会見で自らの発言について釈明する中山国交相=26日、東京・霞が関の国土交通省
東京都内の中学校長は大臣発言に対し「短絡的だしピンぼけだ。だいいち日教組にそんな力はないのではないか」。ある自治体の教育長も「日教組にどんな恨みがあるか知らないが、個人的な思いを国政に反映させるのはとんでもない」。
中山氏はインタビューで、自説が確認できたとして「学力テストを実施する役目は終わった」とも話した。
新潟県の小学校教諭は、調査に疑問を感じながらも、学力向上に生かそうと励んだ。「地域で成績の差は確かにあるけど、それを改善するのが調査の目的だったはずだ。頑張ってきたのに、あの一言はないだろう」と憤る。
沖縄県の小学校教諭は、調査の前、放課後の補習に追われた。テストのための勉強で、とても児童の学力がついているとは思えなかった。「やると言い出した本人がもう必要ないと気づくくらい無駄なテストなのだから、早くやめた方がいい」
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対象学年の全員を対象とする全国学力調査のそもそもの発端は04年11月。当時文科相だった中山氏自身が改革私案「甦(よみがえ)れ、日本!」で導入を表明したことだった。当時は目的について「競い合う心や切磋琢磨(せっさたくま)する精神が必要」と説いていた。
その直後、国際学力調査で日本の順位が落ちたことなどもあり「学力低下問題」への対応策として急浮上。05年6月には、小泉内閣の「骨太の方針2005」に盛り込まれた。同年10月の中央教育審議会の答申は「子どもたちの学習の到達度・理解度を把握し検証する」と明記。国策として統一的に学力の様子を調べる必要性が強調され、毎年60億円かかるテストの実施へと進んでいった。
今回の発言について、文科省には「あれは前からの持論だから」と冷めた受け止め方をする向きが多い。「別の役所の大臣だから」「『信念』をどこまでも語っちゃう人」「免疫できてます」。担当者の一人は「組合がどうのという目的はないし、役目が終わったということもありません」と話した。