しゃべり過ぎを戒めることわざに「沈黙は金、雄弁は銀」というのがあるが、政治家はそんなことは言っていられない。国民の支持を得るために、政策を語るのが務めだ。
社会言語学者東照二氏の著書「言語学者が政治家を丸裸にする」によると、言葉の使い方には二つある。情報中心のリポート(報告)トークと、情緒中心のラポート(共感)トークだ。
政策やその中身を盛り込んだリポートトークに対して、ラポートトークは聞き手との共感を高めようと感情に重きを置く。元来政治家はリポートトークを本分としてきたが、小泉純一郎元首相はラポートトークで国民の心をつかんだ。
例えば郵政解散記者会見では、気迫のこもった「自分の言葉」で熱く語り、「なぜ」という疑問形を連発して注意を引いた。また、日常的な言葉で聞き手との連帯感、仲間意識をはぐくんだという。
麻生太郎首相について、東氏は「情報中心と情緒中心の二つを具現化している」と人気の一端を分析する。ただ「〜だぜ」「おれ」といった言葉が「極端で逆効果にもなる」とも指摘した。
情緒中心は政策の中身が薄くなるが、政策ばかりでも難しくて飽きられそうだ。聴衆の関心を引きながら、わかりやすく政策を訴える。政治家には、そんな“言葉の力”が必要なのだろう。