医療・介護の崩壊防ぐには正確な実態の開示が必要――大森彌・東京大学名誉教授(2) - 08/09/27 | 16:30 |
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――救急医療や産科・小児科の立て直しに必要な額も試算に加えるのですか。
はい。現在、救急医療の崩壊が起きています。また、急性期病院への資源の投入が非常に手薄になっており、病院医療の現場はひどいありさまです。先進国の中で、急性期病院で産科と小児科、麻酔科の医師がいない国など考えられない。少なくとも、早急に足元から直さないといけない。ここを何とかするために、救急医療や急性期病院のあるべき姿を描く。現在以上の医師や看護師が必要になる。その一方で、病床数や入院日数を減らしていく。急性期後のリハビリテーション病院はどのくらい整備が必要か、療養病床はどうなるのかといったことも試算の前提となります。また、介護施設や居住系施設をどう整備していくかも念頭に置かなければならない。全体の方向としては、できるだけ在宅医療や在宅ケア確立に向かって、「選択と集中」の改革を行っていくという道筋となるのではないでしょうか。
――医療については、06年の医療制度改革の中心に、「医療費適正化」が据えられました。これは、医療費の抑制をベースにしたものですが、06年改革の抜本的な見直しにつながるのでしょうか。
06年改革は、社会保障制度の持続可能性をより重視しました。それと同時に、社会保障機能の充実強化が重要な課題となっています。先ほど述べましたが、医師不足問題については、「骨太の方針08」で方針が転換となりました。しかし、大学で養成した医師が、医療現場で活躍し始めるのは、8年とか10年先です。当分の間は、医師、看護師などの専門職の役割分担の見直しが必要でしょう。また、医療・看護の必要度が違う患者が混在することを前提にした診療報酬の決め方も、見直す必要があるのではないでしょうか。
――医療や介護の機能強化に、どれくらいの追加財源が必要ですか。
はっきりした額は、試算してみなければわかりませんが、医療・介護費は自然体でも伸びていきます。財政の基礎的収支(プライマリーバランス)の黒字化のために、毎年度、社会保障費の2200億円の削減が求められていますが、これは自然に増えていく分を切れということです。今後、75歳以上の高齢者の増加に伴い医療・介護費の増大は避けがたい。介護では、在宅介護のシステムが確立しうまく機能すれば、施設・療養病床依存が強い今より経費はかからなくても済むかもしれない。全体としては、今の見通し(下グラフでの「04〜06年改革実施」の場合)よりも増えるということは間違いないでしょう。わが国の場合、高齢化度の高さに対する給付水準の低さは異常に近い。
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