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社説:メラミン検出 「食の安全」が崩れてしまう

 「食の安全など、もう信じない」。これが国民の声だろう。事態は深刻だ。

 中国製牛乳を原料にした丸大食品の食品から有害物質「メラミン」が検出された。輸入食品にメラミンが混入していた事実を重く受け止め、政府は素早い対応を取る必要がある。

 政府は緊急対策に加え検査体制の見直しなど抜本対策にも積極的に取り組む必要がある。国民の暮らしに直接かかわる問題だけに、迅速な対応をしてもらいたい。

 直ちに取り組む課題は、すでに輸入され国内で流通している加工食品や医薬品などに対するメラミンの検査を業者に徹底させることだ。結果を直ちに公表することは言うまでもない。

 日本に中国の牛乳や脱脂粉乳などを使った加工食品がどれだけ輸入されているかを政府はつかんでいない。相当量の加工食品が流通している可能性が指摘されているが、業者が検査や報告を怠ったことが原因で健康被害が出るようだと、食の安全は根底から崩れてしまう。

 メラミンが混入した食品の輸入を水際で食い止めることも同時に行うべきだ。厚生労働省は中国製乳製品を使った食品を、食品衛生法に基づく検査命令の対象としたが、当然の措置だ。

 次に食の安全を確保する抜本的な対策だが、検査体制を再構築し、検査項目も見直してもらいたい。来年度、食品衛生監視員を50人増員する予定だが、問題は検査の中身だ。これまでメラミンは「食品に使うものではない」として検査対象になっていなかった。残留農薬やカビなどの細菌の検査が中心だったが、それだけでは不十分なことが明らかになった。

 「有害物質は食品には使われていないはず」という性善説に立って行ってきた検査のあり方を見直す必要がある。膨大な種類がある化学物質をすべて検査せよなどとは言わないが、検査内容の洗い直しは必要だ。食料自給率が低く、食品を輸入に頼る以上は必要な費用をかけて検査を充実させることが必要だ。

 政府が食の安全問題に機動的に対応できているのか。これも検証が必要だ。現在は厚労省、農林水産省、内閣府が担当しているが、縦割り行政の弊害も指摘されている。政府は消費者庁を創設する方針だが、食の安全を担当するセクションの一元化を検討すべき時に来たのではないか。

 中国には迅速な情報公開と食品安全対策の徹底を求めたい。世界保健機関(WHO)が中国の地方当局とメーカーの報告遅れを批判したが、各国の思いを代弁したものだ。

 日本の食品輸入額をみると、中国は米国に次いで2番目に多い。日中両国の食品行政担当者が「食の安全」について随時協議できるパイプを確立し緊密な情報交換を行う体制作りも急がなければならない。

毎日新聞 2008年9月28日 東京朝刊

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