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【社説】

金融危機 暗雲が家計にも迫る

2008年9月27日

 米大手金融機関がまた、破たんした。今回は家計から預金を集める銀行だった点で深刻だ。別の金融大手が銀行業務を引き継いだが、破たん予備軍は多い。先行き不透明感は一段と強くなった。

 破たんした貯蓄貸付組合(S&L)ワシントン・ミューチュアルはサブプライムと呼ばれる信用力の低い人向け住宅ローンを扱っていただけでなく、家計から預金も集めていた。預金量は全米第六位の規模を誇る。

 今回は幸い、銀行大手JPモルガン・チェースが銀行業務を引き受けたため、預金は保護されるものの、ほかにも経営難が指摘されている地方銀行や貯蓄貸付組合などは百を超える。

 この先も破たんが相次ぐようだと、買収に名乗りを上げる銀行が現れるとは限らない。預金を保護する米連邦預金保険公社(FDIC)の資金が底をつく懸念も指摘されている。

 金融危機はプロの世界である投資銀行にとどまらず、一般家計に直結する銀行に及んだ点で新たな段階に突入したといえそうだ。

 こうした中、日本の金融機関が存在感を高めている。三菱UFJフィナンシャル・グループは米証券大手モルガン・スタンレーに最大九千億円の出資を決めた。野村ホールディングスは破たんしたリーマン・ブラザーズのアジアと欧州・中東部門を買収した。

 三井住友フィナンシャルグループも英銀大手バークレイズに出資し、みずほコーポレート銀行は米銀バンク・オブ・アメリカが買収する米証券大手メリルリンチへの出資を決めている。

 麻生太郎首相は国連演説で「日本の持てる経験と知識の貢献を心がける」と演説したが、日本の金融機関がリスクを取って、世界的な競争の舞台に打って出る心意気は前向きに評価したい。危機の進行を和らげる効果もある。

 ただ、出資や買収が一挙に日本勢の実力向上につながるかといえば、それほど甘くはない。

 三菱UFJの出資は短時日の間に決定され、肝心の資産査定は後回しになった。モルガンの痛みが予想以上だと、経営の足を引っ張りかねない。「低金利で預金者に恩恵がないのに、外資支援とは」という声もある。

 野村のリーマン買収も日本流の経営が、外資流に慣れた人材相手にどこまで通用するか、大きな試練でもある。ジャパンマネーが飛躍できるかどうか、未知の不安も残っている。

 

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