【コラム】米国経済の低迷を笑える立場にはない(下)
産業銀行がリーマン・ブラザーズの買収に乗り出した際、関連する部処(省庁)の公務員は後から責任を追及されることを恐れて反対したが、中でも為替担当の公務員が激しく反対していた理由は「ドル不足」だった。数十億ドルもの買収資金をどうやって韓国国内で調達するのか、ということだった。
困難な状況が訪れた時の備えである外貨準備高2400億ドル(約25兆4300億円)は、いざという時に本来の役割を果たすことができない、と専門家は指摘する。もちろんマスコミがドル不足の心配をあおると、それだけで通貨危機の可能性が大きくなる、という主張にも一理ある。
しかし隠しておけば危機が消え去るという論理はウソであることも、われわれは11年前に骨身にしみて体験した。政府や政府系金融機関がわずか10億ドル(約1060億円)も調達できないという現実において、決してドルの墜落をあざ笑えるような立場にない。
小さな危機を見て国の経済が滅んでしまうかのように誇張するのも危険なことだが、危機の徴候を根本から否定し、対応について話し合いすらできなくするのも同じように危険なことだ。米国ほどではないにしても、現在ウォールストリートを襲っている魔の手が韓半島(朝鮮半島)周辺に手を伸ばすことがないよう、今は非常事態に備えた対策が絶対に必要な時期にあるのだ。
幸い李明博(イ・ミョンバク)政権は税の削減、不動産取引の活性化対策など、それなりの対策を打ち出してはいる。ここからさらに国営企業の民営化などの公共機関改革、さらには首都圏における投資規制の緩和などの決断を下せば、状況はさらに良くなるだろう。
もしこれらの危機が現実となった時には、これまでやってきた政策を少しばかり修正するよりも、根本から大なたを振るう必要がある。例えば貯蓄銀行の不良債権や金融機関による不良派生商品への投資、一部財閥グループの事業整理など、韓国経済の負の部分を早期に取り出して手術を行えば、危機が広まる可能性はそれだけ小さくなるだろう。
米国という巨象が足を1本痛めたかのような様子を見ただけで、すぐにでも死んでしまうかのような判断を下すべきではない。再び力を取り戻す体力は今も十分に残っているからだ。逆にこの巨象がしばらく横になろうとした時に、その下敷きになりかねないのが韓国だという事実を忘れてはならない。
宋煕永(ソン・ヒヨン)論説室長
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