6年にわたり日本の経済成長を牽引(けんいん)した輸出は昨年秋から伸び率が低下し、GDP統計では設備投資も2期連続で前年を下回った。GDPの約6割の個人消費もマイナスとなった。少子高齢化で個人消費の増加が見込めない今、輸出増→設備増→生産増→所得増→消費増の成長回路は依然重要である。
輸出市場を見ると米欧では金融不安の拡大、企業業績の悪化、設備投資と個人消費の低迷で当分の間、景気の回復は望めない状況にある。一方、BRICsなどの新興国は比較的高い成長を維持している。しかし、中国ではやや沈静化したが、インド、インドネシア、ベトナム、中近東諸国、ロシアなどでは物価と金利の上昇が個人消費や設備投資に悪影響を及ぼしつつある。
8月の貿易統計による地域別輸出割合は、北米、西欧向けが30%に縮小したが、その他地域向けは中国、香港、韓国、台湾が37%、その他アジア、大洋州が18%、中南米、ロシア・東欧、中東、アフリカが15%の計70%に達している。しかも、低迷する米欧向けに対し、その他地域向けはほぼ2けたの成長を続け、我が国の輸出を支えている。
主力輸出製品は、BRICs向けを中心とする乗用車、トラック、建設機械、アジアの製造業を支える化学製品、鉄鋼、世界中の製造業向けの工作機械、ベアリングなどである。
今後、我が国経済が安定的に推移するには、輸出製品の価格、品質、サービス面での競争力強化に努め、新製品・サービスによって市場を維持・拡大する必要がある。また、個人消費を活発にするために、所得を維持し、安心して支出できる環境を整備することが急務である。(創)