JR岡山駅(岡山市)で今年3月、岡山県職員假谷(かりや)国明さん(当時38)が線路に突き落とされ、電車にひかれて死亡した事件で、殺人と銃刀法違反の非行事実で送致された大阪府大東市の少年(18)について、大阪家裁(小島正夫裁判官)は25日、第2回少年審判を開き、刑事裁判での審理が妥当として、検察官送致(逆送)とする決定を出した。
家裁はこの日の決定で、本格的な精神鑑定で「広汎性発達障害」と診断されたことを踏まえ、「刑務所に入る方法として殺人を着想し、こだわり続けた特性が強く作用した犯行だが、刑事責任能力は認められる」と指摘。成人と同様に刑事裁判で審理することが妥当と判断した。
家裁は決定理由で「被害者は少年と縁もゆかりもなく、理不尽な凶行で命を奪われた。誰もが容易に被害者となり得る犯行は社会に衝撃を与えた」と述べ、結果の重大性を指摘。少年が反省を深めつつあることなどの事情を考慮しても、「16歳以上の少年が故意に被害者を死亡させた場合、原則として検察官送致にする」と定めた改正少年法(01年施行)に照らし、「例外的な事件と認めることはできない」と結論づけた。
家裁が認定した非行事実によると、少年は3月25日午後11時すぎ、駅のホームで電車を待っていた假谷さんを背後から線路に突き落とし、ホームに入ってきた電車にひかせて殺害した。また、手持ちのバッグに果物ナイフを理由なく所持していた。
少年は岡山県警に現行犯逮捕され、「父親から見放されたと思い、家出した」「人を殺せば刑務所に行ける。誰でもよかった」と供述したとされる。岡山地検の簡易精神鑑定でも広汎性発達障害とされ、対人関係をうまく築けず特定の対象に固執するなどの傾向があるとされる「アスペルガー症候群」の疑いがあるとされた。同症候群は、犯罪などの反社会的行動に直接結びつくことはないとされる。
少年は岡山家裁に送致された後の4月、居住地を管轄する大阪家裁へ移送され、大阪少年鑑別所に収容された。5月の第1回少年審判で、非行事実を認め、遺族への謝罪の言葉を述べた。付添人弁護士が本格的な精神鑑定を求め、家裁は実施を決定。鑑定医が約4カ月間にわたって成育環境や事件当時の精神状態などを調べてきた。