あなたの知らない児童ポルノの真実
3.子供の裸の写真は性犯罪を誘発するの?
(架空インタビュー)
子供の犠牲者は増えているのか? ――でも、児童ポルノには別の危険もあります。子供の裸を見た人間が欲情して、性犯罪に走るかもしれない。だから所持自体を禁止すべきです。 「そんな主張に根拠はありません」 ――え? だって……。 「論より証拠。このグラフを見てください。少年犯罪データベースというサイトから引用したものです」 「強姦された幼女の数を示したグラフなんですが、さて、このグラフからどんな傾向が読み取れますか?」 ――60年代末に急降下してますね。その後、70年代、80年代を通じて減少を続けてます。 「前に説明した歴史を思い出してください。日本に少女ヌード写真集が出現したのが60年代末。70年代からブームになり、80年代を通じて多くの写真集が一般書店で売られていました。誰でもそれを手に入れられる時代だったんです」 ――90年代から横ばいになっていますね。 「89年に宮崎事件。この頃からロリコンに対する風当たりが強くなって、少女ヌードも自粛しはじめています」 ――それじゃあ……? 「いやいや、まだ結論に飛びつくのは早い。小学生だけじゃなく、強姦被害者数全体のグラフも見ていただきましょうか」 「さて、90年代以降はどうなっていますか?」 ――97年頃から、被害者がまた増えてますね。ピークは2003年頃です。 「99年に児童ポルノ法が施行されて、店頭から少女ヌード写真集が姿を消しました」 ――ええっ!? じゃあ、少女ヌード写真集の出版と少女の強姦の件数は反比例してる!? 犯罪が増えた原因は? 「んー、そういう都合のいい結論を導ければいいんですが(笑)、そう断定することもできないんですよね。このグラフは正確な犠牲者数を反映してはいません。被害に遭っても届け出ずに泣き寝入りしている被害者も多いでしょうから。 また、このグラフからは、成年の被害者もいっしょに増減していることが分かります。96年以降、強姦事件全体が増加し、結果的に未成年の被害者も増えたんです。つまり未成年者をターゲットにしたロリコンによる犯罪が増えたわけではなさそうですね。げんにこの時期、小学生の被害者数は横ばいですし」 ――援助交際とかが増えたせいで、中学生や高校生の女の子が男にレイプされる機会が増えた……とは考えられませんか? 「そうとも言えません。強姦事件だけを見ると本質を見誤ります。実はこの時期、他の犯罪もはね上がってるんですよね」 (「犯罪と社会」というサイトの「わが国の犯罪動向」というページから引用させていただきました) ――ほんとだ。平成9年(1997年)あたりから急カーブを描いて上昇して、平成14年(2002年)ぐらいにピークになってますね。 「刑法犯の大半は窃盗で占められています。詳しくは同じサイトの「各種犯罪の動向」を見ていただけば分かりますが、90年代後半から、非侵入盗、特に車上狙いと自販機荒らしが増えているんです。 窃盗以外の刑法犯を見ると、器物損壊がものすごく増えているのが分かります。あと、占有離脱物横領というのは、落ちていたものを拾って自分のものにすること。その多くは、放置自転車を拾って乗り回したというものです」 ――放置自転車が増えたってことですか? 「それもあるんだけど、警察が占有離脱物横領の摘発に力を入れるようになったせいだとも言われています。警官が自転車に乗っている人を職務質問して、『それ、どこで買ったの?』などと問い詰めることが多くなったんですね。正直に『拾いました』と答えたら捕まっちゃう」 ――でも、放置自転車の中には、捨てられているものも多いんじゃないですか? 他人のを盗むならともかく、捨てられたものを拾うのも罪? 「らしいです。金を拾ってネコババするならともかく、捨てられていたものをリサイクルするんだから地球に優しいじゃん、と思うんですが(笑)。警察は単純に成績だけを上げようとするもんで、そういうたいしたことのない犯罪、捕まえやすい犯罪ばかりを狙う傾向があるんです」 ――せこいですね。 「警察は点数稼ぎのためにそういうせこいことをよくやります。有名なのは秋葉原のオタク狩り。秋葉原を歩いているオタクっぽい男を適当に捕まえて職務質問して、カッターナイフや十徳ナイフを持っていたら逮捕するというものです。しかも秋葉原を管轄する万世橋署ではなく、管轄外の文京区の本富士署から出向いてくるらしい」 【参考】秋葉原で警察に捕まりました 【参考】秋葉銃刀法のウソ 【参考】秋葉原での警察の 【参考】管轄外からパトカーが来るほどアキバは検挙件数アップには良い狩り場? ――うわー、そこまでして点数稼ぐか? って感じですね。 「例の通り魔事件以後、また職務質問が増えたらしいですけどね」 ――秋葉原に近づかなければいいのでは? あるいは怪しまれないように、オタクっぽいファッションは避けるとか。 「いやいや、オタクでない人が渋谷あたりを歩いていても安心はできませんよ。元国家公安委員長の白川勝彦氏のこんな体験談がありますし」 【参考】忍び寄る警察国家の影 ――こんなことに割く人員があるんだったら、まだ解決していない事件の捜査に回せよ、という気がしますね。 「先の記事にあるように、秋葉原での銃刀法違反容疑での事件送致の件数は、2002年にはたった3件だったのが、2005年には84件になっています。でも、べつに刃物を持ち歩くオタクが増えたわけじゃないでしょう。警察が職務質問をすることが多くなったから、逮捕者も増えたんです。こんな風に、警察の活動の変化によって、犯罪の認知件数は大幅に変わるんです。 それと、こちらも見ていただきましょう。横須賀市企画調整部市民安全課のまとめた「犯罪件数の分析」というデータなんですが、暴行・傷害・脅迫・恐喝などの粗暴犯が、2000年にいきなり急増しているのが分かります。1999年と比べると、暴行は1・7倍、傷害は1・5倍、脅迫は2・1倍、恐喝は1・3倍……」 ――ほんとだ! なぜでしょう? 「理由のひとつは、1999年に起きた桶川ストーカー殺人事件と栃木リンチ殺人事件だと言われています。どちらの事件も、被害者やその家族の訴えを、警察がまともに取り上げなかったことが悲劇を生みました。その反省から、警察庁はこれまで無視されていたような市民からの訴えも取り上げるよう、全国の交番や警察署に徹底させたんです。その結果、1999年から2002年にかけて、相談件数が3倍に激増しました。それが事件の認知件数を押し上げたんです」 ――じゃあ強姦の被害者が激増したのも? 「それまで泣き寝入りしていた被害者が多かったのが、訴え出る例が増えたためではないかと思われます」 がんばれ警察! さぼるな警察! ――なるほど、言われてみれば、器物損壊とか暴行とか傷害とか脅迫とかも、警察に届けずにあきらめてしまう人が多そうな犯罪ですね。 「それと、注目していただきたいのは、殺人の件数ですね。1955年の3066件をピークに、一貫して減り続けているんです。1998年ごろから他の犯罪は急増しているのに、殺人だけはあまり増えていません。それどころか、平成19年には戦後最低の1199件にまで減っているんです」 ――ほんとだ! 「念のため、この時期の犯罪率の増加を比較してみましょう」
――殺人と放火はあまり増えていませんね。あと、暴行事件以外はすべて、2001〜2004年ごろをピークに、減少に向かっているようです。 「被害者の届出によって明るみに出る強姦や暴行や脅迫と違って、殺人と放火は認知件数と実際の発生件数はほぼ等しいと考えられます。逆に言えば、殺人と放火以外の犯罪は、警察の対応の変化によって、認知件数が大きく上下するわけです」 ――ははあ、それまで被害者が泣き寝入りしたり、警察に無視されたりして、闇に葬られていたような事件も統計に加わるようになったんで、2000年以降、見かけ上、犯罪が増えたように見えると……あれ? でも、強盗は1995年から、強姦は1997年から増加しはじめてますよ? それに殺人もこの時期に増えていたのは事実だし。 「そうですね。警察が方針を転換した2000年以降の増加は見かけ上のものでしょうが、それ以前から実際に事件全体が増加していたのかもしれません」 ――なぜ? 「分かりません。仮説を提唱するだけなら、いくらでもできます。窃盗や強盗が増えたのは、不景気が続いて経済的に困窮した者が増えたせいかもしれません。あるいは『ノストラダムスの予言の影響だ』という説だって唱えられる。1999年に世界が滅亡すると信じた人間が多くいて、1999年が近づくにつれて自暴自棄な行動に走った……とかね。実証はできませんけど。要するに、犯罪発生率が上下するのには、いろんな要因が考えられるってことです」 ――昭和50年ごろから刑法犯の認知件数が増加し続けているのも? 「日本の人口は、昭和50年には1億1194万人だったのが、平成12年には1億2693万人。1・13倍になっています。犯罪もそれに比例して増えるのは当然です。それに、すでに述べたように、警察の犯罪に対する取り組みの変化によっても、認知件数は何十%も上下します。認知件数のグラフだけからでは実際に増えているかどうかは分かりません。 余談ですが、昭和25年ごろから昭和の終わりまで、刑法犯の検挙率はずっと60%前後あったんですよ。それが平成に入ってほんの数年で激減しました。平成2年からは40%前後になってます。これも「犯罪と社会」から引用させていただいたグラフですが……」 ――ほんとだ! 平成13年には20%を割りこんでますね。犯罪者の5人のうち4人は捕まってないってことですか? 「このあたりの検挙率の低下は、認知件数の増加によるものですね。実際には見ての通り、検挙人員そのものは上がってるんですが、認知件数が増えたもので、解決率は下がっているわけです。 ただし、それ以前、平成元年ごろの検挙率低下は、それでは説明がつきません。実際に検挙数が激減していることは明白です」 ――どういうことなんですか? 「警察がサボってたんでしょ(笑)。いや、笑い事じゃないんだけど、そうとしか解釈のしようがありません。窃盗犯を捕まえても余罪を追及しなくなったと言われてます。だから窃盗事件が未解決で終わることが多くなった。あと、坂本弁護士一家失踪事件みたいに、犯罪が行なわれたのは明白なのに警察がまともに捜査しなかった例も、中にはあるんじゃないかと思います。それで迷宮入り事件が増えた……」 ――いやな話ですね。 「まったくです。逆に言うと、平成10年以降の検挙数の急増は、警察がサボるのをやめてがんばるようになったためとも考えられます。2003年以降、暴行事件以外が着実に減少に向かっているのも、その成果なのかもしれません」 ――意外でした。「凶悪犯罪が増えている」「安全神話が崩壊した」という話を信じてました。 「『安全神話の崩壊』なんて話こそ、まさに神話ですね」 日本は安全な国だった! 「本論に戻りましょう。長々と説明してきたのは、冒頭に挙げた少女の強姦被害のグラフだけ見て、何が原因なのかを推測するのは無意味だということを訴えたかったからです。なぜなら、強姦だけでなく、他の刑法犯の件数も同時に上下しているからです」 ――近年、外国人犯罪が増えているというのも? 「同じです。来日外国人の刑法犯検挙人員は、2004年の8898人を最大値に、減少に向かっています。つまり日本人の刑法犯の増減とほぼシンクロしてるんです。それどころか、全刑法犯に占める外国人の割合は、むしろ低下しています。外国人犯罪の統計だけを示して『外国人犯罪が増えている!』『治安の悪化は外国人のせいだ!』と騒ぐのは、卑劣なトリックですね」 ――なるほど。 「確かに言えるのは、これらの統計からは、少女のヌード画像が性犯罪を誘発するなどという結論は決して導けない、ということです。もしそうなら、70〜80年代の性犯罪は激増してなきゃおかしい。また、99年に児童ポルノ法が制定されたことによって、子供を狙った性犯罪が減らなきゃおかしい。 法改正が本当に性犯罪を減らすのなら僕も賛成しますけど、明らかにそうじゃないでしょう? 統計を見る限り、ヌードの規制が性犯罪を減らすなんて根拠はまったくない。なぜそんな法改正に賛成しなくてはならないんでしょう?」 ――てっきりああいう写真が増えたせいで性犯罪も増えたと思ってました。 「根拠のない思いこみですね。ちなみにこの少年犯罪データベースというサイトは、他にもいろんな思いこみを正してくれる良いサイトですね。このサイトの作者が出した『戦前の少年犯罪』という本も必読です。たとえば『最近の子供はキレやすい』なんてのは大ウソであることが分かります。実は戦前もひどい事件が多かったし、戦後の統計を見ても、1950〜70年代の少年犯罪は現在の何倍も多かったことが一目瞭然です」 ――最近の子供はむしろおとなしくなってるんですね。 「ついでだから、世界の性犯罪の統計も見てみましょうか。未成年のレイプだけの独立したデータはないので、成人も含めたデータですが、たとえば人口1,000人当たりのレイプの件数は……」 ――うわっ、日本は少ない! 65ヶ国中54位ですか? 「世界の中では、日本はかなり安全な国と言えそうです。ちなみにワースト5位のカナダ、9位のアメリカ、13位のイギリスなどは、日本よりきびしく児童ポルノを取り締まっている国です。 あと、日本より低い国の中に、イエメン、アゼルバイジャン、サウジアラビアなどがありますが、このへんの数字はまともに受け取るべきではありませんね。イスラム圏ではまだ女性の地位が低い国が多く、レイプされても泣き寝入りする女性が多いと考えられます。 このリストには出てきませんが、たとえばパキスタンの法律では、女性が強姦罪を立件するには、4名の男性イスラム教徒の証言者が必要だそうです。もしできなければ、女性の側が姦通罪に問われ、下手すれば死刑です」 ――そ、それは……あまりにも女性に不利ですね。被害に遭っても、訴えようと思う女性なんて、ほとんどいないでしょう。 「でしょう? さすがに近年は改正しようという動きが起きているようですけど、依然としてイスラム圏では女性蔑視の風潮が強いのは事実です。だからレイプの件数は、報告されているより多いと思います」 ――もしかしたら日本は、世界でいちばん女性にとって安全な国かもしれない? 「そういう可能性はありそうですね。強姦だけじゃありません。国連の2000年の統計でも、殺人や強盗などの凶悪犯罪の発生率に関して、日本は世界の先進国の中でも極端に低いことが示されています」 ――人口10万人あたりの殺人が、ロシアが19.80件、アメリカが4.55件、韓国が2.02件、フランスが1.78件、イギリスが1.61件なのに対して、日本は0.50件……いや確かに、驚くほど低いですね。 「これは日本人として誇っていいと思いますよ」 ロリコンによる犯罪は多いのか? ――でも、いくら安全といっても、中には性犯罪に走るロリコンもいるわけでしょう? げんに上のグラフによれば、毎年、50人ぐらいの小学生が強姦されてますし。 「当たり前です。どんな集団でも、犯罪に走る奴は必ずコンマ何パーセントかは存在します。そんなことを言ったら、成人女性にしか興味のないノーマルな男性の中にも、性犯罪に走る奴が大勢いるじゃありませんか。だからと言って、ノーマルな欲望を持つこと自体が悪いということになりますか?」 ――そりゃ、なりませんけど……。 「悪いのは、欲望を自制できなくて犯罪に走ることです。欲望を抱くこと自体は何も悪くありません」 ――そもそもロリコンが性犯罪に走る率ってどれぐらいなんでしょう? 「ロリコンの数自体が不明ですから、正確な比率は何とも言えませんね。某アナウンサーによればコミケ会場には10万人の宮崎勤がいるそうですが(笑)。でも、コミケの入場者数が10万人だったのは80年代の話ですし。今じゃ3日間で50万人以上来ますからねえ。もちろんその全員がロリコンなんてことはないけど、一方でコミケに来ないロリコンも大勢いるわけですから、実際は10万人よりかなり多いはずですよ」 ――その中から、毎年50人ぐらい、小学生の女の子をレイプする奴が出てくる? 「いや、強姦事件の犯人がすべてロリコンだったかというと、それも疑問ですね。女なら誰でもよかったんだけど、たまたま小学生の女の子がそこにいたから襲った……という例も多いと思います。あと、1人で何人も襲っている例もありますから、犯罪者数は犠牲者数よりかなり少ないはずですよ」 ――じゃあ、ロリコンの中の何%ぐらいが犯罪に走るかは……。 「正確な数字は言えません。でも、とりあえず数字から推測して、ロリコンの99%以上は少女をレイプしたりなんかしないと断言していいかと思います。 実際、僕の知り合いにもロリコンの男性は何人もいますが、みんな性犯罪など犯していません。ほとんどのロリコンは法を守って生きているんですよ。ロリコン=性犯罪者予備軍と考えるのは間違いですね」 その4につづく(工事中) トップにもどる |