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» 2008年09月26日 07時57分 UPDATE
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時計の針が逆回転する恐れ――民営化1年、郵政改革はどうなった?(前編)

2007年10月の郵政民営化で、日本郵政グループが誕生してからまもなく1年。郵便局の収益性や郵便物の減少など成長シナリオは見通せず、このまま成果が示せなければ、時計の針が逆回転するかもしれない。

[産経新聞]

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産経新聞

 「正直言って損益分岐点に達している状況ではない」。昨年10月の郵政民営化で発足した郵便局会社の川茂夫会長の表情は浮かない。郵便局内にオープンしたコンビニエンスストアの客足が伸びず、業績が振るわないためだ。

 窓口業務を担う郵便局会社は8月、郵便局内に小型コンビニ「JPローソン」の開設を始めた。東京都中央区の日本橋郵便局を皮切りに、美浜郵便局(千葉県)、川越西郵便局(埼玉県)、平塚郵便局(神奈川県)など計6店出店した。郵便局がコンビニに売り場を貸す併設型店舗は従来もあったが、この6店は同社が経営する直営店だ。

 グループ持ち株会社の日本郵政は2月、コンビニ大手ローソンと包括提携し、郵便局会社がローソンとフランチャイズチェーン契約を結んでブランドや店舗運営ノウハウのほか、弁当、雑誌など商品の提供を受ける。郵便局とコンビニを“合体”させることで、集客増につなげる狙いだったが、川会長は「郵便局の利用者にしか立ち寄ってもらえない」と打ち明ける。

 郵便局会社は収益力の向上が大きな課題だ。全国2万4000局の郵便局を束ねる同社が立ち行かなくなれば、郵便局網を維持できずに民営化そのものが否定されかれない。だが、民営化後最初の平成20年3月期決算では、同社の最終利益が計画比7割減の46億円。グループ各社の窓口業務の委託手数料が収益の柱だが、民営化の混乱で、外務員の営業が手薄になり、営業成績に応じた手数料収入が落ち込んだ。

 郵便局会社は東京中央郵便局(東京都千代田区)の再開発など不動産事業にも乗り出して独自の収益源開拓を目指すが、外部に業務委託してきた簡易郵便局の一時閉鎖が400局を超えた。新たな担い手を確保するため、委託手数料を引き上げるなど郵便局網の維持コストも膨らんでいる。

 「民営化した以上は、利益の確保が求められる。本当は郵便局網の維持を放棄してコストを削減したいが、そんなことをしたら、地方切り捨てだと責められる」。ある郵便局幹部は収益性と郵便局網維持の両立にジレンマを感じている。

 一方、郵便事業を担当する郵便事業会社は20年3月期決算でゆうメール(冊子小包)が好調だったことなどで計画を大幅に上回る最終利益を計上した。だが、電子メールに押されて郵便物が減少し、頼みの宅配便事業も競争激化に苦しんでいる。宅配便事業のテコ入れのために民営化直後の昨年10月、国内物流大手の日本通運と提携し、今年10月に宅配便事業を統合する計画だったが、システム統合などで遅れている。

 郵便局、郵便事業両社の成長シナリオは現時点では見通せず、目立ったサービス向上もまだみられない。日本郵政をめぐっては、民主、国民新党がグループ各社株の上場凍結や分社経営の見直しなどで合意したほか、身内の郵便局長会もこれに同調する動きをみせている。難問が山積する中で郵便局、郵便事業両社が成果を示せなければ、時計の針が逆回転する恐れも否めない。

 昨年10月の郵政民営化で日本郵政グループが発足してから間もなく1年。グループ各社の改革の足取りを検証する。

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