千葉県銚子市の市立総合病院が突然9月いっぱいでの休止を発表してから、2か月たちました。新しい病院に移らざるを得なくなった通院・入院患者たちは、「医療難民」となって、近隣の病院に押し寄せています。
「もう涙、涙」、涙を浮かべてこう語るのは名雪文枝さん、79歳。寝たきりとなっている名雪さんは今月、6年間も入院していた市立病院を出ることになりました。理由は病院の休止です。
「(市立病院に)居たいって言っても居られるわけじゃないし、(別の病院へ)連れて行きます」(夫・名雪一雄さん、83)
名雪さんはこの日、ストレッチャーにのせられ、6年間過ごした病院をあとにしました。
銚子市が市立総合病院の9月いっぱいでの休止を発表したのは2か月前のこと。理由は「医師不足による経営難」でした。
銚子市内には他に公立の総合病院が存在しないため、市民は猛反発。しかし市議会でも病院の休止が1票差で可決されてしまいました。このため、166人の入院患者、1か月1万人という外来患者が「医療難民」となってしまったのです。
鈴木明子さん(55)は年老いた両親の新しい通院先を探していました。父は腰痛と糖尿病、母は腰や胃に病気を抱えています。
「別の医者に行くって言っても 、1科目に1日かかる。4か所なら4日はかかる」(鈴木明子さん)
一度に複数の病気の診察を受けるには総合病院しかありません。結局、隣の旭市の旭中央病院を選びましたが、これまでの5分の通院時間だったのが、40分近くかかることになってしまいます。
ところが、この旭中央病院ではとんでもないことが起きていました。待合室には人、人・・・。中には立っている人も。
「銚子から(白紙の)紹介状を持参して来た患者だけで、2か月で200件」(国保旭中央病院、 伊良部徳次 副院長)
銚子市立総合病院の休止を受けて、この病院では外来患者が10%増加。さらに、銚子市から搬送されてくる救急患者の数も2倍に増えたといいます。
市の消防本部も頭を抱えていました。市外への遠距離搬送が増えてしまったのです。
「市内に3台ある救急車いずれも市外に搬送ということで、市内に救急車が1台もなくなるという可能性は考えられます」(銚子市消防本部、清水剛 警防課長)
病院経営の専門家は、銚子市立総合病院休止は周辺自治体の医療崩壊も招くと指摘します。
「信じられない暴挙であると。医師の過酷労働をきちっとしなければ、悪循環になる。旭中央病院が負荷が重くなり、救急を制限せざるをえない状況がくる」(病院経営に詳しい 長隆さん)
25日、病院の最後の入院患者が、転院先の病院に向かいました。見送りに来た関係者の中に病院休止を決めた張本人、岡野俊昭市長の姿がありました。
病院の全面休止まであと4日。26日、病院の職員全員に市から解雇通告が手渡されました。(26日17:00)