「ビッグイシューいかがですか」。雨の日以外は毎日、街頭に立つ仁田賢三さん=大阪市北区のJR大阪駅前
ホームレスの自立を支援しようと大阪で生まれた雑誌「ビッグイシュー日本版」が、9月で創刊5年を迎えた。全国のホームレス約800人が街角で販売し収入増に貢献してきたが、再就職につながった人は1割にとどまる。発行会社は基金設立による就業支援など新たな活動に乗り出している。
「ビッグイシュー、いかがですかー」。大阪市北区のJR大阪駅前の路上。仁田(にった)賢三さん(58)はぴんと上げた左腕に雑誌を掲げ、通り過ぎる会社員らに呼びかける。
仁田さんは転職に失敗して00年ごろ大阪市西成区に移った。NPOと市が管理運営するシェルター(臨時夜間緊急避難所)に寝泊まりし、炊き出しで飢えをしのぐ日々だったが、5年前に販売員になって生活が変わった。2年半前からは販売員仲間3人でアパートを借りる。
ビッグイシューの販売をしながら仁田さんはハローワークに通った。だが仕事は見つからない。「この年ではなかなか……。売り上げも場所や季節で波がきついから、本格的に職探しをできるほど貯金もたまらない」
売り上げの半分以上が販売員の収入になる仕組みのビッグイシュー。当初は大阪だけの販売だったが、現在は東京、兵庫、広島など11都道府県で売られている。これまで約3億円余りがホームレスの収入になった。一方で、収入を元手に新たな就職先を見つけた人は80人ほどで、登録者全体の1割にとどまる。
「1割という数字は確かに少ない。販売者の平均年齢は50歳ぐらい。中高年のホームレスが社会復帰するのはそれだけ大変ということです」。同誌の発行会社「ビッグイシュー日本」の代表佐野章二さん(66)は話す。
厚生労働省が07年に実施した全国のホームレスの生活実態調査によると、平均年齢は57.5歳で、前回調査の4年前に比べ1.6歳上昇。55〜64歳の割合が増え、高齢化しているという。