麻生太郎首相の組閣を受けて行われた共同通信社の全国緊急電話世論調査で、内閣支持率は48・6%となった。昨年九月の福田前内閣発足直後の57・8%を下回っており、新政権誕生後の「ご祝儀」を考えれば低い水準でのスタートとなった。
安倍政権の誕生直後(65・0%)と比較すれば支持率の低さがより際立つ。人気のある麻生氏を押し立て、次期衆院選で民主党に勝利したいという自民党側の目算からすれば、物足りない数字であろう。
党勢回復を狙った今回の自民党総裁選は、ふたを開けてみれば最初から麻生氏が先行し、結局は盛り上がりに欠けた。期間中、米証券大手リーマン・ブラザーズ破たんに端を発した世界的な金融不安や汚染米の不正転売問題の拡大などがあり、政治空白を印象づけたことも響いただろう。あからさまな次期衆院選狙いを有権者が批判的にみた結果の数字かもしれない。
内閣支持率がそれほどでなかった半面、麻生氏と民主党の小沢一郎代表の「どちらが首相にふさわしいか」の質問では麻生氏が53・9%と、小沢氏(29・4%)を大きくリードした。ところが、次期衆院選比例代表の投票先を尋ねた質問では、自民党が34・9%、民主党34・8%と並んでいる。
総じて、判断の難しい世論調査結果といわざるを得ない。
心配なのは麻生首相の今後の対応である。麻生内閣の発足から間を置かず衆院解散・総選挙と言われてきた。必然的に首相の打ち出す政策や国会対応は総選挙を意識したものとなろう。世論の動向も気になるところだ。その最初の世論調査結果が判断しづらいとなれば、今後の政権運営もより慎重にならざるを得ない。結果として、政権の目指すところが有権者に見えにくくなる懸念がある。
すでに兆候は出ている。麻生首相は基礎年金部分の全額税方式を持論としていた。だが、総裁選では封印してしまった。全額税方式化は大幅な消費税引き上げを伴うことから、総選挙に不利という側近議員の忠告を受け入れたためと伝えられる。
今回の世論調査で、望ましい解散・総選挙の時期は「景気対策に取り組んでから」が多数を占めた。確かに総選挙前に手を打つべき課題だ。首相は財政出動に積極的とされていたが、総合経済対策の一層の充実を図るといった考えがあるのか。
国会での所信表明演説が近づいてきた。総選挙での判断材料を提示する意味からも、首相は目指す路線や政策の中身を明確に示してもらいたい。
中国の有人宇宙船「神舟7号」が打ち上げられ、無事に地球周回軌道に乗った。有人飛行は三度目で、二十七日には、三人の宇宙飛行士のうち一人が中国初の船外活動(宇宙遊泳)を行う予定だ。
中国では国内メディアが神舟7号について大々的に報道し、金メダル数で世界一となった北京五輪に続き、米国、ロシアに次ぐ「宇宙大国」の地位を誇示している。
約二十分間の船外活動では、約三千万元(約四億六千五百万円)をかけ自主開発した宇宙服が使われ、宇宙船外に取り付けた実験装置の回収などを行う。このほか宇宙船から小型衛星を発射する実験やデータ通信の中継などもある。国威発揚だけでなく産業分野の技術開発も狙っている。
打ち上げは、中国が目指している宇宙ステーション建設計画の一環と位置付けられる。次回の打ち上げでは二隻の宇宙船によるドッキング技術などが試される。打ち上げごとに目覚ましい発展である。
中国外務省は今回の打ち上げについて「目的は宇宙空間の探索と平和利用で、自国の経済建設と人民の福利を促進することだ」と述べ、軍事利用目的との見方をあらためて否定した。
しかし、中国の宇宙開発に携わる組織は人民解放軍と強い関係を持つとされる。宇宙開発の技術は、大陸間弾道弾や衛星兵器など、いつでも軍事分野への転用が可能だ。
昨年、中国が行った人工衛星の破壊実験は、宇宙を軍事の場としただけでなく、宇宙ごみを大量に発生させたことでも世界から批判された。中国が国際協調や情報公開を重視した宇宙開発を進め、宇宙の平和利用に努めれば、世界からの信頼も高まるだろう。
(2008年9月27日掲載)