理とお酒は最高においしいけど、冬の天気は東京の気候を経験してしまうと、二度と帰りたくないと思わせます。
    人それぞれの考え方があるのだから、東京はダメって決め付けるような記事よりももっと多面的な記事を載せたほうが良いと思います。
    【2006/07/08 09:03】akkun|浦安市|27歳|
    どちらかと言えば… - 20s
    私、どちらかと言えば“アンチ”スローライフ派です。
    高校卒業して東京の大学へ、その後東京に本社がある会社に就職し、おおよそ10年間関東地方内を転々と暮らしていました。
    新潟よりも関東の方が今でも知り合いが多いし、楽しかったことが多かったのです。
    それに東京をはじめしょせん都会はあり余る刺激や情報から自分が欲しい分だけ取り入れればよいのですから。
    ここ新潟はあまりにも、刺激や情報が少な過ぎで、しがらみが強すぎます。 ですから若者たちが嫌がって都会へと“逃げて”行くのでしょう。
    私は今でも戻れるものなら東京に戻りたいと思っております。
    【2006/07/06 20:31】Mr.蝦蟇蛙|新潟市|38歳|会社員
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