2008年09月26日

某ブログで取り上げられた被験者サンプリング法について

 前エントリの「妻方多世代同居家族の妻募集」が、某ブログにて取り上げられています。こちらの了承も得ずに引用されている点は非常に品性の無い行為と思います。 日々の雑感やその他のことであれば流すところですが、研究手法についてうんぬん言われては、こちらもプロフェッショナルですから黙ってはいられません。

 しかもその指摘にはあきれていますが、好意的に解釈するならば、大学生に質問紙を撒いてきた方、もしくは事例研究等により、サンプルの問題にディープには触れてこなかった方がよく言いがちなコメントと感じられます。
 私も社会心理学の知識はありますし、教員ですから手続き等の「お作法」には熟知しているつもりです。社会心理学系の査読者から、同様の指摘があっても全く問題なくリコメントできます。

 心理学研究では、どのような手段で被験者を募集するにせよ、何らかの偏りが生じていきます。
 大規模調査でもない限り偏りは出る。そして、この偏り処理というのは心理学領域の研究において極めて重要であり、結局はどの偏りを研究者が選択していくか、という議論になっていきます。そして、それは「理想と現実の境界」についての議論であり、学会誌であれば査読者をはじめとする研究者同士のコンセンサスの構築に関する議論です。
 研究上で優先する偏り、排除したい偏り、被験者のサンプリングの手法、被験者の属性についての考察、細かい手続き上の工夫(ブログ上の謝礼記載の件等)等は、このようなコンセンサスの手続きの後、論文の考察部分にて触れることになります。

 このブログで、本研究のサンプリング手続きの意図や被験者属性について議論することは、被験者への影響等により不可能ですので、ブログ上での議論はこの問題については妥当ではないと考えます。
 よって、この問題について議論されるならば、ぜひ来年の日本心理学会や心理臨床学会など、研究者が集まる学会で自主シンポ等企画していただきたいと思います。もちろん、こちらが企画者となることも可能です。
 学会というのは、本来このようなディスカッションをするための場ですから、この議論の場としては極めて妥当と考えています。

 本研究において差しさわりのない点に関する考察を一点述べるならば、多世代同居家族に関する研究には、「家族心理学への興味」という偏りよりもより優先すべき偏りがいくつかあります。例えば姑への愚痴を書き込むサイトなどに呼びかければもっと簡単に被験者が集まりそうですね。その種の偏りの排除が本研究にとって最優先されます。

 繰り返しますが、この問題について議論するならば、来年の日本心理学会や心理臨床学会などの研究者が集まる学会で、自主シンポ等企画しましょう。
 双方向の形で議論を深めていくことを望みます。

 以上の文面を“都合よく切りとる”ことなしに、もし引用するなら全文をペースト、もしくはリンク形式にしてください。また、ブログ上の議論の是非など、論点をすりかえることのなきよう願います。

kazokushinri at 02:37 │Comments(5)TrackBack(0)この記事をクリップ!

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この記事へのコメント

1. Posted by Mr.PD    2008年09月26日 14:14
管理人様
ご返答頂きまして,ありがとうございます。
お久振りでしようか?
私の記憶(22年前)が,はっきりしないところが,ありまして申し訳ありません。
R中学校の時は,1年(5組)のクラス時だけ一緒でした。2・3年は私は3組でクラスは別でした。
担任はH田先生(数学担当)です。当時の年齢は24歳位で,旭川の教育大出身だったと記憶しています。
私の印象は多分薄いと思います。
Googleで‘ミスターPD’で検索すると4,5番目に
名前と写真が出てきます。


2. Posted by パグ    2008年09月27日 08:46
心理学の専門家ではないので難しいことはよくわかりませんが、応援しています。
知人に心理学を勉強していない「妻方多世代同居家族の妻」がいるので協力依頼してみます
3. Posted by 通りすがりのCP    2008年09月27日 11:01
ロテ職人さんとの一連の議論を通して思うことです。
ロテ職人さんが指摘されたように、このブログで家族心理関係の被験者を募集するのは確かに重大なバイアスがかかるかも・・・と納得しました。
ですが、何人かの方がこちらのブログにコメントされているように、ここを訪れている方は家族心理に関心があるからこそ、協力的に自身の知りあい等を紹介できるし、そこにはロテ職人さんが指摘されているようなバイアスがかかりにくいと思います。
被験者の応募があった段階で、パグさんが書かれているように心理学の専門家かどうかや、家族心理への関心度等を確認すれば、初めに心配されたバイアスがどの程度影響しているのかどうかについても実証できるのでしょうか。
何にしろ今回のロテ職人さんのご指摘は、今後研究を行っていく上で有益なものだと感じました。
より深く研究を進めるには、いろんな視点からの指摘も重要ですよね。

個人情報云々で家族関係の研究を進めていくには被験者をいかに集めるかが大きな課題になりますが、先生の研究が今後の家族臨床の発展につながることを期待しています。
4. Posted by 通りすがりの臨床心理士    2008年09月27日 14:16
 はじめまして。いつも拝見しております。

 このロテさんというかたは、いろいろなブログの揚げ足を取っては議論という名の下にネチネチと攻撃するという方です。
 反論しなければならないように心理的に持っていかれますが、単に感情的なやりとりになりますので、今後一切取り合わないほうがいいです。

 本来なら、全くコメントも返さず反論もせず流したほうがよかったのではないかと個人的には思いますが、相手は大規模ブログですし読み手に誤解を与えてもというお気持ちはお察しします。
 しかし、これまでの他のブログへの攻撃を見るに、一回火種がつくとその後延々と揚げ足を取りに来ます。虎視眈々とという勢いの方に相手にされるのもいやでしょうし、それが嫌になってブログを閉鎖されるかたもいるほどです。
 私はこちらのブログを楽しみにしているので、おせっかいながら御忠告までに。 
5. Posted by ロテ職人    2008年09月28日 03:37
>通りすがりのCPさん

私がコメントしてもいいものやらわかりませんが、もしこのコメントが不適切だと判断されましたら、削除してくださっても結構です>[家族心理.com]管理人さん

> 何人かの方がこちらのブログにコメントされているように、
> ここを訪れている方は家族心理に関心があるからこそ、
> 協力的に自身の知りあい等を紹介できるし、
> そこにはロテ職人さんが指摘されているような
> バイアスがかかりにくいと思います。

はい。正にその通りだと思います。

私が問題にしたいのは、紹介ではなく、こちらのブログまたは家族心理.comを見て応募してきた人が協力者本人である場合です。

自分のブログにも書きましたが、研究自体は大変意義のあるものだと思いますし、調査対象者を集めるのが大変なのももちろん理解できます。

ただそれらの事情を理解した上で、[家族心理.com]管理人さんが私がご指摘したようなバイアスを意識していらっしゃるか私にはわからなかったので取り上げさせていただいた次第です。

その辺りのことが[家族心理.com]管理人さんに伝わっていないばかりか、このコメント欄での通りすがりの臨床心理士さんのようなことを感じられる方が出てしまうというのが、私としては残念でなりません。

あと、私のブログでも書かせていただいたのですが、このエントリに直接関連する内容ですので何度かトラックバックを送らせていただいているのですが、現時点では反映されていないようです。

大変お手数ですが、そちらのサーバに私のブログからのトラックバックが届いているか、ご確認いただけますでしょうか?>[家族心理.coom]管理人さん

ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

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