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【主張】核封印撤去 北朝鮮の揺さぶり許すな
北朝鮮は昨年夏から停止・封印されていた核燃料再処理施設の封印と監視機器を撤去し、「1週間以内に核物質の注入作業を行う」と国際原子力機関(IAEA)に通告した。核施設の無能力化を含む核廃棄プロセスをさらに逆行させるのは確実だ。
問題は北朝鮮が今年6月に提出した核計画申告の検証をめぐる対立にある。6カ国協議は申告を受けた7月の首席代表会合で「核施設の無能力化を10月末までに完了し、申告は厳正な検証に委ねる」との原則で合意した。
ところが北朝鮮は、8月に入って一方的に態度を翻した。日米などが核施設の立ち入り調査や技術者の聴取を含む検証手順を求めたのを拒否して、無能力化作業を停止した。今月初めには再処理施設の封印撤去に着手した。今回の行動もその延長上にある。
米国がテロ支援国家指定解除を遅らせていることに対する「対抗措置」というのが北朝鮮の主張だが、これは詭弁(きべん)としかいいようがない。もともと指定解除は「完全かつ正確な」核計画申告への見返りで、申告内容の正確を期す上で検証は当然の作業だからだ。
中国、韓国、ロシアも公正な検証を求めている。申告を検証に委ねる約束を果たさずに指定解除を強要するのは筋違いで、6カ国合意の明白な違反だ。無能力化作業の見返りとして経済・エネルギー支援を進めてきた各国も、支援中断の検討を始めたという。
自らの都合が悪くなると、強硬手段を発動して譲歩を迫るのは北朝鮮外交の常套(じょうとう)手段だ。北朝鮮は拉致問題でも再調査を延期した。米国は大統領選を控え、日本も政局の季節を迎えている情勢を見て、北朝鮮が揺さぶりに出ている可能性もある。
ここで何よりも大切なのは、日米を含む5カ国が原則をゆるがせにしないことだ。核では公正な検証の受け入れを求め、拉致の再調査も早急に着手するよう説得し、要求していく必要がある。北があくまで合意を逆行させるなら、エネルギー支援の停止も避けられない。それは自らの首をしめるだけで、何の得にもならないことを北朝鮮は強く自覚すべきである。
発足直後の麻生太郎新政権にとっても重要な時だ。週末には国連総会の場で日米外相会談も開かれる。北の脅しに屈せず、日米の結束と連携をさらに深めて問題解決をめざしてもらいたい。