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千野圭一の辛口コラム元サッカーマガジン編集長千野圭一が現代サッカーを斬るインターネット限定のコラム

第423回
UPDATE 08/09/18

アクション・サッカーの勧め
柔軟な戦いのための戦略導入を

 前回は恥ずかしながらボキャブラリーの欠如を露呈するタイトル・フレーズで、恐縮するやら赤面するやら。「つまづく先」とはとんでもない私自身が作ってしまった新語? で、正しくは「転ばぬ先」でした。

 まだ若干、歩行時、特に階段の上りなどで、足をつまづかせることが多く、頭にそのイメージが充満していたのがとってつけたような言い訳。言い訳ついでに、自分でも十分に違和感を覚えていたのは間違いなく、気がついたところが後の祭りで、こうしてお詫びと訂正に相成りました。

 しかし、こういうことがあると、吐く毒の激しさが増すことがあるので、自重(自嘲?)しながら物事を見つめて書くようにしなければと言い聞かせている所存であります(反省文は何と固苦しいことか)。

 

 お恥ずかしい前置きに、今回は偉そうなことも言えませんが、自分勝手な持論を一つ。よく聞くフレーズとして、アクション・サッカー、リアクション・サッカーというのがあるが、どちらが良くて、どちらが悪いというわけではないが、考え方、行動の違いが大事な試合の勝ち負け、形勢に大きく左右することがあるのは間違いないとは思っている。

 普段、アクション・サッカーを展開しているチームはリアクション・サッカーにシフトチェンジすることも可能だろうが、その逆は難しいということ。まずはそれを踏まえて。

 Jリーグが終盤を迎え、大事なワールドカップ予選も間にスケジューリングされている状況で、浦和レッズや鹿島アントラーズといったJの優勝争いを展開するチームにとっては、準々決勝から再開された、これも大事なアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の戦いも軽視できないから、肉体的にも精神的にもハードな時期を迎える。

 さて、ACLの準々決勝には浦和、鹿島に加え、ガンバ大阪も駒を進めている。初戦、鹿島がホームスタートで、浦和とG大阪はともに長距離移動で中東に飛んだ。

 カップ戦のホーム&アウェーの戦いでは、常套手段としてホームでは勝利を、アウェーでは負けないサッカーを、が一つの原則。お互いが原則の中で戦うわけだから、ホームの声援や有利さがあるとはいえ、負けない=守備を固める、チームに攻め勝つのは容易なことではない。

 果たして、鹿島はいつものようにアクションを起こして点を取りに動いた。一時期の鹿島は守ってカウンターの時期があり、Jリーグ開幕の頃のイメージが薄れていたが、オリベイラ監督の就任によって、前に出て戦う姿勢が浸透し、得点を狙いに行く、アクション・サッカーが復活した感がある。

 とはいえ、相手のオーストラリア、アデレード・ユナイテッドは、負けない鉄則の試合運びで、フィジカルが強く、大きな男たちがゴール前を固め、鹿島の攻撃を遮断した。カシマ・スタジアムの荒れた芝、ピッチ・コンディションの悪さが、皮肉にもホームチームを苦しめる要因になってしまったが、結果は相手の思う壺の1-1の引き分け。アウェーゴールが2倍となるカップ戦の勘定ではスコアドローは避けたかったが致し方ない。

 第2戦、鹿島がどう戦うのかが注目されるが、私はホームゲームでより、アウェーゲームの方がアクション・サッカーは生かされると思い、あまり悲観的にはなっていない。

 現実的に両チームの実力差で勝敗が決するなら致し方ないが、初戦を見る限りでは、アデレードが破り難い相手とも思えない。

 ホームで戦うアデレードが攻勢に出てくれれば(0-0の引き分け狙いもあるが)、鹿島も耐える時間は続くだろうが必要以上に守備的になることもない。いつものように前線からボールを追い、分厚い攻撃を仕掛けていけば、ホームでの初戦より内容も良い結果も得られるのではないかと、悲観論者の私が思っているのだから間違いない。

 

 弱かった頃の浦和は、Jにおいてはほとんどのチームが格上だったから、リアクション・サッカーでしか太刀打ちできなかった。だが強くなるには戦力を整え、戦術を見直さなければ、引け目は拭えない。浦和は少しずつ補強を進め、ハンス・オフト氏を招いて戦いのベースを作り出し、まず勝つことで自信を持ち、ブッフバルト監督招聘で、さらに戦力もアップさせ、仕掛けるサッカー、アクション・サッカーへの脱皮を図った。もちろん、クラブ・ワールドカップなどで、ACミランなどと対戦するときにはリアクション・サッカーへのシフトチェンジを図れるように成長もしている。

 さてその浦和は初戦、アウェーでクウェートのアルカディシアと対戦し2-3で敗れた。アウェーゴールを考えればそれほど悪くもなく、ホームでの第2戦に期待が持てるが浦和の場合、まだまだリアクション・サッカーの方が趣が強いのではと個人的に思うので、ホームゲームは苦戦が予想されてならない。

 もう一つのG大阪もアウェーでシリアのアルカマラと対戦、こちらは2-1と逆転勝利を収め、ホームでの第2戦をぐっと楽にした。G大阪はJの中でも明確なアクション・サッカーで戦える数少ないチームの一つ。最近では遠藤の病気離脱、播戸のケガ、バレーの突然の移籍など、マイナス材料が重なり、仕掛けても仕掛けきれない辛さがあったが、これも流行のポゼッション・サッカーは継続しているから、戦い方には柔軟さが示せる。アウェーで2-1の勝利だから、相手は前掛かりに来る。ガンバはボールをキープしていなし、チャンスを見て相手ゴールに迫れば良い、机上では楽な試合運びが展開可能と予測できる。負けなければ引き分けでも次ラウンドに進める精神的余裕もフルに生かしてほしい。

 アクション論、リアクション論は前記したようにどちらが正しい、悪いの問題ではないが、どちらも使いこなせるためには常日頃、アクション・サッカーを心がけ、構築していかなければ無理があるのは道理。

 

 話を飛躍させ、代表に展開させると、オシム監督はアクション派。岡田監督はリアクション派の代表格といってもいいくらいの対照的構図で、ここまで方針転換ができる、わが日本協会の技術委員会には敬意を表したくなるが、だから岡田さんの場合は、アウェーの方がどちらかといえば戦いやすいのではなかろうかと、勝手に推測している。だが先日のバーレーン戦は対応でき得る数人の選手が率先して、以前のような仕掛けも見せていたから、少しずつ変化していっているのかもしれないが(選手の力量において)。

 

 余談が多く、話が横道にそれてしまったが、結論としては3チームともベスト4に進んでもらいたいという、ありきたりの愛国精神旺盛な私であることは間違いない。Jリーグとの掛け持ちは苦しいだろうが、Jチャンピオンの可能性があるのなら、当然、貪欲にすべてにチャレンジしてもらいたい。大変なのは承知の上で、メディアもあまり大変だ、大変だと、エクスキューズにしないようにしていただきたい。自分に甘く、他人に厳しい意見の数々、失礼しながら、言わせていただきました。

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プロフィール

千野圭一(ちの・けいいち)
1954年生まれ。東京都出身。 1977年に(株)ベースボール・マガジン社に入社。サッカーマガジン編集部へ配属され、1982年には編集長に就任(〜1998年)。 1993年にはJリーグ開幕にともなってサッカーマガジンの週刊化を実現。その後も、1996年のアトランタ五輪でのブラジル戦勝利、1998年のワールドカップフランス大会への日本の初出場など、日本サッカー史の節目を見守ってきた。 辛口のサッカー批評で知られている。


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