出産時に適切な処置を怠ったために胎児が死亡したとして、四日市市の若林真奈美さん(47)と夫の一道さん(49)が同市内の産婦人科医院と医師の男性院長(68)を相手取り、総額約8600万円の損害賠償を求めて津地裁四日市支部(安間雅夫裁判長)に訴えた訴訟で26日、和解が成立した。医院側が賠償金を支払うことで合意、院長が過失を認め謝罪した。
この医院と院長は、01~03年に4件の医療過誤訴訟を起こされており、うち2件は院長の過失を認め、賠償金を支払うことで和解が成立した。四日市市内の男性教諭が、院長らとリピーター医師を放置してきた国の責任を問い、現在係争中。原告代理人の貞友義典弁護士は「4件の原告は互いに情報交換をしながら裁判をして結果を出している点で意義がある。院長がミスを繰り返す『リピーター医師』であると裏付けられ、係争中の残り一つの裁判にも大きな意味を与える」と話している。
賠償金額は非公表。和解条項などによると、真奈美さんは00年9月28日、出産のため同医院に入院。院長は胎児を吸引しながら腹を圧迫する分娩(ぶんべん)方法をとったが出産に至らず放置。このため真奈美さんは胎盤はく離を発症して死産、ショック状態となった。
真奈美さんは取材に「子どもの死が医師の不適切な行為によるものと分かりとても悲しいとともに疑いが晴れた気持ち」、一道さんは「裁判をして良かったが、今回明らかになったリピーター医師は氷山の一角かもしれないと思う。安心して安全な医療にかかれる社会になってほしい」と話した。【高木香奈】
〔三重版〕
毎日新聞 2008年9月27日 地方版