文化勲章受章作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが、86歳にしてケータイ小説に初挑戦、ケータイ小説サイトで名前を隠して書き上げたと24日、発表した。「ぱーぷる」のペンネームで、女子高生ユーリのいちずな恋を描いた「あしたの虹」。10代、20代の女性たちが等身大の物語を書き、女子中高生が読者の中心というケータイ小説に、大物作家が切り込んで、注目を浴びそうだ。
「あしたの虹」は携帯電話で読むケータイ小説サイト「野いちご」で5月に掲載スタート。今月10日に完結した。短い簡潔な文章、若者言葉など、今までの瀬戸内文学とは異質の作品。今年は源氏物語千年紀でもあることから、源氏の現代語訳で知られる作家らしく、主人公ユーリが恋する相手の名を「ヒカル」とするなど、源氏をモチーフにした。筆名ぱーぷるは紫式部にちなむ。恋愛だけでなく、家族のきずなが感じとれる物語になっている。
名誉実行委員長を務めた第3回日本ケータイ小説大賞・源氏物語千年紀賞(毎日新聞社、スターツ出版の実行委員会主催)の席上で公表。毎日新聞社から24日、刊行された。
同委員長を引き受けたことから、「だったら私も書いてみよう」と執筆を決意。「この年になると面白いことがなくなる。ケータイ小説を書くという初めての経験はとてもワクワクしました」と振り返った。【内藤麻里子】
毎日新聞 2008年9月25日 東京朝刊