プロ野球ソフトバンクの王貞治監督が今季限りでの退任を発表した。二〇〇六年に胃の全摘出手術を受け、健康面の不安が最大の理由という。
長嶋茂雄元巨人監督と「ON時代」を築き、一本足打法から量産される本塁打は国民を魅了した。通算868本塁打など数々の大記録を打ち立て初の国民栄誉賞に輝いた。監督としても手腕を発揮、〇六年のワールド・ベースボール・クラシックでは日本を初代王者に導いた。
退任の決断は激しく揺れたという。「グラウンドで死んでもいいとも思った」。有名選手が次々大リーグに流出する日本球界を案じてのことだろう。野球へ注ぐ情熱への称賛と、退任を惜しむ声が高まっている。
それに比べ、政界の指揮官・福田康夫前首相の退陣の何と空虚なことか。「国民目線」を掲げながら、安倍晋三元首相から二代連続で無責任に政権を投げ出し、期待を裏切ったのでは仕方なかろう。
失墜した政治への信頼を回復するのは容易ではない。麻生太郎新首相の責任は重い。首相は組閣で自ら閣僚名簿を発表するサプライズを演じた。新政権への強い決意と指導性のアピールか。
政治不信を招いた要因に相次いだ閣僚の不祥事や問題発言があった。麻生首相は、自ら読み上げた閣僚の任命責任を一層肝に銘じなければならない。