自民・公明 連立政権合意全文
公明新聞:2008年9月24日
23日自公で合意
自民、公明の両党が23日に交わした連立政権合意の全文は次の通り。
◇
われわれは、自由民主党において新総裁が選出され、公明党において代表が再選されたことに鑑み、これまでの両党の連立政権発足以来の政権合意を尊重することを含め、改めて両党の間で連立政権を堅持することを確認する。
我が国の政治は、昨年の参議院選挙の結果生じた衆参のねじれ現象のもと、国民の負託に十分に応えきれない状況にある。
他方、我が国経済は、米国のサブプライムローン問題に端を発した世界経済の成長鈍化と世界的な資源・食料価格の高騰といったマイナスの影響を正面から受け、景気は弱含み、さらに下振れするリスクが存在する状況にある。
国民の直面する困難と不安に対し迅速果断に対応し、生活の安全・安心を確保して将来の希望と成長につなげていくことは政治の使命である。
このため、先般、政府・与党において「安心実現のための緊急総合対策」を取りまとめた。
われわれは、来るべき総選挙を勝ち抜き、これまでの連立政権の成果をさらに熟成させ、国民生活を守り、難局を乗り越えるために一致協力して、以下に掲げる重点政策課題に全力で取り組む決意である。
[今後取り組むべき重点政策課題]
1、経済財政運営
・国際的な原油・食料価格高騰や世界経済の成長鈍化に伴う経済情勢の悪化等に対応するため、「安心実現のための緊急総合対策」に盛り込まれた特別減税等を含む諸施策を着実に実行する。
・成長戦略を強力に継続させるとともに、重点政策に必要な財源は確保するなど、財政健全化に向けた取り組みを進める。
・米国発の金融不安への適切な対応を行う。
・資源価格高騰・地球温暖化・人口減少等の我が国が直面する構造的課題の解決に向け、健全な経済システムの維持・発展を確保するための(地域・中小企業の活性化や、グローバル経済の活力を取り込む新たな成長メカニズムや、エネルギー需給構造改革などの)、経済産業構造への転換を図る。
2、中小・零細企業
・「安心実現のための緊急総合対策」に基づき、原油・原材料価格高騰により直撃されている業種に対する金融支援など、政府主導・民間協調での中小企業金融対策に実効をあげるよう、万全を期す。
・地域経済の基盤をなす中小・零細企業に対し構造改革に対応する体質強化支援策を拡充するとともに、省エネ事業の推進や農商工連携など新規のビジネス機会を生み出し地域活性化に結びつける。また、下請け取引の適正化確保のための諸施策を実施する。
3、地域活性化
・地域経済の立て直しと地域の雇用確保のため、「地方再生戦略」を着実に推進するとともに、地域で実施する施策に必要な財源を確保し、地方独自で様々な活性化策を着実に実施できるよう対応する。
・地方自治体間の財政力格差の是正に向けた取り組みを引き続き行うとともに、地方分権を一層推進するため、国と地方の役割分担や国の関与のあり方の見直し等に徹底的に取り組む。
・道州制の導入を推進するため、道州制基本法(仮称)制定に向けて、内閣に「検討機関」を設置する。
4、年金
・年金記録問題について、8億件を超す紙台帳のデータベース化と早期照合を進めるなど、徹底的な問題解決を図るとともに、社会保険庁の日本年金機構への円滑な移行に万全を期す。
・平成16年の年金改革の道筋に沿って、平成21年度までに基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げる。
・受給資格期間の短縮や追納期間の延長など無年金・低年金対策の充実を図るとともに、暮らせる年金の実現を目指し、引き続き年金制度のあり方を含め社会保障制度の一体見直しの検討を進める。
・障害基礎年金等の配偶者、子の加算の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(議員立法)の早期成立を目指す。
・高齢者の所得向上に資するよう、在職老齢年金制度の見直しを行う。厚生年金保険料の延滞に関する取り扱いについて検討を行う。
5、医療
・医師不足に対応して、昨年5月に決定した緊急対策に加え、救急・産科・小児科等地域医療の確保、医師養成数の増大、勤務医の労働環境改善、ドクターヘリの配備促進等、更なる医療体制の整備強化を推進する。
・高齢者医療制度については、70歳から74歳までの窓口負担の1割から2割への引き上げの凍結の継続、長寿医療制度被保険者(被扶養者であった方)の保険料負担軽減の継続及び低所得者の保険料の軽減を行う。さらに、長寿医療制度については、高齢者の心情に配慮し、法律に規定してある5年後見直しを前倒しして、より良い制度に改善する。
・がん対策基本法が掲げる「がん死20%削減」を確実に達成するため、がん対策推進基本計画に「中間報告」を設け、具体策の進捗状況を確認するなど、徹底的に取り組む。
6、介護
・介護人材の確保及び定着のため、介護従事者の待遇、雇用管理の改善等を図る。
・必要な医療型療養病床、介護療養型の老人保健施設を確保する。介護予防の推進や、認知症対策、孤立死防止のための地域支援体制の整備を行う。
7、少子化対策・子育て支援
・出産・育児に安心して取り組めるよう産科医・小児科医不足を解消するとともに、妊産婦支援を充実する。
・児童手当の拡充、保育サービスの充実や新待機児童ゼロ作戦の推進、育児休業制度の拡充など子育て支援策を強化する。
8、障害者施策等
・障害者自立支援法について抜本的な見直しを検討するとともに、障害者福祉基盤の充実を図る。
・「ユニバーサル社会形成推進法(仮称)」の制定について検討する。
9、雇用対策
・派遣で働く労働者が安心・納得して働くことができるよう、日雇い派遣の規制など派遣労働者の待遇の改善を図るための労働者派遣法改正案、時間外労働の割増賃金率を引き上げる労働基準法改正案の成立を目指す。
・フリーター等若者の正規雇用化への一貫した支援、トライアル雇用、ジョブ・カード制度の整備・充実などにより非正規労働者の雇用の安定を図り、安心して働き、生活できる環境を整備する。
・職業訓練中の若者への「給付金制度」を創設する。
・高齢者が年齢に関係なく働ける勤労環境の整備や高齢者の知恵と経験を活かす仕組みにより、高齢者の就労支援を進める。
・マザーズハローワークの倍増など女性の就労支援体制を強化する。
10、男女共同参画社会の実現
・雇用・家庭生活・地域社会における男女共同参画を促進する。
11、教育再生等
・次代の主権者を育てるという教育の重要な使命に鑑み、教育再生と科学技術やスポーツ・文化芸術の振興に必要な施策を講じる。
・現在の教育制度の問題点を検討し、中長期的視点に立った教育の将来像についての議論を進める。
・教育にかかる家計負担を軽減するため、奨学金制度の拡充や幼児教育の無償化の検討を進める。
・幼稚園・保育所・認定こども園にかかる保護者負担の軽減を図る。
・学校等公共施設の耐震化を推進する。
12、農林水産
・担い手の育成や経営所得安定対策の推進により力強い農業構造を確立するとともに、食料自給率50%を目指し、耕作放棄地など国内のすべての農地の有効利用や地産地消を推進し、国産農産物の生産拡大を図る。
・食の安全を確保するため、生産・流通構造の抜本的な改革と法改正を行う。
・燃油及び肥飼料等の高騰対策を充実し、農業経営の体質を強化する。
・森林吸収源対策を着実に進めるため、国産材の利活用を積極的に促進し、森林・林業育成策を強化する。
・燃油高騰にも耐え得る水産業の体質強化策を強力に推進する。
・世界の食料事情の変化を踏まえ、海外からの食料の安定確保に向けた取り組みを促進する。
13、環境
・京都議定書の6%削減約束達成のため温暖化対策を抜本的に強化するとともに、洞爺湖サミットを受けて、米中など全ての主要排出国が参加する公平で実効性のある枠組みの構築に主導力を発揮する。
・来年のしかるべき時期に、科学的知見に立脚し、国民経済への影響も踏まえた、国際的枠組みづくりの進展に貢献する我が国の中期目標を策定する。
・我が国の優れた省エネ・環境技術やバイオマスの利活用促進による低炭素社会づくりを進めるとともに、国際協力を推進する。
・排出量取引の国内統合市場の試行的実施により、世界の排出量取引市場の動向も踏まえ、実際に削減努力や技術開発につながり、マネーゲームが排除される日本型の制度の検討を加速する。
・太陽光発電世界一の座の奪還のため、住宅への太陽光発電設置に対する補助制度を復活させるなど、再生可能エネルギーの大胆な導入支援策について検討する。
・資源外交の強化、資源開発の推進並びに自国内での資源開発に取り組むとともに、資源枯渇を見据え、消費抑制、利用効率化、徹底したリサイクル、枯渇型資源の使用回避など、持続可能社会に向けた取り組みを本格化させる。
14、外交・安全保障
・強固な日米同盟と国連中心主義を踏まえ、積極的な「アジア重視の外交」を展開する。また、核軍縮・不拡散体制の維持・強化を推進し、「核廃絶」を目指し、世界をリードする。
・国際社会と協力して「テロとの戦い」を継続することを確認し、このため、海上自衛隊のインド洋における補給支援活動を引き続き可能とするための法改正を行う。
・すべての拉致被害者の安全を確保し、直ちに帰国させるよう引き続き強く求めるなど、拉致問題の一日も早い解決を目指すとともに、核・ミサイルなど諸懸案の解決へ向けて、全力を挙げる。
15、行政改革
・権限・予算を背景とした「天下り」の根絶など公務員制度改革を推進し、国民に奉仕する行政サービスを徹底する。
・頑張った者が報われる能力・実績主義の徹底など公務員がやる気を出し、持てる能力を存分に発揮できる制度と環境を整備する。
・国の出先機関を廃止・縮小し、行政の効率化を進める。
・会計検査院のチェック機能、権限を強化するため、会計検査院法を改正する。
・国会議員の歳費の削減を検討する。
16、ムダゼロ
・無駄な支出や不要不急な事業を徹底的に排除するため、事業仕分け、政策の棚卸しを強力に推進する。
・一般会計、特別会計など国に係るすべての事業について、一つ一つ聖域なく厳しく洗い直し、ムダゼロを徹底させる。その際、国・地方・民間の役割分担を明確にする。これらの結果を組織・予算に確実に反映させるとともに、その仕組みについて検討する。
・タクシーチケット、レクリエーション経費、広報経費など全省庁の行政管理経費の大幅削減、公益法人向け支出の3割削減、独立行政法人の改革などを推進し、無駄の一掃に取り組む。
17、道路特定財源制度
・平成20年4月11日の政府・与党決定に基づき、道路特定財源制度を廃止し21年度から一般財源化する。
18、郵政三事業の改善
・ユニバーサルサービスの確保、利便性の向上等を図るための改善を行う。
19、消費者行政
・事故米問題への早急かつ的確な対応を行い、食の安全体制を強化する。
・消費者が安心して安全な消費生活を営むことができる社会の実現に向けて、消費者庁の設置を実現する。多くの法律が規定する「消費者保護」の実効性・信頼性を高めるため、消費者庁関連3法案の成立を期す。
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