< 「どうして診断してくれないの?」(後編 ... | メイン

しつこくて申し訳ないのですが,一昨日,そして昨日からの続きです。

発達障害を疑って受診したのに医師が診断をしない場合,特にこどもさんの年齢がとても小さい(1歳前後)ときには一般精神科医も児童精神科医もそれぞれの立場や事情からすぐには診断や告知をしないことがある,と書いてきました。

私のまわりにいる医師(多くは一般精神科医)を診ていると診断するかしないかは医師のキャリア,特に発達障害臨床にどのくらい携わってきたかによって違っているように感じます。
これは,医師自身に発達障害に対する理解や発達障害のこどもたち(おとなも,ですが)と関わった経験が少ない場合,発達障害の可能性を疑ったとしても,その診断として伝えるとしてじゃあ具体的にはどう支援すればいいのか? という部分がきちんとイメージとして思い描けないから,告知すること自体を躊躇してしまっているように思われます。

診断名は告知したけれど具体的な支援策は何も伝えられないままというのではただのレッテル貼りで終わってしまうし,それでは告知する意味なんてないようなもの,ということは告知する側である医師にも徐々にわかってきていて,だから診断がつくだろうと思っても「自分では支援できないかも知れない」という不安が告知に踏み切らせてくれなかったりして。
(稀に,診断だけは伝えるけれど伝えっぱなしで何の支援もされていない,みたいな話も聞きますが…。)

きっと,医師自身が知識や経験を積み重ねていけば具体的な支援について十分な情報を蓄積することができるでしょうし,診断をお伝えする経験の場数を踏めば親御さんへの説明や助言なども含めてうまく診断をお伝えできるようになっていくだろうと思われます。

こんなことを偉そうに言っていますが,数年前の私自身のことを振り返ってみるとやっぱり発達障害について全然わかっていなかったし診断をお伝えするのも下手くそだったなぁと情けなく恥ずかしく思います(いや,今だって決してスムーズに告知できているわけではありませんが)。当時診療させていただいていたこどもさんや親御さんには申し訳ない気持ちがあったり,むしろ私のほうが勉強させていただいてありがたい思いがあったり。

言うまでもないことですが,医師はプロなんだからちゃんとした告知=診断名とその状態に対するときに役立つ知識を親御さん(ときには本人)にきちんと伝えられるのがあたりまえのこと。ただ,それがあたりまえではあるのですが,こと発達障害に関してはまだまだ時代や世の中の流れに合わせて精神科医たちも新たな役割を負い始めたばかり,という面がありますので,ちょっと大目にみていただけたら嬉しいな,なんて甘えたことを言ってみても許していただけるでしょうか?

たとえば,うつ病や統合失調症の患者さんが診察室へ訪れたら,診断名や今の病状について患者さんご本人やご家族に説明して,治療方針や処方の内容をお伝えする,というのは一人前の精神科医なら当然できること。
精神科医になったばっかりではさすがにできないでしょうけど,こういうことができないうちはその医師ひとりで外来や入院の患者さんを担当することはなくて,先輩医師と一緒に担当させていただきながら経験を積み,勉強していきます。
でも,今「一人前」の精神科医として仕事をしている医師たちの多くは,駆け出しの頃に発達障害について先輩医師から指導を受ける機会もないままひとりだちしているわけで,世間がこういう状況になって初めてそれぞれが勉強し始めた,というのが現状なのです。
(…もちろん,教育や福祉の現場でもそういう状態なのですよね,きっと。)

だからといって,発達障害を心配して受診してくださったこどもさんや親御さんに対して「診察の結果に納得いかなかったとしても仕方ないですよ」なんて言いたくはありません。ましてや,せっかく思い切って受診してくださった患者さんやご家族を医師が非難したり責めたりするなんて言語道断。

親御さんを傷つけるような発言をする医師のところへは通い続けなくてかまいません(当然!)。

でも,発達障害にはまだあまり詳しくないかもしれないけど親身になってくれそうな医師に運良く出会えたとしたら。
そして,ほかに発達障害について相談できたり支援を受けたりできる場所に心当たりがなかったとしたら。
こどもさんに診断がつきそうかどうか,診断がつかないとしてもこどもさんが○○な状態のときにご家族ははどう対処すればいいのか,…親御さんの知りたいことをいろいろ尋ねながら,その医師を育てるくらいのつもりで根気よく接していただけるととてもありがたく,嬉しく思います。
患者さんやご家族から質問していただいたら,まともな医師なら文献や書籍を読んだり他の医師に相談したりしながら一生懸命診てくれるはずです。

医師はみんな,患者さんやご家族に育てていただきながら成長しているのですから。
もちろん私自身も。

毎度言っていて恐縮なのですが,患者さんやご家族にはぜひとも医師を上手に使って,上手に役立てていただきたいと思います!


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なかのひと

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