子どもたちの生き生きとした表情を求め、カメラを手に保育園を訪れた女子高校生。期待むなしく、撮影は断られる。生徒の一人が落胆しながらつぶやいた。「個人情報保護法って厳しいね」。先日放映された「全国高等学校写真選手権大会」のドキュメンタリー番組の一場面だ。
北海道を舞台に高校生が写真の腕を競う、通称「写真甲子園」。古城池、坂出の郷土勢を含む全国の十四校が、大自然やそこに暮らす人々を切り取ろうと奮闘する姿や、苦労の末に仕上げた感性あふれる作品が実に印象的だった。それだけに、保育園でのやりとりは「まあ、そうだろうな」と思いつつも、やりきれなさを残した。
プライバシー保護を目的とした同法の全面施行から三年以上が過ぎた。行政機関、企業を問わず個人情報に対する意識は確実に高まっている一方で、必要な情報まで得られなくなった過剰反応や弊害を、あらためて感じることも多い。
学校など子どもがかかわる教育現場は、恐らく個人情報を扱う難しさを抱えている最たる所だろう。地域や保護者とのネットワークが欠かせないのに、連絡網は省かれ、学年通信は簡素化。ホームページには後ろ姿や表情が分からない無味乾燥な写真を掲載しているところも多い。
新聞に掲載する写真でも、子どもを中心に個人情報の壁にぶつかり、制約がかかるケースがある。その度に、思いっきりの笑顔や懸命な表情が紙面から減っている気がして、何とも寂しくなる。
(社会部・前川真一郎)